一杯の水

動物であれ、人間であれ、生命あるものなら誰もが求める「一杯の水」。
この「一杯の水」から物語(人生)は始まります。

ヒジュラの祭り――『アラヴァン・タライ(アラヴァンの頭)』

2007年09月29日 12時31分36秒 | インドの小さな物語
マハーバーラタ大戦において、英雄アルジュナ率いるパーンダヴァ軍は、クリシュナ自身の援助を受けながらも、劣勢を挽回できずにいた。
そこで彼等は、戦の神カーリー女神に祈りを捧げた。すると、「英雄をカーリーに捧げるならば、戦には勝利するであろう」との託宣が下った。しかし、その英雄の基準を満たすものは、アルジュナ、クリシュナ、そしてアルジュナの息子であるアラヴァンの三人だけだった。

アルジュナとクリシュナは、軍を率いているだけに、生贄になるのは困難だった。そこでアラヴァンが、ある条件のもとに生贄になることを承知した。その条件とは、生贄となる前に一夜限りであっても結婚したいと、いうことだった。しかし、一晩で未亡人になってしまうため、結婚を承諾する女性はいなかった。窮状を見かねたクリシュナは、美しい乙女モヒニに化身し、アラヴァンと結婚し、一夜を共にしたのだった。

翌朝、アラヴァンは斬首され生贄としてカーリーに捧げられた。


毎年4月になると、南インドの小村クーヴァガムにはインド中からヒジュラが集まって来るという。ヒジュラとは、いわゆる「サードジェンダー」であり、複雑な背景を持つ職業集団でもある。

ヒジュラ達は自分たちをクリシュナに模し、アラヴァンと至福に満ちた結婚をし、悲しみの朝を迎えるのである。アラヴァンを表す山車に付き従い、アラヴァンの首が胴体から離されると、自らの腕輪を割り、彩り鮮やかなサリーから純白のサリーへと着替え喪に服する。

ヒジュラであることの喜びと、深い悲しみが、毎年、祭りという「型」で表出されていることに、打たれた。

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なお、当記事はNHK BS-hi 9月9日放送「ナヴァラサ」(再放送 BS2 10月17日 午後9:03~10:43)と、「ナヴァラサ公式ホームページ」を参照しました。

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2 コメント

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ヒジュラ (mugi)
2007-09-29 22:36:19
こんばんは、TBありがとうございました。

私が初めてヒジュラを知ったのはNHKで彼女ら(?)を映していたからでした。
ムガル朝時代からヒジュラはいたそうですが、近代になり迫害されるようにもなったとか。また、ヒンドゥー至上主義者の中にはヒジュラに暴力を振るう者もいるそうです。
ところで、便造さんはインドで彼女らをご覧になられました?

それにしても、このようなお祭りがあるインドも奥が深い。クリシュナが乙女に化身し、アラヴァンと結婚、一夜を共に出来たのこそ、神業と言うものでしょう。
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RE:ヒジュラ (便造)
2007-09-30 18:28:22
mugiさん、こんにちは。

今にして思えば、私のインド旅行など上っ面をなでただけでした。ヒジュラの存在や、ヒジュラの祭りがあることなどつゆ知らず、のんきに聖地めぐりをしておりました。

もっとディープなインド体験をしておくべきだったなと、思っている今日この頃です^^;

しかし、このような祭りを知ると、インドにおける、神への門戸の広さを思い知らされます。
クリシュナとアラヴァンのお話を含め、神の救いの御業の不可思議なるかな、の感を強くいたします。
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