夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

§ 286a〔君主権を客観的に保証するもの〕

2018年10月17日 | 法の哲学


§ 286a〔君主権を客観的に保証するもの〕

Die objektive  Garantie der fürstlichen Gewalt, der rechtlichen Sukzession nach der Erblichkeit des Thrones usf. liegt darin, daß, wie diese Sphäre ihre von den anderen durch die Vernunft bestimmten Momenten ausgeschiedene Wirklichkeit hat, ebenso die anderen für sich die eigentümlichen Rechte und Pflichten ihrer Bestimmung haben; jedes Glied, indem es sich für sich erhält, erhält im vernünftigen Organismus eben damit die anderen in ihrer Eigentümlichkeit.

 

王位の世襲についての合法的な継承など、君主権の客観的な保証は、この(君主権の)領域が、理性を通して規定された他の要素(行政権や司法権、立法権など)とは別個の現実性をもつように、同様に、他の要素も自己のためにその使命としての固有の権利と義務を持っているということのうちにある。
理性的な有機体においては、それぞれの肢体は、それ自身を自己のために保持するかぎりにおいて、まさにそのことによってその他の肢体もそれ独自の固有性を保持している。


ヘーゲルの国家論の特色は、その他の凡庸な憲法学者や国家論者と異なって、国家を一個の有機的な組織として捉える論理をもっていることである。有機体としての人体において、胃や心臓などの臓器は、腕や足などの肢体とは異なった独自の機能を持っているが、また同時に胃や心臓がなくなれば腕や足はその機能を果たすこともできない。それぞれは相互依存の不可分の関係にある。君主権も行政権や司法権と不可分な関係にありながら、同時にそれ独自の使命をもっている。ヘーゲルは以下の注釈において、往々にしてほとんど正しく十分に理解されることのない君主権の意義を明らかにしてゆく。

 

 

 

 
 
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« § 285〔君主権の普遍性、君主... | トップ | §286 b 〔理性的な国家体制と... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

法の哲学」カテゴリの最新記事