Daily Bubble

映画や歌舞伎、音楽などのアブクを残すアクアの日記。のんびりモードで更新中。

アイデン&ティティ

2008-01-25 22:06:36 | cinema
去年の年末、『イカ天2007復活祭』を興奮しながら見ていた人は相当多いはず。懐かしかったですねぇ。
放送当時高校生だった私も、もちろん夢中で見ていた一人です。
フライング・キッズ、スイマーズ、オーラ、宮尾ススムと日本の社長、ビギン、人間椅子、たま、マルコシアス・バンプ…。
今にして思えばあのバンドフィーバーは一体何だったのかよく分からないのですが、日本の若者はみんなバンドに憧れ、自分もバンドが出来ると信じ、素人がほんとうにデビューしてしまうことが夢ではなかった時代でした。田舎女子だった私の目にも「イカ天」に出るバンドの男の子たちはどんなへんてこな格好をしてても、めちゃめちゃな演奏をしていてもかっこよく見えたもの。
その「イカ天」にも登場したバンド「大島渚」を率いたみうらじゅんさんの漫画『アイデン&ティティ』を田口トモロヲさんが初監督した映画『アイデン&ティティ』をDVDで見ました。
以前、原作を読んで()ガツーンと殴られたような感動を覚えたことがあるけれど、その原作のイメージを損なわないどころかむしろよりリアルにあの時代の空気を描いた映画で、面白かった!

映画の冒頭に、みうらさんが出てくるのね。「たま」や「宮尾ススムと日本の社長」のメンバーや大槻ケンヂも。
放送当時の若者も今やいい大人になっていて、でもあの当時の雰囲気を備えていてその懐かしさがちょっと酸っぱくて嬉しかったなぁ。まったくの余談だけど、なぜか私は「宮尾ススムと日本の社長」と「たま」が大好きで、特にたまの「らんちう」がたまらなく好きでした。すごく不思議な哀切に満ちた曲だったと思う。「宮尾ススム…」の「二枚でどうだ!」もまたヘタウマというか力の抜けきったファンクでステキでしたよ。

さてさて、先に原作を読んでいたのでどうしても比較するようになってしまうけど、原作では「俺はロックだぜ!ロックとは生きることだぜ!!」というみうらさんの魂の叫びのような凝縮されたメッセージが響いてきたけれど、映画はそのメッセージを失うことなくさらにディティールまで丁寧に描かれていて、田口トモロヲ監督の映画と音楽(ロック)をこよなく愛する気持ちそのものの映画のように感じました。
主人公はロックバンド「SPEED WAY」のギタリスト中島。銀杏BOYSの峯田くんが演じているんだけど、まるで演技をしていないかのような存在感がすごく中島の雰囲気でよかった。彼女を大事に思いながらも女の子たちに手を出しちゃう弱さとか、なによりもロックを愛しているのにそれを見失いそうになってしまう危うさとか、中島そのものでしたね。夏フェスでパンツ脱いじゃう危うさとどこかかぶるのね。
その中島の彼女に麻生久美子。「時効警察」のイメージしかなかったけど、美人で頭が良くてクールで中島のいちばんの理解者っていう原作のイメージを壊さないこのキャスティングは凄い。
原作ではあまり描かれていないほかのバンドメンバーも中村獅童、大森南朋、マギーと個性と魅力に溢れる顔ぶれで、映画により深いリアリティを与えているんですね。

ロックに生きることに悩む中島の前には、ボブ・ディランが現れるのね。でも、ディランは中島にしか見えない。あ、原作ではディランは自らディランを名乗るけど、映画ではディランであることを否定していました。
ハーモニカを吹いて中島にロックを語るディランは、もちろん現実ではあり得ないんだけど、彼の言葉や存在がすーっと心に響くんですね。
ディランの言葉と彼女の存在が、中島を支える。頼りなげでちっぽけな中島だけど、ディランと彼女という大切な存在があるから悩んだり転んだりしながらも前を向いて生きているのね。

散文的な原作の世界観をそのままに、分かりやすいストーリーを展開する脚本は宮藤官九郎。

ロックとは、ありのままの自分を生きること
じゃ、ありのままの自分ってなんだ

私には、ロックに生きることは出来ないのかもしれないなぁ。だから、ロックな人に憧れるのかもしれない。

劇中歌「アイデン&ティティ」がコチラ↓で聴けますよ。映像もGOOD!
YouTube-アイデン&ティティ 君がロック!!完全版


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