オータムリーフの部屋

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JR北海道の事故が止まらない

2013-09-25 | 政治

JR北海道で今月7日、上野行きの寝台特急「北斗星」の回送列車を札幌駅へ移動させようとした男性運転士(32)が、自動列車停止装置(ATS)を誤作動させ、そのミスを隠すためにATSのスイッチをハンマーで壊していたことが、JR北海道への取材でわかった。(9/17付 読売新聞)
 このニュースの異常さは尋常ではない。思い出すのが、2005年に起きた福知山線の脱線転覆事故である。死亡した運転手が、遅れを回復するために、制限速度を大幅に超えた状態で急カーブに突入したと云われている。その背景には遅れれば上司から叱責され、場合によっては乗務禁止や停止、日勤教育という過酷な研修を受けさせられる実態が報じられた。今回の北斗星機関士も叱責・ペナルティの恐怖からパニックに陥り、あのような異常行動を取ったのではないか。これだけ事故が続くのは多くの社員が国鉄マンとしてのプライドを失い、過ストレス状態で勤務し、保身しか考えが及ばない精神構造になっているのが要因ではないか。プライド高き鉄道マンは既に過去のものなのかもしれない。
 JR北海道の一連の不祥事は国鉄分割民営化から始まった根深いものだ。
 
 JR北の鉄道路線計約2500キロのうち、半分の約1170キロがローカル線の「地方交通線」だ。幹線も人口密度の低い地域を走っており、大半が不採算の赤字路線とされる。
 「北海道の厳しい自然環境に対応するため、レールの保守にはかなりの手間がかかるが、赤字経営のJR北では限られた予算、人員で対応してきた」。こう語るのは、鉄道の安全性を研究している日大生産工学部の綱島均教授(54)=機械工学=だ。JRの構造的な問題は、ほかにもある。鉄道アナリストの川島令三(りょうぞう)氏(63)は「国鉄末期に採用を抑制し民営化後も人員を整理した結果、世代間の断絶が生じ、技術の伝承もできていない」と指摘する。
 
 旧国鉄の保線区長やJR貨物の保全部長を歴任した北海学園大工学部の上浦正樹教授(63)=鉄道工学=は、「レールの保守に携わる人間は基準値を超えることが恐ろしく、早く直さなければいけないという気持ちになる。列車の運転を取りやめて補修するのが保線区の使命だ」と語る。脱線現場の枕木は、レール幅が広がりやすい木製だったが、レールを固定するくぎを打ち直せば比較的容易に補修できたとされる。 脱線現場は列車の待避や追い越しなどに使われる「副本線」。異常を放置していた担当者は「本線より優先順位が後という意識があった」と話したというが、異常箇所は、特急列車が高速で通過する「本線」にも及び、北海道内全域に広がった。上浦教授によると、レールの異常が分かる「軌道検測チャート図」というデータが保線区から本社に報告される仕組みになっており、「本社も数値を見ればすぐに『これはまずい』と気付いたはず」だという。
 現場の保線区だけでなく、会社組織全体の問題が問われている事態に、上浦教授は「鉄道マンとしての安全意識が希薄としか思えない」と批判した。

 同社によると、レールの異常は宗谷線や函館線などの本線で49カ所、駅構内などですれ違ったり一時退避したりする「副本線」で48カ所の合計97カ所見つかった。
 同社の野島誠社長は22日の記者会見で、レールの異常が放置された理由を「検査情報の整理と修繕計画の連携ができておらず、補修を先延ばしして失念してしまった」と述べた。

 
 旧国鉄の中でも、北海道のJRは特異であった。北海道では私鉄がなく競争相手がない。JR北海道は線路などの設備の近代化が進んでいなかったうえに、必要な設備投資を怠って電化が遅れ、整備に手間がかかるディーゼルエンジンの車両が多くなっている。これに加えて1987年の分割民営化後の採用抑制が世代の断絶を招き、技術の伝承を阻害した。そのためJR北海道の社員は40歳代の労働者が極端に少ない、いびつな世代構成になっている。分割民営化当時1万4千人いた社員は、現在7100人とほぼ半減。その一方で特急列車の運転数は民営化当初の約2倍になった。 整備や点検、修理のすべてを職員が行っていた国鉄時代と違い、下請け会社にまかせる外注化も進んでいる。
 
 これだけ事故が多いということは、組織的な問題があるとしか思えない。仕事に誇りが持てず、毎日の重労働にうんざりし、しかも鉄道部門は未来永劫赤字である。士気が上がらない、将来に希望が持てない・・・・そんな職場環境が安全をなおざりにする風土を生む。赤字路線を廃止してバスを走らせるしか抜本的解決はないと思う。赤字路線を維持する体力はもう残っていないように見える。
 
 そして思い出すのは東電である。世界から批判され、住民に罵倒され、政府から責められる。福島に勤務している東電社員も同じような精神構造になっても不思議ではない。
硬直した組織に自浄作用はない。JR北海道も東電も国の管理下に置いて解体し、一から出直すしかないのではないだろうか。JALのように黒字化した時点で、再度、民営化すればよいではないか。

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