泉弘志「生産性計測とキャピタルサービス(第8章)」『投下労働量計算と基本統計指標-新しい経済統計学の探求』大月書店, 2014年
全要素生産性の計測で, 資本投入量は資本サービス(キャピタルサービス)が使われる。『OECD生産性測定マニュアル』(以下, OECDマニュアルと略)は, これを説明した代表的テキストである。筆者はこの『OECDマニュアル』のキャピタルサービス概念を検討し, 自らの投下労働による生産性の計測を推奨している。理由として, 以下の諸点を掲げている。
・投下労働による生産性の計測は, 『OECDマニュアル』の生産性が固定資本, 労働力に体化されていない部分だけを計測しているのに対し, 生産の全過程に関する生産性を計測できる。
・『OECDマニュアル』の測定法は, 生産者の費用最少といった特定の経済制度のもとで機能するカテゴリーを使ったのに対し, 投下労働による生産性の計測は経済制度の異なる経済間の生産性比較に適した歴史貫通的カテゴリーを使った方法である。
・投下労働による生産性の計測は, より優れた生産方法の判断をする際に, 常識にかなった方法である。産業連関表と産業連関分析の方法を活かすことができる。
筆者は以上の諸点を結論部分で示しているが, そこに至るいくつかの重要なことを述べている。一つは, 『OECDマニュアル』の測定法は, 固定資本に体化された技術水準の変化が生産性の変化に反映されないことである。筆者は, 「体化された技術変化と体化されない技術変化の両方を含めた技術水準の変化」の計測の重要性を強調している。『OECDマニュアル』の測定法は, 新古典派経済理論に依拠し, 理論との整合性を重視したので, 結果として「体化されない技術変化の計測」だけに関心が向けられたようにみえる。しかし, 一般的には, 「体化された技術変化と体化されない技術変化の両方を含めた技術水準の変化」が生産性の実証研究に欠かせない。
そもそもキャピタルサービスは, 生産過程における資産の働きの大きさである。生産過程からこの部分を純粋にとりだすことは困難である。ましてや, 実際の統計で測定するのは難しい。既存の計測結果は, 誤差を多く含んだものである。
また, 『OECDマニュアル』の測定法は, キャピタルサービスを固定資本ストック量に比例するという仮定で推計している。しかし, この仮定は現実的でない。筆者はこのことを, 年々の産出量は同じ, 固定資本以外の投入要素も同じ, 固定資本に関しては耐用年数が延びるという技術変化だけがあった場合で, 説明している。この場合, 年々のキャピタルサービスの量は同じである。しかし, それに対応する金額を利子率で資本還元してもとめられる資本ストック金額は増大する。この価額の議論は, 耐用年数が長い固定資本ストックが短い固定資本ストックより物量が大きいことの反映である。いずれにしても, キャピタルサービスは固定資本ストック量に比例しないことがある。
筆者は, 生産性計測の別の方法を提唱している。『OECDマニュアル』の測定法は, 固定資本と労働を本源的投入要素と考え, 産出量と投入量としてのキャピタルサービスおよび労働サービスとの比率で生産性を定義するが, 筆者は生産性を産出量とそれを生産する直接・間接に必要な労働量および天然資源との比率で定義し, 固定資本についてはこれを広義の中間生産物・中間投入物とみなす。各産品単位物量を生産するのに直接・間接に必要な労働は, 産業連関表を使って, 次式をたて, tについて解く。
t=t(A+D)+r
ここで, t:産品別単位物量を生産するのに直接・間接に必要な労働量を示す行ベクトル
A:中間投入係数行列
D:固定資本減耗係数行列
r:産品別単位物量当り直接労働量を示す行ベクトル
生産性はこれによって, 全面的に計測し, 分析することが可能になる。
全要素生産性の計測で, 資本投入量は資本サービス(キャピタルサービス)が使われる。『OECD生産性測定マニュアル』(以下, OECDマニュアルと略)は, これを説明した代表的テキストである。筆者はこの『OECDマニュアル』のキャピタルサービス概念を検討し, 自らの投下労働による生産性の計測を推奨している。理由として, 以下の諸点を掲げている。
・投下労働による生産性の計測は, 『OECDマニュアル』の生産性が固定資本, 労働力に体化されていない部分だけを計測しているのに対し, 生産の全過程に関する生産性を計測できる。
・『OECDマニュアル』の測定法は, 生産者の費用最少といった特定の経済制度のもとで機能するカテゴリーを使ったのに対し, 投下労働による生産性の計測は経済制度の異なる経済間の生産性比較に適した歴史貫通的カテゴリーを使った方法である。
・投下労働による生産性の計測は, より優れた生産方法の判断をする際に, 常識にかなった方法である。産業連関表と産業連関分析の方法を活かすことができる。
筆者は以上の諸点を結論部分で示しているが, そこに至るいくつかの重要なことを述べている。一つは, 『OECDマニュアル』の測定法は, 固定資本に体化された技術水準の変化が生産性の変化に反映されないことである。筆者は, 「体化された技術変化と体化されない技術変化の両方を含めた技術水準の変化」の計測の重要性を強調している。『OECDマニュアル』の測定法は, 新古典派経済理論に依拠し, 理論との整合性を重視したので, 結果として「体化されない技術変化の計測」だけに関心が向けられたようにみえる。しかし, 一般的には, 「体化された技術変化と体化されない技術変化の両方を含めた技術水準の変化」が生産性の実証研究に欠かせない。
そもそもキャピタルサービスは, 生産過程における資産の働きの大きさである。生産過程からこの部分を純粋にとりだすことは困難である。ましてや, 実際の統計で測定するのは難しい。既存の計測結果は, 誤差を多く含んだものである。
また, 『OECDマニュアル』の測定法は, キャピタルサービスを固定資本ストック量に比例するという仮定で推計している。しかし, この仮定は現実的でない。筆者はこのことを, 年々の産出量は同じ, 固定資本以外の投入要素も同じ, 固定資本に関しては耐用年数が延びるという技術変化だけがあった場合で, 説明している。この場合, 年々のキャピタルサービスの量は同じである。しかし, それに対応する金額を利子率で資本還元してもとめられる資本ストック金額は増大する。この価額の議論は, 耐用年数が長い固定資本ストックが短い固定資本ストックより物量が大きいことの反映である。いずれにしても, キャピタルサービスは固定資本ストック量に比例しないことがある。
筆者は, 生産性計測の別の方法を提唱している。『OECDマニュアル』の測定法は, 固定資本と労働を本源的投入要素と考え, 産出量と投入量としてのキャピタルサービスおよび労働サービスとの比率で生産性を定義するが, 筆者は生産性を産出量とそれを生産する直接・間接に必要な労働量および天然資源との比率で定義し, 固定資本についてはこれを広義の中間生産物・中間投入物とみなす。各産品単位物量を生産するのに直接・間接に必要な労働は, 産業連関表を使って, 次式をたて, tについて解く。
t=t(A+D)+r
ここで, t:産品別単位物量を生産するのに直接・間接に必要な労働量を示す行ベクトル
A:中間投入係数行列
D:固定資本減耗係数行列
r:産品別単位物量当り直接労働量を示す行ベクトル
生産性はこれによって, 全面的に計測し, 分析することが可能になる。
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