日伊文化交流協会

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映画:『フォンターナ広場 イタリアの陰謀』

2014年01月09日 18時08分41秒 | おすすめの映画
久々に面白いイタリア映画を見ました。
去年も10本以上は見たけど、ほぼ全滅。
面白かったのは『ローマ、恋のビフォーアフター』だけ。
他にも、まぁまぁ面白かったのが一つあったけど、わざわざレビューを書こうと思わなかったのはたぶん、「別にいいか。」って感じだったのかと。パンフレットも買わなかったしね。

ってことで、今回の作品はがっちゃんイチオシなので、詳しく紹介しちゃいます。ネタバレは一切なしなので、安心して読んでね。

■映画:フォンターナ広場 イタリアの陰謀(原題/Romanzo di una Strage)
■監督/脚本/原案:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ
■原作:パオロ・クッキアレッリ
■製作:マルコ・キメンツ ジョバンニ・スタビリーニ リカルド・トッツィ
■撮影:ロベルト・フォルツァ
■出演:バレリオ・マスタンドレアルイージ
ピエルフランチェスコ・ファビーノ/ミケーラ・チェスコン/ラウラ・キアッティ/ファブリツィオ・ジフーニ/ルイジ・ロ・カーショ/ジョルジョ・コランジェリ/オメロ・アントヌッティ、他
■製作:2012年/イタリア映画/129分



『フォンターナ広場 イタリアの陰謀』公式サイト


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《あらすじ》
不況が続くイタリアで、人々は職を求め各地でデモを繰り広げる中、警官隊との小競り合いから死者が出るなど、行き場を失った憎悪の炎がついにテロを呼び起こす。
1969年12月12日16時37分、ミラノにある農業銀行が爆破され、死者17人負傷者88人と言う大惨事となった。現場には、アナーキスト(無政府主義者)からの犯行声明が残されていたが、捜査関係者はネオ・ファシスト達の動向にも目を向ける。この事件の首謀者は一体誰なのか・・・。


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  デモ隊を阻止する警官

1969年、イタリアで実際に起こった、『フォンターナ事件』を題材に描いた社会派ドラマで、名前の由来は、農業銀行がミラノのドゥオーモ裏手にある、フォンターナ広場に面して建っているからです。
事件後40年以上たった今も、その真犯人は明らかになっていません。
実は、その容疑者の一人デルフォ・ゾルジ氏はなんと日本在住で、地裁では、被告人不在のまま終身刑判決となっていましたが、高裁で逆転無罪。イタリア最高裁は2005年5月3日、高裁判決を支持し、無罪が確定しています。
つまり、ゾルジ氏以外も含め、まだこの事件の関係者が存命中に未解決事件が映画化されたわけですが、その理由について、監督は『事件が起きた時、偶然現場近くにいて忘れられない記憶になっていること、しかしながら、イタリアの若者の多くが事件について何も知らないと感じたから』だと語っています。

 
  暗い画面から緊迫感が伝わってきます。

マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督は、『輝ける青春』と言うローマで暮らすある家族の37年間を、丁寧に描いた作品で知られています。
本作品も、登場人物の誰か一人を悪者に仕立て上げるような偏った解釈がなく、かといって、公平性を求めるあまり、レンズの奥から俯瞰的に見るだけの冷徹なドキュメンタリーとも違って、人々の心に丁寧に寄り添う形で語られるので、好きな監督の一人です。
ただ、丁寧に描き過ぎるため「無駄に長い」と言わざるを得なかった、今までの上映時間に比べ、今回は、映画を章に分けることで、すっきり整理され2時間に収められていて、それも好評価の一つです。
どんなに良い映画でも、長すぎると、(『輝ける青春』はなんと336分!!!)腰が痛いとか、トイレに行きたいとか、そんな理由で物語に入っていけなくなるので、やっぱり2時間ぐらいがいいな。って思いました。

 
  爆発物の威力に呆然と佇む

さて、作品に戻りますが、あらすじにも書いた通り、舞台はミラノ。時は1969年12月。
ヨーロッパでは東西冷戦が続き、学生運動の波が高まるイタリアでは、連日デモが続いていました。
そして、ついに銀行の爆破と言う、一般の市民が巻き込まれる無差別爆破テロが起こったのです。
日本でも、1974年の三菱重工爆破事件がありますが、あれよりも犯人像が絞り切れていない上に、イタリアの右派、左派はその主張は対極で、今でも激しく対立しています。
そういう中で、イタリア最大の未解決事件と呼ばれるこの題材を映画にするということは、非常に難しかったのではないかと思います。

 
  イタリアに今もある大手出版社フェルトリネッリ

映画に登場するのは、アナーキスト(無政府主義者)、そしてネオ・ファシスト(極右勢力)。その両方を監視する、内務省情報局、微妙な舵取りに翻弄される政府。そして捜査関係者たちです。
捜査関係者も、県警、公安に加え、裁判関係者、軍警察が入り乱れ、30人以上登場するので本当にその把握が難しい。
後になって、映画パンフレットが2種類あって、その一枚に「ご鑑賞の手引き」として主な登場人物の紹介があったのですが、あれをさいしょに見ておけばよかったと思うほどです。
でも、ヴァレリア・マスタンドレア、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ルイージ・ロ・カーショなど、名優揃いだったので、顔がごっちゃになることがなくて、助かりました。
ちなみに、まさにカメオ出演で、ルーカ・ジンガレッティが出ていて、モンタルバーノシリーズをこよなく愛するがっちゃんにとっても満足度高し!

 
  「人殺し」と言う落書きの前を通る主人公の悲哀


パンフレットに掲載されていた監督のインタビューから一部抜粋します。


 
 イタリアを憂う、ダマート首相


事件についての文献が大量に出版されたことで、光があてられたが、逆にその膨大なデータが、パズルにピースを加え続けたように事件を一層複雑なものとし、全体像を隠してしまった。
しかし、映画ならばあたかも個人的に体験したかのように、人々が事件につながり、ピースをつなぎあわせることが可能なのではないかと思った。
そのためには、偏見なしに、都合による解釈なしに、記述するべきであると考え、そのためには鍵となる出来事を一列に並べること、事実を物語ること、そして関係する人々の名前をそのまま使うことが重要だった。



と書いています。がっちゃんが今まで見た、史実をもとにして描いたと言われる作品は、

カリバルディのイタリア統一を描いた『赤いシャツ』(Camicie Rosse)
アルド・モーロ元首相誘拐暗殺事件を描いた『夜よこんにちわ』(Buongiorno Notte)
ジェノヴァサミット時の騒乱を描いた『闇に葬られた狂気』(Diaz)

などがありますけれど、特に『闇に葬られた狂気』は視点が被害者に立っているからか、かなり偏ったものを感じましたけれど、『フォンターナ広場』は、映画であること。つまりフィクションと言うメリットを最大限に生かしたものであったと思います。
とにかく、がっちゃんイチオシの作品です。
まだ始まったばかりですが、ミニシアター系の作品は上映期間が短いので、皆様お早目に!!


ちなみに、今回の字幕翻訳は鈴木昭裕って方。すごく簡潔で、それでいて、深く心にしみる言葉になっていて、素晴らしい!!
本当に岡本太郎じゃなくてよかった。
でも、パンフレットに文章があったけど

「整然と抑制された端正で荘重な作風の中で、不意に温かく、アイロニカルだがほっとさせる瞬間」


相変わらず意味不明
一体、映画会社はなぜにそれほど岡本太郎が好きなのか。




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