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「こうしたい」と「つくる」の間に 一級建築士事務所アーク・ライフのブログ

東京都町田市の一級建築士事務所アーク・ライフです。住まい手の「こうしたい」と「つくる」の間で要望を共有し一緒に考えます。

新しく断熱改修の計画がはじまります

2019-09-14 02:19:49 | 断熱改修
お住まいの住宅が夏暑く、冬寒いというご相談があり、練馬区の住宅を訪問してきました。

築25年程度の木造2階建て住宅ですが、床下、天井裏、屋根裏等を確認すると断熱材は設置されているものの厚みが薄く、連続的に設置されていない、隙間が多く、気流止めもされていないなど断熱材の効果を発揮するような状態ではありませんでした。もっとも東京などの温暖地では、築25年程度の住宅はこのような状況がほとんどなので(場合によっては最近建てられている住宅も同様のこともあります)確認する前から有る程度予想はできてしまいます。

一方、耐震については古くから対処してきたこともあり、その時代なりですが、それなりにきちんとつくられています。


床下の様子
床下の空気が壁の中に入っていく隙間が確認できます
床裏の断熱材も薄く、隙間があり、ものによっては落ちてしまっています。


1階天井裏の様子
外壁の断熱材が見えますが、柱の間に押しこんであるだけで熱が逃げないようにはなっていません。
隙間風もふせぐようになっていません。


屋根裏の様子
断熱材が布団のように置いてあるだけで、隙間だらけです。
また夏の暑い空気が抜けるようになっていないので、夏の暑さが部屋につたわってきます。


対処方法は断熱改修という、断熱材を連続的に効果を発揮するように設置する方法になるのですが、既存の住宅に対して断熱材を連続的に、効果を発揮するように設置するのは結構大変です。
室内側から壁をはがして断熱材を充填するだけでは断熱材を連続的に設置する事ができず、隙間風を防ぐこともできません。
かといって、一番熱の逃げやすい窓だけを取替えると、室内の今まで発生しなかった場所に結露が発生し、場合によってカビが生え、住んでいる方がぜんそくになってしまうなどのクレームにつながる可能性もあります。

例えばこんな事例があります。


鉄筋コンクリート住宅の窓をアルミサッシシングルガラスサッシから樹脂アルミペアガラスサッシに改修したところ、納戸の隅で結露しカビが発生しました。

窓を改修するだけでは室内の水蒸気量は改修の前後で変わらないため、今までは窓で結露し除湿されていた分が行き場を失いました。その水蒸気が、もともと冷えていたにも関わらず、かろうじて結露を免れていた納戸の片隅で結露するようになり、カビを発生させたのです。


同じ住宅で階段室の隅にカビが発生した事例

断熱改修で大事なことは、弱点をつくらないように一度に、連続的に断熱材でくるむこと。
そのようにお伝えしたところご理解いただき、断熱改修の計画をすすめることになりました。

次回は概略の断熱改修の計画を立て、工務店さんと一緒に現地調査をした上で、概算見積もりを作成します。
今回担当してもらうのは、町田でも耐震断熱改修工事の担当をすることになるテクトハウジングのS棟梁。
S棟梁は町田での断熱耐震改修のために、北海道に行き現地の断熱改修技術を見学までしてきた大工さんです。

町田の断熱耐震改修は、建主様が今後30年間安心して住み続けられるようにする改修を希望され、本格的な断熱耐震改修をすることになった現場です。2020年から日本でも住宅を新築する際に、設計者から建築主に省エネ性能に関する説明が義務化されますが、既存住宅の断熱化についての義務はなく断熱改修の実例は乏しいのが実情です。そこで私とS棟梁で国内で豊富な改修実績を持つ北海道に研修の場を求めたのです。

S棟梁は、北海道の断熱改修技術に感銘を受けると同時に、現地の建設会社の監督さんや大工さんに現場を快く見せてもらい、コツを教えていただいたり、質問にも懇切丁寧に答えていただいたりという経験をして、断熱改修に対する熱意を深め、同時に技術を隠さずに伝えていくことの大事さを感じたようでした。

そのようなS棟梁はじめ、町田市には若くて熱意があり、技術的にも高いものを持っている大工棟梁が沢山います。その仲間達と共に、沢山ある断熱性の低い住宅を、快適に安全に住めるようにすることが私達専門家の役割ととらえています。今回のように住宅の問題点をしっかりと認識され、ニーズとして私達にぶつけてくださったことで、それを活かす機会をいただきました。満足いただける結果になるよう一所懸命にとりくみたいと思います。