日伊文化交流協会

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映画:『幸せのバランス』

2014年12月05日 17時13分39秒 | おすすめの映画
2013年のイタリア映画祭の時、『綱渡り』と言うタイトルで上映された作品。
いやぁ~重い話だった。あと、途中はかなりイライラしちゃいました。でも見てよかったです。





■映画:幸せのバランス(原題:Gli equilibristi)
■監督:イヴァーノ・デ・マッテオ
■脚本:イヴァーノ・デ・マッテオ/バレンティナ・フェルラン
■撮影:ビットリオ・オモデイ・ゾリーニ
■音楽:フランチェスコ・チェラージ
■出演:バレリオ・マスタンドレア/バルボラ・ボブローバ/ロザベル・ラウレンティ・セラーズ/ルポ・デ・マッテオ 他
■製作:2012年/イタリア・フランス合作/107分


映画『幸せのバランス』公式サイト






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《あらすじ》
ローマ市役所に勤めるジュリオは、妻(エレナ)と二人の子供と小さなアパートに暮らしていた。小学生の息子(ルーカ)と思春期の娘(カミラ)との関係も悪くなく、穏やかな生活を送っていたが、ふとしたはずみで浮気をし、その時に交わしたメールから妻に関係がバレてしまう。子供たちの前で、表面上は仲の良い取り繕おうとするが、ピッツァの配達人が、間違った注文を届けてしまうと言う、些細なことがきっかけで、エレナが爆発。
結果、ジュリオが家を出ることに。
当座、家が見つかるまで友達の家で暮らし、すぐに家を見つけるつもりだったジュリオだが、元々余裕のない生活だったことから坂道を転げ落ちるように、二重生活は破綻の兆しを見せる。父親を心配し頻繁に連絡をとっていた娘カミラも次第に連絡がとれなくなっていく・・・。

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10年ほど前から、イタリアでは「1000ユーロ世代」と言う言葉が叫ばれるようになり、高学歴の若者が就職難にあえぎ、月収14万円以下で生活する世帯が増加している言われていました。
ユーロを日本円にした場合は、14万ほどになりますが、イタリアは日本よりも税金がものすごく高く、また光熱費も1.5倍近くするので、この金額は実際にはもっと少ないイメージです。




この主人公は、(これが実は映画の中でははっきりしなかったのが残念。あとでネットを見て分かったんですが)月収が1200ユーロ。
日本円で約17万円は、子供2人を抱える4人家族では決して贅沢はできない金額です。
妻も働くことで、どうにかこうにか保っている生活。
イタリア(特にローマは)家賃が高いし、確かに苦しいだろうなぁ~って思います。




だからと言って、許せる問題ではないのだけれど、おそらく主人公も、同僚の女性に恋焦がれたと言うわけでもなく、先の見えない苦しい生活の中、魔が差したように浮気をしてしまう。っていうのは、現実にありえることなのだろうと想像ができてしまいます。

で、微妙なバランスを保っていた生活にヒビが入って行くわけなんですが、その贖罪の気持ちがあったにせよ、映画の前半に描かれる、主人公と子供たちとの関係が素晴らしく良いんですよ。
小学生の息子の宿題を丁寧に見てやり、日本だと、超反抗期だと思えるような、パンク系ロックバンドのギタリストをして髪を刈り上げ、巨大なピアスをしている娘に対しても、甘やかしすぎず、厳しすぎず、ちゃんと見守っている様子がよくわかる。
まぁ映画ですからね、実際にはもっと大変かもしれませんが、イタリアだと不思議と嘘くさくないと言うか、イタリアらしいなぁ~って思って見てました。




それだけに、家庭が壊れている様子がものすごい迫力で押し寄せてくるんです。


私が見ていてイライラしたと言うのも、主人公の気持ちに入り込もうとするからこそなんでしょう。
でも、そのイライラしたポイントと言うのが、やはり主人公ジュリオの中途半端であったりもします。

家探しを始めた当初、子供たちが泊まれるようにと、2LDKの部屋を探そうとする。
それがね、自分の収入に見合っていないんです。
とりあえずワンルームを探せばいいのに、2LDKに拘る余り、なかなか見つからないし、ホテル暮らしを続けて手持ちのお金がなくなっていく。
その一方で、息子の歯列矯正、娘のスペイン旅行と重なる出費に対して、借金をして渡そうとする。

で、まぁ最終的に車上生活になるので手放さなくて正解だったのかもしれないんですが、もう1000円2000円のお金にも困るようになってるんだから、借金をする前に、車を売るとか、結婚指輪を売るとか、方法がありそうだと思うんですが、どうもその行動がちぐはぐな感じがしちゃって。




不思議なのが日本だと市役所勤めってすごく硬い職業なのに、それでも家が見つからないし(補償金が払えなかったりもする)あと、娘が父親と連絡が取れなくなるんですが、職場に行けばいいんじゃないかと思ったり。

あとは男の見栄ってヤツですね~。生活が困窮しているのに、妻には出世したとかつまらない嘘ついたりもして、どんどん追い込まれていく。

まぁでも日本で路上生活をしている人達も、きっかけは些細なことだったりするんだろうなぁ~って思いました。

ある意味ドキュメンタリーよりも、真実味がありました。



で、撮影手法も凝っていて、前半のカメラワークは間に何かを挟んでって感じなんです。ガラス越し、扉越し、柵越し、他にも、ゴミ箱の蓋とか、間に遮蔽物を挟んでその奥を覗きこむような感じ。
家の窓越しに垣間見える風景は、幸せに見えていたのに、ジュリオの生活が行き詰まるにつれ、遮蔽物が取り払われて、その表情を映し出していく。


物語に垣間見える、深刻な移民問題や、税金逃れの実態。イタリアの社会福祉の現状など、良しにつけ、悪しにつけ、印象に残る映画でした。

ちなみに、この映画の字幕は比嘉セツと言う人で初めて見ました。
すごく簡潔で分かりやすい言葉で、その上、登場人物の心情を豊かに表現していて、素晴らしい訳でした。

タイトルも、映画祭の時の「綱渡り」よりずっと良かったと思います。
あと、俳優さんの名前ですが、父親と母親、そして娘役の3名しか書いてないんですが、調べてみたら、小学生の息子役は、なんと監督の息子さんなんだそう。とっても可愛かったです。


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