日伊文化交流協会

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映画:『はじまりは5つ星ホテルから』

2014年02月20日 14時51分22秒 | おすすめの映画
年明け早々、『フォンターナ広場』が当たりだったので、なんか今年のイタリア映画は期待できるかも!
って思って早速、今年2本目『はじまりは5つ星ホテルから』を見に行きました。
レディースデイだし、前評判も高かったこともあって平日なのに7割ぐらいの入り。なかなかです。
イタリア映画って、たまーーーに、5人ぐらいしかいないときありますからねぇ~。

以下、ネタバレはしませんから、ご安心を。



■映画:はじまりは5つ星ホテルから(原題/Viaggio Sola)
■監督:マリア・ソーレ・トニャッツィ
■脚本:イヴァン・コトロネーオ フランチェスカ・マルチャーノ
■撮影:アルナルド・カティナーリ
■出演:マルゲリータ・ブイ/ステファノ・アコルシ/レスリー・マンビル/ファブリツィア・サッキ/ジャンマルコ・トニャッツィ、他
■製作:2013年/イタリア映画/82分


『はじまりは5つ星ホテルから』公式サイト


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《あらすじ》
主人公のイレーネは、ザ・リーディングホテルズ・オブ・ザ・ワールド(LHW)の社員。LHWとは、5つ星ホテルの評価会社。つまり彼女は、ミステリー・ゲストと呼ばれる覆面調査員。世界の一流ホテルを泊まり歩き、その仕事に見合った給料を手にし、仲の良い男友達もいて、自由気ままな生活を謳歌している。けれど、そんな彼女を半分はうらやましく思いつつ、老後を心配するのは、家庭を持つ妹のシルヴィア。ある日、イレーネはかわいがっていた姪っ子たちを旅行に連れ出すが、やはり母親との絆の違いを見せつけられ、侘しさを感じる。さらに、長年の付き合いだった男友達に新しい彼女ができたことで、少しずつ彼女の心に変化が訪れる。


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いやーーーー。よかった。
まず長さ!!
82分と言うコンパクトな長さで、なんだか世界中を旅した気持ちになるし、主人公イレーネの感情がしっかり伝わってきて、私はすごく素敵な映画でした。
その上、世界中の超がつく高級ホテルが次々登場して、単に部屋が写るっていうんじゃなくて、その調度品、バトラーの応対、テーブルセッティング、そういうのを細かく描写するので見ていてとっても楽しかったです。

 
 同じベッドに入ることができる、完全な友達


映画って人によって評価はマチマチだし、どっちかというと、がっちゃんは、「映画史上初の観客動員数を誇る」とか、「世界中の人が涙した」みたいな映画ってなんだかなぁ~て感想になることが多いんですが、この映画はしみじみと良い映画だったなぁ。と
不思議と男性のレビューを見ると「イタイおばさん」とか、「自立を目指してるけど、結局は孤独が怖いさびしい人」とか、酷評が目立ったけど、私は、多くの女性が共感するような気がします。
なんていうか、この映画案内とかにも書いてあったけど、「誰もが憧れるキャリアウーマン」みたいな描写。
男性が働いていること。またその仕事が人が憧れる内容の物であっても「キャリアマン」とは言わないのに、なぜ女性だけこういう言い方になるのか。そういうことも男性目線の一つなんだろうって思うんですよ。
だからこそ、私はあらすじのところも、「会社員」と書いたんですけど、そういう女性のもやもやを吹き飛ばしてくれる感じの映画でした。


 
 旅先では、口説かれることも・・・


あと、主演のマルゲリータ・ブイですが、私はこの人を見るたびにフランス人女優のメリル・ストりープを思い出してしまいます。
正直あんまり好きなタイプじゃないんですが、この人が出ている映画は、ほとんど例外なく面白いし、なんていうか引き込まれてしまう。
マルゲリータ・ブイもそんな感じで、すっごく自然にその役柄の人物になるんですよねぇ~。
『心のおもむくままに』では、まさにメリル・ストリープの『マディソン郡の橋』みたいな不倫女性を演じ切るし、
『イタリア的恋愛マニュアル』では倦怠期の夫婦を、『ジュリアは夕べにでかけない』では、囚人を、『もうひとつの世界』ではシスター役でしたが、なんかどれもピッタリはまる。
日本ではやっぱり大竹しのぶかなぁ~。しゃべり方とか好きじゃないんだけど、上手いって思います。


