「こうしたい」と「つくる」の間に 一級建築士事務所アーク・ライフのブログ

東京都町田市の一級建築士事務所アーク・ライフです。住まい手の「こうしたい」と「つくる」の間で要望を共有し一緒に考えます。

中越沖地震の現地に行ってきました

2007-08-07 20:27:58 | インポート

7月28・29日の土日に行った中越の記事をやっと書きました。

7月28・29日の土日を利用し、NPO法人日本民家再生リサイクル協会(以下JMRA)の活動に同行させてもらって中越沖地震の被災地に行ってきました。

行くことに決めたのは前々日の26日。直前だったため、色々な約束を強引にキャンセルし、廻りに迷惑をかけながらの中越行でした。

ルート・コース
7/28(土)
JR中央線日野駅(6:00)→圏央道あきる野IC→関越鶴ヶ島JCT→関越小千谷IC→小国町→柏崎市内西本町西永寺(9:30)→西本町・東本町を歩く→西本町で相談→越後線沿いに刈羽村へ→刈羽村役場→北陸道西山IC→新潟市内(泊)

7/29(日)
新潟市内→北陸道西山IC→刈羽村役場→刈羽村の集落をまわり相談・周知→刈羽村役場→北陸道西山IC→関越道長岡JCT→関越道所沢IC→JR中央線日野駅(23:00)

■ルート途上
関越道小千谷ICを降りて小国町経由で柏崎市へ向かいました。途中、道の路肩が崩れた跡や、道路をアスファルトで復旧した跡が見られました。山道 沿いの集落には傾いた民家や、屋根にブルーシートを被せた民家が見られた。柏崎市内に入ると、所々に傾いたり、解体されて廃材の山になっている家がありま した。道中大阪ガスの災害救援車輌や神奈川県警のパトカー、自衛隊のトラック等とすれ違いました。

■概要(柏崎)
柏崎市街は面的に建物が軒並み倒壊しているという状況ではなく、倒壊する条件に合致した建物が所々倒壊しているという状況でした。特に、築年数の 経っている瓦屋根・町家型の前面開口の大きい建物が倒壊していました。屋根が重く、壁のバランスが悪い建物の被害が多いようでした。

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地割れの跡が多かったですが、ほとんどの車道や歩道はアスファルトで仮復旧していました。抜け上がりの発生しているマンションもありました。

街頭に掲示されていた柏崎日報によると応急危険度判定は23日までにほぼ終了し、危険が4616棟(危険)、黄色が8292棟(要注意)、緑が19179棟(調査済)だったようです。

■概要(刈羽)
滝谷、西元寺、十日市、割町新田などの柏崎刈羽原子力発電所から一山挟んだあたりの集落を廻りました。

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集落の建物の全てが倒壊という状況ではなく、古くて、バランスの悪い家が倒壊しているという状況でした。特に、前面が全開口している作業場・車庫 などの倒壊が目立ちました。土蔵も多くありましたが、土が剥落したり傾斜があったりするものの、構造材に損傷があるようなものは見当たりませんでした。

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山際の切り土の部分は地盤がいいようですが、田んぼ側は地盤が悪いようで、傾いた建物もありました。切り土と盛土の境に経っている家は盛土側にある玄関と広縁が落ちていたりしました。

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大黒柱、差鴨居があり、小壁のせいが6尺くらいある、伝統的な工法の住宅はほとんど損傷無くたっていました。最近建てられたような住宅も損傷無く建っていました。建物自体に損傷はないものの、瓦が落ちたり、棟が落ちたりした建物もありました。

■今回の目的と内容
今回のJMRAの活動の目的は、応急危険度判定の結果、危険と判定されても、必要な補修をして継続使用できる場合があることを住んでいる方に伝え、なるべく今の家を直して住んでもらうことでした。

この活動は、JMRAの理事でもある、新潟県在住の建築家、長谷川順一さんが中心になって行なっているものだそうです。中越地震、能登半島沖地震の時には30件以上の民家を修復したそうです。

このような大きな地震があったあとは、解体業者が入ってきて「応急危険度判定の赤紙=壊さなければならない」と言い、精神的なショックを受けてい るところに付け込んであっという間に解体してしまうそうです。そして解体後、再建が出来ずに途方にくれるという人が出たりすることもあるそうです。

そのようなことが無いようにという生活保障の観点、貴重な建物を保存するという観点、ゴミを増やさないという観点等々に基づき、地域を廻り、赤紙 が貼られた建物でも直せること、壊すにしてもすぐではなく、落ち着いて思い出のものをとっておいてから解体できるという選択があることを伝えるという活動 でした。
実際に、赤紙が貼られた家の人を訪ね、趣旨を話して建物を見せていただいたりしました。建物をみると、残留変形がほとんどなかったり、構造材に 損傷がなかったりとすぐに壊す必要は無く、補強すれば充分住み続けられる状況でした。そのことをお伝えすると、住んでいる人は本当に安心した様子でした。

中には、直さずに解体し、遠方のお子さんのところに身を寄せるというお年寄りの方もいました。そんな方でも、すぐに壊すのではなく、徐々に思い出の品を運び出しながら生活を移していけそうだとわかって、安心された様子でした。

■感想
漠然と目的意識を定めずに飛び込んだ中越行でした。現地を色々見ることで地震の実際の影響を肌で実感できました。その内容は仕事の耐震診断・耐震 補強や新築の構造の考え方に生かせるように思います。又、こういう大変な時だからこそ、専門家が知識や技術を生かして相談に乗ることが、住んでいる人の大 きな力になることも実感しました。

自分自身としては、一人の専門家として対応するというところまでは至らなかったのですが、幾分でもお手伝いが出来たことはよかったと思います。

修復の活動をされている長谷川順一さんのblogはこちらhttp://blog.livedoor.jp/niigata_sumai/
NPO法人日本民家再生リサイクル協会のwebサイトはこちらhttp://www.minka.gr.jp/