日伊文化交流協会

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映画『闇に葬られた狂気』

2012年11月24日 20時16分51秒 | おすすめの映画
大阪ヨーロッパ映画祭、10年以上前には毎年楽しみにしていたのですが、11月の連休は毎年ポルタでのフラッグショーと重なってしまい、ここ10年一度も足を運ぶことができずにいました。
とうとうフラッグショーがなくなったので、今年は久しぶりに行ってみようと楽しみにして出かけたのですが、なんと言ってもイタリア映画が少ない。
まぁ2年前からイタリア映画祭と言うイベントが始まったので、ヨーロッパの中でもほかの国の作品が多くなるのは仕方のないこと。
さらに、今年は、ブルーノ・ガンツ特集と言うことで、スイス・ドイツ映画が多かったです。
で、私が見た映画も、正確にはイタリア映画ではなく、イタリア・ルーマニア・フランスとなっています。

■邦題:闇に葬られた狂気
■原題:Diaz
■英語タイトル:Don’t Clean Up this Blood
■言語:イタリア語、英語、フランス語、その他
■監督:ダニエーレ・ヴィカリ
■キャスト:クラウディオ・サンタマリア、ジェニファー・ウルリッヒ、エリオ・ジェルマーノ
■製作年:2012年/イタリア・ルーマニア・フランス/127分



≪あらすじ≫公式サイトより転載

2001年7月、イタリアのジェノバでG8サミットが開催される。他国と同様にイタリアでも反グローバリゼーションの抗議運動が起こっていた。ここ数日間、街ではデモ隊と警察が激しく衝突し、ひとりの青年が警官に撃たれて命を落とす。このショッキングな事件を追いかけ、ジャーナリストのルカは街へ出た。サミット会議場の近くにあるディアス校ではジャーナリストのための公開討論会の準備が行われ、ヨーロッパ中から若者が集まっていた。彼らはいたって善良で、警察との衝突など予想もしていない。ディアスはそんな若者やジャーナリストの宿泊所となり、ルカもその中にいた。ほかにも宿が取れない人たちを受け入れ、それぞれに眠りにつく用意をしていた真夜中のこと。数百人の警官隊が学校を襲撃する。警察はそこに居合わせた無抵抗な人々を次々と殴打し、わずかな時間でほとんどすべての人が病院送りか拘置所行きとなった。警察は自分たちの行動を正当だとして、学校で発見したという凶器や火炎瓶を証拠に差し出すのだが。国際アムネスティが大戦後最悪の事件と告発した実話の映画化




とありましてね、ドキュメンタリータッチの映画であることは謳われていたのですが、ドキュメンタリーと俳優を使った映画はやっぱり違うわけですよ。
つまり、どちらかの側からしか手に入れられなかった情報テープを流すドキュメンタリー(これもどうかと思いますが)つまり限られた情報源だけれども、それが現実のフィルムの場合は正しいドキュメンタリーと言えるけれど、あくまでこれは「ある事実」(それが本当かどうかの検証もないのですが)をもとにしての映画の場合、やはり俯瞰してみるべき視点と両方の立場を描く必要があると思うのですが、この映画はとにかく苛烈な暴力シーンが延々と続く。
そこには、何故? 誰が? 何の目的で? と言う説明が一切ないのです。
きっと戦争も同じようなことで、もう戦っている者同士は相手を殺すことしか考えていないから、そこに理由などないのだろうけれど、この映画はあまりにも一方的に警察が悪者なのです。
とにかく127分の映画の中で、90分以上は暴力シーン。その上、こういう手法をなんというのか忘れちゃいましたけれど、フラッシュバックみたいに、暴力シーンは始まる10分~20分前に突然戻るんですよ。見ている方は混乱するばかり。って感じでした。

あらすじは最初に書いた通りなのですが、まずG8開催を反対する若者たちが、ATMや商店を破壊し、車を燃やし、ゴミ箱をひっくり返し、とにかく暴れまくるわけです。
その若者はイタリア人ではなく、『ブラック・ブロック』と呼ばれる、アナーキストグループで、騒ぎを起こすことだけを目的にして、そこに主義主張も何もないという外国人と言う設定。
一方、ディアス高校がメディアセンターのようになって、かつ簡易宿泊所として動いているのですが、実際にはそこに集まっているのは、一般人、ジャーナリストに交じって、偽物のプレスカードを示して過激派も入り込んでいたりして、見ている方は、何の活動場所なのかよくわからない。
かつ、本来は高校であるはずの場所がどうしてそのようなことに場所を提供しているのかも説明がないし、そこに集まっている人はいわゆるヒッピーのような感じの若者ばかりで、ジャーナリストもいることにはいるけれど、G8を取材している正規のジャーナリストではなく、何を取材しているのかもよくわからない。
一方、警察はのパトカーが襲われたり、パトロール中に火炎瓶を発見したり、過激派たちの動きが一段と活発になってきていることに危機感を募らせ、ついに彼らのアジト(ディアス高校)を制圧することになるのですが、何故催涙弾を使わないのかと言う説明もないままに、上官の指令を無視して、両手を上げて降参の意を示している人たちを警棒で徹底的に叩きのめし、足で蹴り上げ、さらには消火器を持ち出して、倒れた人にまき散らすシーンなど、とにかく目を覆うような暴力シーンが延々と続くのです。
そして署に連行した彼らに対し、正統な裁判を受けさせず、留置所では壁に向かって立たせ、疲れて座り込む人をさらに殴り、若い女性は別室に呼び出して裸にしてレイプしたり、首輪をつけ、はいつくばらせて犬の真似をさせる。排泄行為をたくさんの人間が見ている前でさせる。
こんなシーンが続いて、もうとにかく見ていられない状況でした。
実際、アブグレイブ刑務所の例など、米兵が刑務所内で行っていた虐待の例もあり、このタイトルに示されるような『闇に葬られた狂気』と言うのは存在するのだと思います。
こういう事実があった。と言うのなら、それを知らしめる上で、ドキュメンタリー映画と言うのは有効な手段だと思います。
実際に、ネットなどで、G8 Genova torturaなどで検索するとその後の裁判記事が見つかり、その罪が軽すぎると批判の対象になっているようです。
しかしながら、映画の中では、本当に過激派たちはすべて無事に逃げおおせる設定になっているのですが、その学校にいた人が、まったく罪のない人ばかりだったのか、もちろん罪を犯していたとしても、映画の中で描かれるような虐待が許されるわけではないのですが、とにかくイタリアの警察が「ロクデナシ」であるということばかり強調しているようで、納得できませんでした。


以前からこの映画の主催者の選択が、少し左寄りな感じがしていたのですが、イタリア映画にはもっと楽しく素敵なお話もたくさんあるのに、どうしてこれが数少ないイタリア映画の一つに選ばれたのか疑問です。

そうそう、でもこんな映画の中でもついつい、イタリアと日本の違いみたいなのをみてしまうのが、がっちゃんですが、とにかくイタリアの規律ってゆるいなぁ~って思います。
日本の警察について詳しいわけじゃないけど、なんていうか、上司にもフツーにタメ口で話してるし、今から制圧に行く。っていうようなときで整列している最中にタバコを吸うとか、そういうのってないんじゃないかなぁ~。
とにかく「貧困と闘う」と掲げながら、真面目に働いて生計を立てている人々の生活を破壊する暴力破壊行為は許せないと思うし、その意味で、日本は『平和だ~』と実感した映画でした。


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