日伊文化交流協会

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24人目の証言者(イレーネ)

2008年12月14日 15時49分52秒 | 夕闇のせまるころに
■24人目の証言者(イレーネ:フランチェスカの担当看護師)

フランチェスカさんの場合は、午前が投薬と問診、午後は3時からの散歩が日課になっておりまして、いつも決まった時間にお嬢さんがいらっしゃり、一緒に過ごされます。看護士は立ち会いません。そのほうが自由に話ができますから。
けれどもあの日、8月13日の金曜日ですが、お嬢さんがいらっしゃらなかったらしいのです。「らしい」と言うのは、誰も見ていた者がいないのですよ。
いつもは、ほら、あそこにたくさんのベンチがあるでしょう? あの右から3番目が彼女のお気に入りで、天気の良い日は、あそこで待ち合わせ。雨が降ったら1階の談話室で会うのが2人の決まりだったようです。
曇りの日ですか? ええ、心の病気を抱えておられる方の多くは、予定外の出来事に遭遇すると、不安になられることが多いので、私どももこのような旗やプレートを用意しているんですよ。それぞれ、『緑の日は、外に出ましょう。』『黄色の日は、談話室や音楽室で過ごしましょう。』『赤色の旗が出たら、病室にもどりましょう。』の意味です。
この旗とプレートは門の前、談話室、病室の廊下などあちこちに表示されています。また、午前中晴れていても、急に雨が降ってきたり、暑すぎて熱中症などが心配されるような時間帯など、赤の表示に変わります。
記録によると、あの日は夕方までは緑でした。晴れていましたが、暑すぎず、心地よい風が吹いていたと書かれています。ですから、お2人は外で待ち合わせだったはずなのです。
それが・・・ あの日、5時にお父様がお嬢さんを迎えにいらしたときに、お嬢様が見当たらないと職員に申されまして。
いえ、御主人は面会されないんですよ。フランチェスカさんが興奮されるので・・・。
御主人が迎えに来られると、駐車場で待っておられるようです。私たちも滅多にお会いしませんから詳しいことは解りませんが・・・。
それが、お嬢さんが来ないので、病室に行って呼んできて欲しい。と受付でおっしゃったそうで、その時点で初めて、2人の姿が見当たらないことに気がつきました。
まだ明るく、雨も降っておりませんでしたし、だいたいの散歩コースは把握しておりましたので、まず周辺を探したのです。その時はすぐに見つかると思っていたのです。けれども、30分以上探しても、見当たらず、急に天候が崩れたこともあって、午後6時に警察に通報しました。
さらにその約1時間後、病院裏の茂みの脇で倒れているフランチェスカさんを職員が発見しました。
大きな外傷はありませんが、何度も転倒したのか、腕や足に擦過傷がありました。また雨に濡れて、低体温症に陥り、かなり危険な状態でした。
今はずいぶん回復しましたが、時々意識は混濁し、会話ができる状態ではありません。
よほどショックなことがあったようです。



これはAl Calar della Seraの日本語バージョンであり、フィクションです。
実在する氏名との重複があったとしても、なんら関係はございません。



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