安呑演る落語

音源などを元に、起こした台本を中心に、覚え書きとして、徒然書きます。

氷をひとつ

2006年04月09日 | 小噺
よく夏場になりますと、列車に乗って旅行したりなんかする方が大勢いますが、これはある老夫婦でして長距離列車に乗って旅をしている。奥さんが乗り物酔いのせいか気分が悪くなって氷が食べたいと言い出しまして、
A:「なんだって?氷が食べたい?それは困ったな。こんなところだしな。水じゃいけないのか。どうしても氷が食べたい。そうかい、氷と言われてもなあ」
B:「あの、よろしければ私氷を持っていますが」
A:「え、氷を。そうですか、ありがとうございます。じゃあ一ついただけますか。恐れ入ります。助かりました。あちらの方が氷を持ってきた。さあお食べ。どうだい。おいしい。それはよかった。じゃあ少し休んだらどうだ。え、もう一つほしい?じゃあちょいと待ちなさい。恐れ入りますが、家内がもう一つなめたいと言っておりまして」
B:「そうですか。よろしゅうございます。じゃあ、どうぞ」
A:「どうもありがとうございます。さぁ、もう一つきたよ。どうだい。だいぶすっきりした、それはよかったね。  もう一つ?すいませんが、もう一つ頂きたいんですけれども」
  こうなるともうきりがありませんでね。あとをひくってやつで八つぺろっとなめてしまった。
A:「どうだい?大分気分が楽になったか?じゃあ、これで…。なんだい?もう一つ食べたい?しょうがないな、どうも。すいませんが、家内がもう一つほしいと言っておりまして」
B:「そうですか。私は構わないんですけれどもね、この猫の死骸が持つかどうか」
コメント
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