「こうしたい」と「つくる」の間に 一級建築士事務所アーク・ライフのブログ

東京都町田市の一級建築士事務所アーク・ライフです。住まい手の「こうしたい」と「つくる」の間で要望を共有し一緒に考えます。

梅雨が終わったところで、雨漏り調査のお話し

2019-07-30 14:39:58 | 雨漏り
やっと梅雨明けしたかと思えば次は猛暑となりました。娘の小学校でも梅雨が長引き水泳の授業がなかなかできず、梅雨明け後は熱中症の危険有りということでまたしても夏休み中のプール授業も中止と、気候に翻弄されているようです。

そんないつもより長い梅雨でしたが、5月から頂いていた雨漏り相談の解決には役に立ってくれました(?)。

20年近く前にリフォームをお手伝いさせていただいた住宅の住まい手様からお電話を頂き、その後他業者で別の箇所をリフォームしたところ雨漏りが発生、何度も対応に来てもらっているが再発し、解決していないとのこと。
雨漏りしてくるのは1階の台所の出窓、北側から雨が吹き付けた時に出窓の枠からポタポタと水が垂れてくるとのことでした。

連休明けに訪問させていただき、有償対応となること、大工さんに入ってもらって室内を部分的に解体することを説明しご了承頂いたので原因確認の調査を開始しました。

雨漏り調査は以下のような手順で進めることにしました。
壁を室内から部分的に取り外し、壁の中に入ってきた水がすぐに見えるようにした上で、台所の出窓のすぐ上から水をかけ始め、徐々に水をかける場所を上に移動させていきます。
壁を部分的に取り外した部分から水が見えたところで水かけ中止、その時に水をかけた場所を更に重点的に調べる事にします。



(1)調査1回目
雨漏りしてくる1階の台所の出窓の上、換気扇の覆いを取り外して壁のボードを開けました。
その上で外から水をかけます。かける順番は、始めは出窓のすぐ上、それから徐々に水をかける場所を上に移動させていきます。
台所の窓の直上の2階の窓の隅に水をかけたところで、壁の中に水が垂れてくるのを確認しました。



この段階で、2階の窓の隅が雨漏りの原因と推測できましたので、水かけテストの水が乾いた段階でその部分にコーキングを施こして、再度水かけテストをすることになりました。

(2)再度の雨漏り




その後、2階の窓廻りのコーキングをする前に雨が降り、台所出窓から雨が漏ってきたということで訪問。
さらに壁を取り外す範囲を大きくして雨漏りの様子を確認することになりました。

(3)調査2回目



雨漏りしてくる1階台所の出窓上、食器乾燥機を取外し、壁のボードを開けました。



同時に、2階の窓下も壁を開け、水が壁の中に入ったらすぐにわかるように準備しました。



すると、2階の窓下の壁を開けた箇所には、白蟻の食害痕もありました。
雨漏りで木材が濡れていた痕などもあり、2階窓廻りが雨漏りの原因ではないかと、住まい手様、大工さん、私達の確信が深まりました。

水かけは1階の台所の窓上から開始、徐々に水をかける場所を上に移動させました。
室内では、1階台所と、2階窓下の2か所で壁の中に水が垂れてこないかを待ち構えました。




…すると今回も、2階の窓廻りに水をかけたところで壁の中に水が垂れてきました。

(4)2階の窓廻りのコーキング実施
2回の調査と雨漏りの様子を受け、2階の窓廻りにコーキングをすることにしました。
晴天が続き、コーキング施工に問題が無くなった段階で2階の窓廻りにコーキングを施工しました。

(5)調査3回目
2回目の雨漏り調査の後、白蟻防除業者のアドバイスもあり、2階の窓廻りの壁のボードを開ける部分を増やすことになりました。



その上で水かけすると…
今回も、2階の窓廻りに水をかけたところで壁の中に水が垂れてきました。



大工さんも、「しっかりコーキングを施したのだけど…」と釈然としない様子。
2階窓廻りを良く見ると、窓の隅からひび割れが伸びているのが見つかりました。
そのひび割れをカッターでほじってみると削れること削れること、どうやらこの部分は大きなモルタルのひび割れをコーキングで埋め、その上に塗装をかけてあったようでした。



ひび割れをむき出しにしてドライヤーで乾かし、プライマー、コーキングと施工してから再度水かけすると…
見事、今回は雨漏りしませんでした。

とはいえこれは応急手当。シールが劣化したり、ひび割れたりすれば再度雨漏りすることが予想され、根本的な雨漏り改善とはいえません。それでも、今のお住まいに何年住むかということを考え、このような弱点を定期的に確認するというのも、お住まいになる方のご了解の上ではありますが、一つの対応方法かと思います。今回はこの状態である程度様子を見たうえで、弱点については外壁塗装の際にUカットシールを施して対応するということになりそうです。

その後、北側から吹付けるような雨は降っていませんが、この長い梅雨の中では雨漏りは再現していないとのことです。
一応、今回の長梅雨によるテストは合格(?)でしょうか。

長い梅雨と並行するような、長い雨漏り調査になりましたが、無事、雨漏り調査で原因を把握し、住まい手様のご事情に合わせた対応もさせていただくことが出来ました。
お困りの雨漏りについて、弊事務所を信頼して頂き、調査にご協力頂いたO様、何度も雨漏り調査に協力していただき、沢山の引き出しの中から様々な提案をして下さったM建築M棟梁様ありがとうございました。

雨漏りの原因推測

2007-02-19 11:48:47 | 雨漏り

最近、「住まいの健康診断」の仕事で木造2階建て戸建住宅の雨漏りの原因推測を行いました。

Memo1_1
雨漏り原因の推測メモ(全体の位置関係の把握)

1階和室の押入に雨漏りしていて、押入の上はルーフバルコニー。ルーフバルコニーの排水口の不具合が雨漏りの原因ではないかと推測しました。

Memo2_1
雨漏り原因の推測メモ(部分の詳細)

推測するための元情報は現場の観察、推測の方法は図化することです。推測が正しいことを確かめるには、その場所に水を吹付けてみる必要がありますが、今回は診断だけの仕事なので推測した結果をお客さんに説明して終わりです。

今回は比較的原因の推測がしやすかったですが、原因が分かりにくいこともあります。そんなときは、「いつ」、「どこから」、「どのように」雨漏りしたかの記録があると、原因を推測しやすいです。特に、「いつ」が記録してあると、どのような気象条件のときに雨漏りしたか、近くのアメダスのデータで確認できます。

雨漏りで困っている方は、「いつ」、「どこから」、「どのように」雨漏りしたか記録をとると、専門家に依頼するときにいいですよ。