「こうしたい」と「つくる」の間に 一級建築士事務所アーク・ライフのブログ

東京都町田市の一級建築士事務所アーク・ライフです。住まい手の「こうしたい」と「つくる」の間で要望を共有し一緒に考えます。

信州・伊那の有賀建具店を訪問

2007-06-30 22:31:00 | 家具

信州・伊那に、工房見学を兼ねた家具の打ち合わせに行ってきました。

訪ねた工房は有賀建具店。有賀建具店の有賀さんは無垢の木にこだわって家具・建具作りをしている工房です。そのこだわりは、使っている木の種類の多さにも現れていて、打ち合わせをした事務所の壁には100を超える種類の木の見本が吊るされていました。その種類の一例を挙げれば、アサダ、イチイ、ウルシ、オニグルミ、カヤ、キハダ、ケヤキ、サワラ、シオジ、杉、セン、タモ、椿、ニレ、桧、マカバ(樺)、ミズナラ、みかん・・・等々、選ぶのも一苦労なほどです。

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工房は、信州・伊那谷の、木曽山脈の麓近くの川沿いの段丘の上にあります。工房の建物の周りには、天然乾燥中の材木が積み重ねられていました。材木を原木から様々な厚みで切り出した後、このように屋外で5年間天然乾燥するそうです。5年間天然乾燥すると材木が反ったり曲がったりするので、その分を修正するため、4cmの厚みの板が必要なときは5cmの厚みで切り出しておくそうです。

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屋外で天然乾燥させる際、蜂等の虫が木材の中に入り込み、穴を開けることもあるようです。それはそれとして、穴の開いた部分を避けたり、穴を生かしたりしながら、材木を使うようです。虫害を防ぐ為に薬品を使うようなことはしていないとのことでした。このあたりにも有賀さんのこだわりを感じました。

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クヌギ:最近は燃料として用いない為、里山のクヌギの木も家具に使えるくらい大きくなっているそうです。固くて良い木だそうです。

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樺の木(マカバ):白樺とは少し違うようです。固くて良い木だそうです。

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神代タモ:神代というのは土石流や火山灰等で埋もれてしまっていた木が掘り起こされて出てきたものにつく呼び名です。

5年間乾燥させた木材は、屋根付の保存場所にしまわれます。材木が多すぎて、どこに何があるか分からなくなってしまっているとのことでした。

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作業場はこの真上にあります。
工房の入り口の戸は開け放しで、ツバメが出たり入ったりして、天井にある巣の中の雛にえさをあげていました。「ツバメがいるので、戸を閉められない。ツバメの糞が落ちてこないように巣の下に板を敷いている」とのことでした。他の生き物のことを迷惑がっていない様子が個性的でした。

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作業場の中では職人さんたちが家具や建具造りをしていました。その様子を見た一緒に来ていた施主さんは、建具のうちの一つを有賀さんで作ってもらうことも考え始めたようでした。

打ち合わせでは、場所ごとに何の木を使うか、どういう作り方をするかを検討しました。何の木を使うかは、事務所の壁にある木の見本を見ながら、事務所にある家具を見ながら(ニレ、キハダ、セン等、色々な木でつくった家具がありました。)検討しました。「新しいとこうだけど、日に焼けるとこうなる」とか、今ある木は何かとか、木の性質、見た目の印象なども含めて考えながらの打合せでした。

結果、家具・カウンター類で使うことになった木の種類は11箇所で9種類。まだまだ完成品を見るには作業もあるし、時間的にも先のことですが楽しみです。

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初めて行く伊那は、明るくて広い谷間で、涼しい風がそよそよと吹く場所でした。有賀さんの工房といい、伊那といいなかなか素敵な場所でした。


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