個人総合で優勝し、ガッツポーズする内村
体操の世界選手権は15日、ロンドンの02(オーツー)アリーナで男子個人総合の決勝を行い、北京五輪銀メダリストで初出場の内村航平(20)=日体大=が91・500点で金メダルに輝き、五輪、世界選手権を通じて日本勢史上最年少となる個人総合王者が誕生した。
大会は2012年ロンドン五輪の会場で行われ、04年アテネ五輪の団体総合優勝で復活を遂げた「体操ニッポン」新世代のエースは2位に2・575点の大差。3年後の五輪本番に向けて大きな弾みをつけた。
世界選手権の個人総合王者は1970年の監物永三、74年の笠松茂、05年の冨田洋之に続き4人目。五輪では東京大会での遠藤幸雄、メキシコ、ミュンヘン両大会の加藤沢男、ロサンゼルス大会の具志堅幸司が優勝している。
北京五輪王者の楊威(中国)や冨田らの引退で体操界の世代交代が進む中、13日の予選をトップ通過した内村は武器である難しさと美しさを両立した演技でアピールした。
内村航平
「世界一になった実感はないけど、鳥肌がちょっと立っている。最後まで耐えることができたのが、結果につながったと思う。楽しい半面、きつい面もあったけど、結果が結果だからすごく楽しかった」
内村 航平(うちむら・こうへい)
08年北京五輪の個人総合、団体総合で銀メダル。元体操選手の両親が営む体操クラブで体操を始めた。中学卒業とともに上京し、朝日生命クラブで練習していた東京・東洋高時代の06年全日本ジュニア選手権で優勝。全日本選手権は2連覇中。世界選手権は初出場。得意種目は床運動。日体大3年。妹の春日も日体大の体操選手。160センチ、54キロ。20歳。長崎県出身
出場を見送った2001年を除き、日本は7大会連続で男子個人総合のメダルを獲得。6種目が必要なオールラウンダーが育つ背景には、個人総合を重視する日本のこだわりがある。
現在の採点規則の最高はG難度。10点満点も廃止され、技の高度化は進んだ。6種目で高度な演技構成を求められる個人総合より、種目別を重視するのが世界的な傾向となった。12年ロンドン五輪の団体総合が1チーム6人から5人になり、その分、種目別でより多くの国・地域が参加できるようになったのもその流れを象徴する。
しかし、伝統的に団体総合の頂点を目指す日本は、個人でも総合のトップこそ体操の王者という考えがある。世界を見渡しても万能型の選手は少なく、個人総合王者には大きな意義がある。「6種目で体操。それで1番になることに価値がある」という内村は、体操ニッポンの遺伝子を受け継ぐ存在なのだ。
冨田洋之コーチ
「盤石な試合運びだった。(優勝を)狙って(その通りの)結果も出して、これで一回り大きくなったと思う。どんどん勝ち続けてほしいし、“内村時代”の到来を感じた」
塚原光男・日本選手団団長
「よく頑張った。自信が出てきたと思う。ただ、平行棒の失敗は五輪で許されない。さらに上の完ぺきな演技をしてほしい」
二木英徳・日本体操協会会長
「内村選手が4年ぶりに個人総合の世界チャンピオンの座を日本に奪還してくれたことを誇りに思う。体操ニッポンとしてロンドン五輪に向けていいスタートが切れた」(サンスポ)