赤穂事件 言い訳

　　　　　　　赤穂事件　言い訳



将軍綱吉
「母君が申しておる事は嘘じゃぞ」
「儂は、鶴を溺愛しておる」
「其方の御簾中となった鶴を
悲しませる訳があるまいに」

徳川綱教
「綱教」
「上様を信じております故」
「左様な嘘を信じる事は御座いません」

将軍綱吉
「鶴は、幸せか？」
「悲しい思いをしておるのではないのか」

徳川綱教
「決して、悲しませる事は御座いません」

将軍綱吉
「鶴は、懐妊したが流産じゃった」
「其方の責任じゃぞ」

徳川綱教
「申し訳御座いません」

将軍綱吉
「やはり、悲しませておるぞ」
「鶴に謝ったのか！」

徳川綱教
「こればかりは、何ともならぬ事　故に」
「謝ってはおりませぬ」

将軍綱吉
「鶴に謝り、其方は謹慎しておれ！」

徳川綱教
「畏れながら・・・・」
「其の事は、もう五年も前の事に御座います」
「左様な昔の事を持ち出せば
鶴姫様は、更にお悲しみに為られるかと・・・」

将軍綱吉
「五年も経ったのか」
「五年も経って、子が出来ぬとは情けない」
「もう、諦めては如何じゃ」

徳川綱教
「・・・・・・・」

将軍綱吉
「何故、黙っておる」

徳川綱教
「畏れながら、
諦めるとは、如何なる事に御座いますか？」

将軍綱吉
「其方が、身を引けばよい」
「もともと、儂は、
其方に鶴姫をやりたくなかった」
「母君が、其方が適任だと申されたから
泣く泣く承知したのじゃぞ」
「それを、五年も前の事じゃと！」
「戯けが！」

徳川綱教
「申し訳御座いません」
「綱教、此れから精進を致し」
「上様の希望に叶いますように
努力致します」
「何卒、お許し下さいませ」

将軍綱吉
「もう諦めよ」

徳川綱教
「・・・・・」
「上様の御命令とあらば
致し方御座いません」
「綱教、断腸の思いを持ちまして
鶴姫様を手放す事に致します」

将軍綱吉
「そうか」
「よく申した」
「是より鶴姫は、ここにおる徳川吉里の正妻となる」

徳川綱教
「・・・・・・」

将軍綱吉
「何故黙っておる」

徳川綱教
「それは、如何な事かと・・」
「将来、上様の跡取りとなるお方が
柳沢吉里様で御座いますか？」

将軍綱吉
「何じゃ不服か！」

徳川綱教
「いいえ」
「不服など御座いません」
「上様の御命令に従う所存に御座います」

将軍綱吉
「おお、不服はないな」
「これより、徳川吉里は
徳川吉家となのるぞ」
「なぁ」
「吉里」

柳沢吉里
「はい」
「お父様」