私が小学生だった頃、まだケーキは珍しく、月に一度食べられるかどうかという贅沢なお菓子でした。
たまに買って来てくれるのは、隣町の商店街にあったパン屋さん兼ケーキ屋さんの三角形のショートケーキ。私と妹は決まってイチゴショートかメロンショート。父はチーズケーキで母はモンブランでした。
駅前には不二家もあったのですが、我が家では商店街のケーキ屋さんのケーキが定番で、幼い私はそのケーキ屋さんがいちばん美味しいと信じていました。
いつも買っていたケーキ屋さんが無くなって、別のケーキ屋さんで買うようになっても、ショートケーキとチーズケーキとモンブランという組み合わせは変わりませんでした。
それから随分時が経ち、大人になった私が買ったケーキも父にはチーズケーキ、母にはモンブラン。
商店街にケーキ屋さんは無くなって、郊外に出来た小さくてつやつや光るケーキがたくさん並ぶオシャレなお店で買ったケーキは、子供の頃に買っていたふわふわしたのじゃなくてチーズの味の濃いハードなチーズケーキと、栗がまるごと入っているお酒が効いたモンブランでした。
うきうきした気分で家族にケーキを披露したら、母から意外なことを言われました。
「お母さんね、ほんとはモンブランは好きじゃないの」
私が知る限り、母が食べていたケーキのほとんとはモンブランだったはず。
だって、モンブランばかり食べていたじゃない?と問うと、
「モンブランは安かったから、買っていたんだよ」
私の家は私が思っていた以上に貧しかったんですが、私がそれを知らずに過ごした蔭には、母の倹しさがあったんだとそのときに初めて気付きました。
だから、それ以来私はいろんな種類のケーキを買うようにしました。宝石箱のように光る美しいケーキたちに、我慢ばかりしていた母を慰めてもらおうと思ったんです。
たまにモンブランを食べるようになった母は、「最近のモンブランは美味しいねぇ」などと笑っています。
昨日は母の誕生日でした。フルーツがたくさん入ったケーキを前に母は、珍しくはしゃいでいました。
へそ曲がりで照れ屋な母と私は仲良し親子とは言えませんが、ケーキを挟んで「美味しい」を共有し、いつもよりは大分仲良くなれたような気がします。
サンキュー、ママ。不肖の娘だけど、これからもよろしくね。
たまに買って来てくれるのは、隣町の商店街にあったパン屋さん兼ケーキ屋さんの三角形のショートケーキ。私と妹は決まってイチゴショートかメロンショート。父はチーズケーキで母はモンブランでした。
駅前には不二家もあったのですが、我が家では商店街のケーキ屋さんのケーキが定番で、幼い私はそのケーキ屋さんがいちばん美味しいと信じていました。
いつも買っていたケーキ屋さんが無くなって、別のケーキ屋さんで買うようになっても、ショートケーキとチーズケーキとモンブランという組み合わせは変わりませんでした。
それから随分時が経ち、大人になった私が買ったケーキも父にはチーズケーキ、母にはモンブラン。
商店街にケーキ屋さんは無くなって、郊外に出来た小さくてつやつや光るケーキがたくさん並ぶオシャレなお店で買ったケーキは、子供の頃に買っていたふわふわしたのじゃなくてチーズの味の濃いハードなチーズケーキと、栗がまるごと入っているお酒が効いたモンブランでした。
うきうきした気分で家族にケーキを披露したら、母から意外なことを言われました。
「お母さんね、ほんとはモンブランは好きじゃないの」
私が知る限り、母が食べていたケーキのほとんとはモンブランだったはず。
だって、モンブランばかり食べていたじゃない?と問うと、
「モンブランは安かったから、買っていたんだよ」
私の家は私が思っていた以上に貧しかったんですが、私がそれを知らずに過ごした蔭には、母の倹しさがあったんだとそのときに初めて気付きました。
だから、それ以来私はいろんな種類のケーキを買うようにしました。宝石箱のように光る美しいケーキたちに、我慢ばかりしていた母を慰めてもらおうと思ったんです。
たまにモンブランを食べるようになった母は、「最近のモンブランは美味しいねぇ」などと笑っています。
昨日は母の誕生日でした。フルーツがたくさん入ったケーキを前に母は、珍しくはしゃいでいました。
へそ曲がりで照れ屋な母と私は仲良し親子とは言えませんが、ケーキを挟んで「美味しい」を共有し、いつもよりは大分仲良くなれたような気がします。
サンキュー、ママ。不肖の娘だけど、これからもよろしくね。