さるすべり

今年はさるすべりがよく咲いているな、とぼんやり思っていたのは、私のお散歩ルートが変わったせいで、どうやら今の職場のご近所さんの庭にはさるすべりがたくさん植えられているようです。
白やら濃いピンクやら赤やらのさるすべりたちを眺めては、いよいよ夏だとうきうきしていたのが嘘みたいに思われるのは、きっと今年も夏をないがしろにしてしまったせいだなぁと軽く反省して、そして深い寂しさに駆られています。
そんなさるすべりの花も道路をピンクに染めるように散っていき、果たしてまた咲いてくれるのかどうか怪しい気配を漂わせてきて、そろそろ秋がやってくるのでしょうか。

子どもの頃、さるすべりの枝はお猿もつるつる滑って登ることが出来ないから「猿滑」って言うんだと教わったものだけど、「百日紅」という漢字を知り、夏を咲き続ける花だということを知る今は、さるすべりの花を素敵に愛しく感じてしまいます。
ところで「百日紅」の文字を見るとどうしても杉浦日向子さんの『百日紅』を思い出さない訳にはいかなくて、今年の夏もまた『百日紅』を読みました。何度読んでも粋で面白くて心がざわざわ言ってしまうのは、『百日紅』が傑作に違いないからですね。
さて、杉浦日向子さんといえばもうひとつの百、『百物語』も読みたくなって本屋へ行きましたが残念、見つかりませんでした。
まだもう少し夏の香りがするうちに、『百物語』が見つかるといいけれど。

明日もまた、雨降りのようです。
雨に打たれて百日紅の花は、咲くことを忘れてしまうでしょう。
つるつるとお猿も滑る幹ばかりが、つやつやと秋の陽射しに映えることでしょう。

明日は鎌倉音楽祭。
この夏最後の音楽イベントになりそうです。