アプリコット プリンセス

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とてもチャーミングなアプリコット姫がおりました

赤穂事件 責任転嫁

2023-02-10 10:09:27 | 漫画

          赤穂事件 責任転嫁



阿部 正武(老中)
「上様の沙汰に従うのが宜しいかと思うぞ」

土屋 政直(老中首座)
「分かっておるが
上様は、黒書院にもお出ましに為りませぬ故
沙汰を待つにも限界が御座る」
「それ故に、老中会議で決定したように
我らは、赤穂の再興を認める事に致す」

阿部 正武
「上様は浅野赤穂を許さぬぞ!」
「老中会議で決めた事が
上様の逆鱗に触れたら如何致す!」

土屋 政直
「我らが揃って
上様からの沙汰を受ければよい」

阿部 正武
「何で、浅野を庇う?」

土屋 政直
「庇ってはおらぬ
喧嘩両成敗じゃ」
「これ以上に、浅野赤穂を追い詰めては為らぬ」
「老中そ揃い踏みで決定した事じゃぞ」

阿部 正武
「では、儂は赤穂事件の担当から外れたい」

土屋 政直
「では、儂が担当するが
その場合には
其方が、首座となって欲しい」

阿部 正武
「んんゥ」
「いやいや」
「首座は為らぬ」
「あのな」
「儂は反対なんじゃぞ」
「連座は御免被る」

土屋 政直
「この状況で、上様の沙汰があるとは思えん」
「左様に心配為さらずともよいのではあるまいか」

阿部 正武
「んんゥ」
「では、上様が承知為されれば
浅野赤穂を許すとして
上様の了解無き場合は如何致す!」

土屋 政直
「沙汰は、大老格にお任せ致す」

阿部 正武
「大老格が浅野赤穂の再興を許さぬと申せば如何する?」

土屋 政直
「その場合には、大老格の責任において、
浅野赤穂の再興は認められなくなる」

阿部 正武
「左様か・・」
「承知した」
「儂は、赤穂事件の担当を引き続き申し受ける」
「担当を外れると申したが、撤回致す」

土屋 政直
「左様か」
「では、引き続きお願い致す」

阿部 正武
「あぁ・・あのなァ」
「誤解しては為らぬぞ」
「儂は、責任転嫁しておる訳ではないぞ」
「上様の上意を仰ぎたいとの思いじゃ」
「上様の逆鱗に触れてはならぬ」
「そうであろう・・」

土屋 政直
「・・・・・」
「なのな」
「大老格は浅野赤穂を許さぬと思うぞ」
「そうであれば、
我ら老中が団結して
浅野赤穂を救わねば為るまいに」
「我らが見捨てれば、赤穂浪士は暴走して
手に負えなくなりますぞ」

阿部 正武
「そうなれば、纏めて始末すればよい」
「とばっちりの巻き添えは御免被る」

土屋 政直
「んんゥ」
「其方の協力が必用なのじゃぞ」
「浅野赤穂を再興させる事ができれば
吉良殿を助ける事も出来る」
「これは、吉良殿を助ける事でもあり
我ら幕府の為でもある」
「ひいては、上様の為でもあるのじゃぞ」

阿部 正武
「甘すぎる」
「考えが甘すぎるぞ」
「そもそも、其方は
大坂城代、京都所司代を経て老中に就任した」
「我らとは、経歴が違い過ぎる故に
考えが甘くなっておるのじゃ」
「江戸詰めの苦労を知らぬ者 故」
「左様な甘い事を申しておるのじゃ」

土屋 政直
「京の都にも気苦労は御座るが・・・」
「確かに・・・江戸詰めは大変じゃ・・
「実はな、儂に老中へのお呼びが掛かり
有頂天で江戸に下向したおりに
吉良殿より熱き洗礼を受けたのじゃぞ」
「儂は、吉良殿の犬に二度も襲われた」
「おかげで、
身代わりの仲間が江戸から追放処分じゃ」

阿部 正武
「では、尚更じゃ」
「赤穂浪士を煽って
吉良を討たせればよい」
「そうなれば、赤穂浪士は切腹」
「この事件も幕引きとなる」

土屋 政直
「いや」
「幕引きにはならぬ」
「今や江戸庶民だけではない
諸国庶民が赤穂事件を知ってしまった」
「もし、吉良を討った赤穂浪士を切腹させれば
幕府の非情を憂う者が不満を持つのじゃぞ」
「庶民は、赤穂浪士を忠義の者として持ち上げ
逆に、吉良殿は完全に悪役を演じさせられておる」

阿部 正武
「ならば、尚更じゃ」
「この事件は、早く幕引きにせねば為らぬのじゃ」
「面倒は御免被る」
「吉良を仇にすればよい」

土屋 政直
「それは、我らが決める事では御座らん」
「そもそも、浅野赤穂に敵討ちの許可は出してはおらん」
「仇討ちを許可するつもりかな?」

阿部 正武
「許可すれば、赤穂浪士が喜ぶだけのこと
我らには、何も良い事はない」
「そもそも、吉良殿を見捨てれば
上様の逆鱗に触れますぞ!」

土屋 政直
「心配せんでも、上様のお出ましは御座らぬ」
「大老格にも上様の後ろ盾はない」
「当然、上様からお叱りを受ける事など有り得んぞ」
「よいか、浅野赤穂の再興を求めるのじゃ!」
「これは、老中会議で決定した事じゃぞ」

阿部 正武
「・・・・・」
「責任は大老格にあるのじゃな」

土屋 政直
「浅野赤穂の再興が拒否されれば
その責任は大老格にある」

阿部 正武
「んんんゥ」
「致し方ない」

土屋 政直
「んんゥ」
「では、決定じゃな」