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「死」について考えることは難しいことだけど、その瞬間は誰にだって公平に降りかかる。大事なことは、どういうふうに自分の死を受け入れるか。また、過去を振り返って逡巡するんじゃなくて、明日来るかもしれない死のために今をどう生きていくか。
「死」を扱った映画の場合、重苦しくて辛い気持ちになってしまいがちだけど、ドゥニ・アルカン監督の『みなさん、さようなら』は、年老いたかつての知的不良たちの姿を明るくスケベにユーモアたっぷりに描いた作品で、さわやかで幸せな死の形を見せてくれた。
主人公は、カナダに住む末期癌(多分)の大学教授・レミ。いい年をしたおじさんだけど、女好きが過ぎて家族からは見放されているのね。で、彼の最期を看取るために妻やロンドンで暮らす腕利きの証券ディーラーの息子・セバスチャンがやって来る。
セバスチャンは仕事で成功しているお金持ちなのね。仲違いしている父・レミのために大枚をはたいて父の最期を飾り立ててあげる。この節操の無いお金の使い方が気持ちいいのね。病院の理事長やユニオンを買収して個室を与える、かつての友人達を呼び寄せる、痛みを和らげるためにジャンキーの女の子(レミの女友達の娘)を雇ってヘロインを使う。
そのうちにレミは死を受け入れ、父と息子はだんだんと打ち解けていくんだけど、お互いを知りゆっくりと自然に親子の関係を築いていくのがよかった。
セバスチャンが呼び寄せる父のお友達たちがまた魅力的で、ラストの別荘でのおしゃべりは最高に面白い。レミの元カノたち、イタリアに住むゲイとその彼氏、若い妻を持つ大学教授。
アルカン監督の1986年の作品『アメリカ帝国の滅亡』のその後という設定らしく、知的階級の不良中年たちを描いた映画の雰囲気を伝えているようだけど、こちらの映画を見ていない私は、倉橋由美子さんの小説『シュンポシオン』を思い出しました。
『シュンポシオン』は、地球最期の日を過ごす桂子さんたちを知的に猥雑に描いた大好きな小説だけど、『みなさん、さようなら』も死を間近に迎えながらも家族や心からの友人達と穏やかな時間を過ごし、ゆっくりと死に向き合う。息子に大切なメッセージを残し、自らの時間に終止符を打つ。
レミのような最期を迎えることは出来難いけれど、すごく素敵な最期よね。
慌てず、騒がず、枯れず、いつものとおりに死んでいく。
レミにヘロインを打つジャンキーのナタリーとレミの関係も良くて、ナタリーに生と死を解くレミと、クールに暗い目で真実を語るナタリーという二人が重なって見えた。自分は何も残すことができなかったと嘆くレミと、クスリを絶てずに生活を垂れ流しているナタリー。クスリとセバスチャン(ナタリーとは子供の頃の知り合いで、ナタリーはセバスチャンに淡い恋心を抱いていたように思わせる)に決別しようとするナタリーの切なく苦しい胸中が、感情を抑えたナタリーの表情からじわじわと伝わってくる。
私が死ぬとき、レミのように幸せな最期を迎えることは難しいかもしれない。
それならばせめて、現在を存分に楽しみ、後悔する隙もないくらいに明るく死んでいけたらいい。
「死」を扱った映画の場合、重苦しくて辛い気持ちになってしまいがちだけど、ドゥニ・アルカン監督の『みなさん、さようなら』は、年老いたかつての知的不良たちの姿を明るくスケベにユーモアたっぷりに描いた作品で、さわやかで幸せな死の形を見せてくれた。
主人公は、カナダに住む末期癌(多分)の大学教授・レミ。いい年をしたおじさんだけど、女好きが過ぎて家族からは見放されているのね。で、彼の最期を看取るために妻やロンドンで暮らす腕利きの証券ディーラーの息子・セバスチャンがやって来る。
セバスチャンは仕事で成功しているお金持ちなのね。仲違いしている父・レミのために大枚をはたいて父の最期を飾り立ててあげる。この節操の無いお金の使い方が気持ちいいのね。病院の理事長やユニオンを買収して個室を与える、かつての友人達を呼び寄せる、痛みを和らげるためにジャンキーの女の子(レミの女友達の娘)を雇ってヘロインを使う。
そのうちにレミは死を受け入れ、父と息子はだんだんと打ち解けていくんだけど、お互いを知りゆっくりと自然に親子の関係を築いていくのがよかった。
セバスチャンが呼び寄せる父のお友達たちがまた魅力的で、ラストの別荘でのおしゃべりは最高に面白い。レミの元カノたち、イタリアに住むゲイとその彼氏、若い妻を持つ大学教授。
アルカン監督の1986年の作品『アメリカ帝国の滅亡』のその後という設定らしく、知的階級の不良中年たちを描いた映画の雰囲気を伝えているようだけど、こちらの映画を見ていない私は、倉橋由美子さんの小説『シュンポシオン』を思い出しました。
『シュンポシオン』は、地球最期の日を過ごす桂子さんたちを知的に猥雑に描いた大好きな小説だけど、『みなさん、さようなら』も死を間近に迎えながらも家族や心からの友人達と穏やかな時間を過ごし、ゆっくりと死に向き合う。息子に大切なメッセージを残し、自らの時間に終止符を打つ。
レミのような最期を迎えることは出来難いけれど、すごく素敵な最期よね。
慌てず、騒がず、枯れず、いつものとおりに死んでいく。
レミにヘロインを打つジャンキーのナタリーとレミの関係も良くて、ナタリーに生と死を解くレミと、クールに暗い目で真実を語るナタリーという二人が重なって見えた。自分は何も残すことができなかったと嘆くレミと、クスリを絶てずに生活を垂れ流しているナタリー。クスリとセバスチャン(ナタリーとは子供の頃の知り合いで、ナタリーはセバスチャンに淡い恋心を抱いていたように思わせる)に決別しようとするナタリーの切なく苦しい胸中が、感情を抑えたナタリーの表情からじわじわと伝わってくる。
私が死ぬとき、レミのように幸せな最期を迎えることは難しいかもしれない。
それならばせめて、現在を存分に楽しみ、後悔する隙もないくらいに明るく死んでいけたらいい。
私の早とちりとわかって、これでまだまだアクアさんの歌舞伎レポを楽しませていただけますね!
この映画の原題は「蛮族の侵入」だそうです。「みなさん、さようなら」というタイトルとこのポスター、日本人ならではの感覚なのかなと思っています(もちろん、肯定の意で)。
ブログの更新は控えめにしていますが、これからも続けていくつもりですよ!ぽちぽち覗いてやってくださいね。