’08/06/04の朝刊記事から
韓国・牛肉輸入再開撤回 世論に配慮 異例の事態
対米関係は悪化もAC
【ソウル3日井田哲一】韓国政府は3日、生後30カ月以上の牛肉の輸出差し止めを米政府に要請し、米国産牛肉の輸入制限解除を撤回したことは、いったん他国との間で合意した取り決めについて、事実上の再交渉を求める外交上異例の事態といえる。
公約の経済再建で成果がなく、支持率が急落した李明博政権は、外交関係を犠牲にしても、輸入再開に猛反発する世論に配慮せざるを得なかった。
李大統領は3日の閣議で「多数の国民が望まない限り、30カ月以上の牛肉を輸入しないのは当然だ」と述べ、牛海綿状脳症(BSE)の危険性を問題視する国民の意向を、最大限尊重する姿勢を強調した。
発言の背景には、4日に地方選挙を控え、支持率が20%前後に低迷する苦しい事情がある。
さらに、「大統領は米国が韓国の状況を理解してくれると信じている」(大統領府関係者)との楽観的な見通しもあった。
しかし、バシュボウ駐韓米大使は同日、柳明桓外交通商相に失望感を表明、記者団に対し、「(米韓の合意は)科学的根拠に基づいており、再交渉の必要性は感じない」と強調した。
聯合ニュースも「米国側が簡単に韓国の要求に応じる可能性は低い」とし、改善が進んでいた米韓関係に悪影響を与えるとの見方を伝えた。
一方、連日の抗議集会を主催する市民団体は、今回の再交渉要請について「国民の抵抗をかわすための一時的なごまかし」と批判。
ソウル市庁舎前広場では3日夜も、輸入再開に反対する約1万人の集会が開かれ、政府の方針転換にもかかわらず、事態が沈静化する気配はない。
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