’08/05/19の朝刊記事から
変わる中国
献血車に行列/報道に検閲なし/日本隊に「感動」
四川大地震の被災状況を積極公開して国民に結束を呼びかける一方、自然災害で初めて外国の救援隊を受け入れを決断した中国は、チベット騒乱や北京五輪聖火リレーをめぐる混乱で深めた孤立から一転、「世界と手を結ぶ国」へと印象を変えた。
しかし、国内メディアは困窮する被災者の不満の声などを伝えておらず、国際社会からは「政治的な宣伝」との批判も出ている。(北京・高山昌行、佐々木学)
「私は200元(約3千円)を寄付しました。当然のことです」
北京で働く20代の飲食店従業員は、月収の十分の一にあたる「大金」を惜しみなく被災地に寄付した。
献血熱も高い。
北京の繁華街では連日早朝から献血車の前に人が並び、「他人のことには無関心」とも言われる中国人の意識の変化をうかがわせる。
団結心が高まった背景には、精力的な震災報道を続ける国営メディアの影響がある。
中国中央テレビは、生存者の奇跡的な救出を生中継。
新華社通信は被災地に80人以上の記者を投入している。
中国筋によると、今回の震災報道で事前の検閲はないという。
被災者救出のために日本など4カ国が要員を派遣したことは、国民に「中国は孤独ではない」ことを印象づけた。
「困難なときに手を差し伸べてくれるのが真の友人。ありがとう、日本」。
インターネット上では、国際緊急援助隊を他国に先駆けて派遣した日本への感謝の言葉が並ぶ。
重慶の日本総領事館には、湖南省の男性から「祖父から日本軍の蛮行を聞かされ、日本が嫌いだったが、被災地に日本の援助隊が来るニュースに感動して涙が出た」との電話があった。
中国世論の対日感情は和らぎつつある。
一方、今回の震災で四川省内だけで7千棟近い校舎が倒壊するなど、手抜き工事や政府のずさんな地震対策への不満も高まっている。
国営メディアは、救援部隊の「英雄的」活動ばかりを報じ、政府批判につながりかねない被災者の不満や批判を伝えていない。
国際社会では、偏った震災報道は「権力維持のための政治宣伝」(英紙フィナンシャル・タイムズ)との批判も出ている。
Kodak DC4800