 
 くつろいでいるように見えて、実は細かいチェックをしている。



で、あらすじに書いた通り、この映画では、ホテル評価の覆面調査員を演じています。
これがまたカッチョイイイーーー。
正直、こんな仕事憧れるわぁ~。て思うんですよ。
だって会社のお金で一流ホテルが泊まり放題。マイルもたまるから、それでプライベートのバカンスにも行けちゃう。
家には、使い切れないほどのホテルのアメニティが並んでいるし、確かに家は寝るだけって感じにはなっちゃうけど、長年の付き合いの男友達や、近くには妹夫婦がいて、その姪っ子たちは可愛くてしょうがない。
で、はたから見て、羨ましいと思われる人生であっても、その本人にとっては孤独だっていうのは、ありがちですよね。
ただ、この映画は、その持って行き方が見事でした。
途中ちりばめられる、友達や家族との細かなエピソードとゴージャスなホテルの対比。
そして高級ホテルでにおけるラグジュアりーな空間や心地よい応対も、それを心から喜ぶのではなく、点数化してしまう自分。
そういった一つ一つの細かなシーンが、観ている人の心に少しずつ降り積もっていく。


 
 旅先で思いがけず心を開く瞬間


人生は人それぞれ、歩む道も目指す先も求めるものも違う。
そんな中、辛い時も悲しい時も落ち込むときがあったとしても、自分で自分の人生を選び取ろうとする主人公の姿を清々しいと思いました。
決して自分探しとか、そういう安易なものではなく、40歳を過ぎた独身の女性ならでは覚悟のようなものが、スクリーンからあふれてきて、本当に素敵な映画でした。

以下は、映画に登場したホテル。

ホテル・デゥ・クリヨン(フランス、パリ)
グシュタード・パレス(スイス・グシュタート)
フォンテヴェルデ・タスカン・リゾート&スパ(イタリア、サンカシャーノ・デル・バーニ)
パレ・ナマスカ(モロッコ、マラケシュ)
ボルゴ・イグナシア(イタリア、サヴェッレトリ・ディ・フザーノ)
ホテル・アドロン・ケビンスキー(ドイツ・ベルリン)
ザ・プリ・アンド・スパ(中国・上海)

みんなちゃんとロケしたそうで、かつバトラーや、ウェイター、フロントマネージャーなど、一部は本当に働いている方なんだとか。


ちなみに、字幕はまたもや岡本太郎・・・
台詞が比較的少ない映画だったからか、今回は割とフツーでした。


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2 コメント

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ご無沙汰です (クマネズミ)
2014-02-28 21:31:22
今晩は。
お久しぶりです。
『ボローニャの夕暮れ』と『ミラノ、愛に生きる』にコメントさせていただいて以来となります。
さて、「がっちゃん」さんにとり、「この映画はしみじみと良い映画だった」とのことですが、この映画は女性向きの映画というべきでしょうか、男性のクマネズミには、平板で少々盛り上がりに欠けているのではとの印象が残りました。
ところで、『塀の中のジュリアスシーザー』をご覧になって、「がっちゃん」さんは、「もう半分寝ました。で、その眠気を戦う「あくび」のせいで滂沱の涙・・・」などとお書きになっていますが、あるいは、登場人物がすべて男性の映画だから、ということはなかったでしょうか?
というのも、本作とは反対に、後者の映画は、クマネズミにはなかなか良く出来た作品のように思えましたので。
とはいえ、映画を男性向き・女性向きとレッテル貼りしても、それほど意味のあることとは思えないところですが!
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クマネズミさま (がっちゃん)
2014-03-02 14:34:10
ご無沙汰いたしております。
おっしゃる通り、映画を女性向、男性向きとのレッテル貼りをするのは意味がないかもしれませんが、好みはやはりジェンダーによって一部表れるのかもしれませんね。
感想をググってみても、どちらかと言うと、男性はこの映画の評価に厳しい方が多いようでした。

決して女性だからというのではないのですが、現実社会において、やはり女性が一人で食べていける職につくのはなかなか難しく、そういった獏とした不安を同性の方が感じやすかったのではないかと思います。


『塀の中の・・・』については、登場人物がすべて男性だったからと言うようなことではなく、刑務所の中で芝居をすることで、受刑者がどういう心境になるのかとか、その後、たとえば社会復帰や更生にどのようにつながるのかと言う説明が一切なく、単に、薄暗い中で延々と演じられる素人芝居が退屈だったと言うことです。
ただ、これも私の個人の感想なので、もちろんこの映画をすごく面白かったと思う方を否定するものではありません。
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