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病と医術の歴史 30: 中国 5

2015年02月01日 | 連載中 病と医術の歴史

< 1. 中国、三国時代の軍人 >

今回は、薬剤と養生、錬丹について見ます。

薬 剤
「神農本草経」は作者不詳で、後漢から三国時代(2~3世紀)に成立した最古の薬物学書です。
この書は戦国時代(紀元前4世紀)からの用薬の経験と薬物学の知識を系統的にまとめている。




< 2. 神農本草経 >



< 3. 麻黄 >


薬物は365種あり、植物252、動物67、鉱物46に分類され、大多数は効能が確かである。
例えば麻黄は下痢止め、海藻は瘤の治療、甘草は解毒、大黄は通便など。
薬物を三種類に分け、無毒だが効果が弱く補養用120種、有害・無毒があるが補養と医療作用のある120種、残りが有毒で寒熱を除き、胃腸内の腫瘤を破るなどの医療作用があるとした。
また薬物の産地、採集時期、加工製法、適した剤型(丸、散、酒漬など)、服用時期、服用方法にも触れられている。

魏・晋代以降(紀元3世紀から)の薬物学の書は、この「神農本草経」を基礎にしている。

植物性薬剤では、ペストにダイフウノキ(高木の種)の油、マラリアにジョウサンアジサイ、精力回復に朝鮮人参、回虫にゴシュユ(低木)が良く知られている。
薬物にはエジプトやインド、東南アジア産のものも見られる。

養 生
養生は強壮・疾病予防・老化防止の大切な手段であった。
多くの思想家や医学者が養生法を説き、「静を以って生を養う」「動を以って生を養う」の二つの観点があった。
多くの諸子百家は自然に従い、飲食の摂生や精神の調和を主張した。
華陀は気孔・導引から五つの動物姿態の模倣体操を編み出した。
「内経」は「未だ病まざるを治す」、すなわち疾病予防が養生上重要であるとした。




< 4. 錬丹術? >



< 5.丹砂 > 

錬丹と不老不死
一方、「神農本草経」には神仙思想(道教)が根強く、錬丹術の初期の様子が見える。
この書には、すでに水銀が疥癬の治療、虱の殺虫剤に効能ありと書かれていた。
錬丹とは、硫化水銀(丹砂)、金、鉛などの金属を化学変化させ調合し不老不死の薬を作ることです。
4世紀の道教の書「抱朴子」は錬丹術の初期の重要な書で、化学的知識も豊富になっていた。
中国では、硫化水銀の赤い鉱石(図5)から水銀への著しい変化、また金の非腐食性に生命の真髄を仮託した。
古代中国では、人々は死後よりも現世に生きることに重きを置いていた。
それが秦の始皇帝の徐福派遣(仙人探し)に始まりに、最盛期、唐の王(7~9世紀)は錬丹家が作る不老不死の薬を飲用し、多くは中毒死した。
やがて道教は不老不死を薬でなく、人体内部の気で養う方向に向かっていった。
一方、錬丹術による豊富な知見は、化学と冶金学を発展させ、9世紀には世界最初の火薬が中国で作られた。



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