夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

ヘーゲル『哲学入門』第二章 義務と道徳 第六十七節[人間愛について]

2022年11月14日 | ヘーゲル『哲学入門』

 

ヘーゲル『哲学入門』第二章 義務と道徳 第六十七節[人間愛について]

§67

Die Pflicht der allgemeinen Menschenliebe(※1) erstreckt sich näher auf diejenigen, mit welchen wir im Verhältnis der Bekannt­schaft und Freundschaft stehen. Die ursprüngliche Einheit   der Menschen (※2)muss freiwillig zu solchen näheren Verbindungen ge­macht worden sein, durch welche bestimmtere Pflichten ent­stehen.

{Freundschaft  beruht auf Gleichheit der Charaktere, besonders des Interesses, ein gemeinsames Werk mit einander zu tun, nicht auf dem Vergnügen an der Person des Andern als solcher. Man muss seinen Freunden so wenig als möglich beschwerlich fallen. Von Freunden keine Dienstleistungen zu fordern, ist am Delikatesten. Man muss nicht sich die Sache ersparen, um sie Andern aufzulegen.)

第六十七節[人間愛について]

普遍的な人間愛  の義務は、知人や友情の関係にある人々に、より身近に向けられる。人類の根源的な一体性は、自由な意志によってそうした身近な結びつきへと造り上げられなければならない。そうした結びつきから、さまざまな義務が生まれてくる。

友情 は、人格の平等にもとづいており、とくに共通の仕事を一緒に行うことへの利害にもとづくものであり、相手の人格そのものに対する満足にもとづくのではない。人は友人たちにはできうるかぎり迷惑をかけないようにしなければならない。友人たちに奉仕を求めることがないのは、何より結構なことである。人は自分が楽をするために、他人に仕事を押しつけてはならない。)

 

※1
der allgemeinen Menschenliebe  普遍的な人間愛
こうした一節を見てもわかるように、ヘーゲル哲学がキリスト教を背景にしていることは疑いのないことである。この哲学はドイツ民族の宗教と倫理を母胎として、その結晶として生まれた。

※2
Die ursprüngliche Einheit der Menschen 人類の根源的な一体性、一者性。
人間の一者性、一体性の認識は、人間の抽象的な思考能力から生まれてくる。万人同一な一般人として「私」を把握するのは思考である。個人を普遍の形式によって意識する。

その根源的(ursprüngliche)な認識は、人間の「概念」として捉えられ、そこから、普遍的な「人類」意識が生じる。

普遍の次元は思想の段階であるが、この抽象的な「人類」という認識は、マルクス主義の「労働者」などと同じく、往々にして「祖国」や「民族」や「国家」などの個別具体性と対立的に、ときには敵対的に二律背反的に捉えられる。そのことによってもたらされる災いは深刻である。

 

 

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ヘーゲル『哲学入門』第二章... | トップ | ヘーゲル『哲学入門』第二章... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ヘーゲル『哲学入門』」カテゴリの最新記事