蝸牛の歩み

「お話」を作ってみたくなりました。理由はそれだけです。やってみたら結構面白く、「やりたいこと」の一つになっています。

もう一つの日本

2015-08-29 16:59:48 | 日記
 パラレルワールドというSFの分野がある。過去が改変されたことによって、未来も変化を受け、元の世界とは異なる歴史が展開されていくという手法が一般的にとられる。以下は、あるパラレルワールドで起きたことである。

 日本の最高権力者は命じた。

 「刑法に照らして違法行為を行った満州事変関係者を拘束し、取り調べを行うように」

 「我が国は<大東亜共栄圏>という大義を掲げた。その大義に忠実であれば、世界に向かってなんら恥じることはない。戦時中に作成された文書はすべて保管し、焼き捨てることは一切禁止する。作成責任者は、客観的な解説を付せよ」

 「満州事変以来今日まで、作戦の拙劣さから皇軍の兵士を多く戦病死、餓死に追いやった責任者のリストアップをおこなうように」

 「大本営発表を検証することなく垂れ流したマスコミ関係者を逮捕し、なぜそのような行動を行ったのか、証言させよ。自己弁護は一切許すな」

 「キリスト教、仏教界の指導者を拘束し、戦時中の言動をすべて洗い出すように」

 「今回、私の命令に従わず、「我が国はまだ負けていない」と部下を巻き込んでの反乱を企てているものはすべて賊軍として討伐せよ」

 「『死して虜囚の辱めをうけることなく』という戦陣訓を作成した責任者、そしてそれに異を唱えなかった軍の指導部に対しては、『この戦争はなぜ負けたか』『なぜ「戦陣訓」のようなおよそ現代戦の常識からかけ離れた文書が特段の反対もなしに認知されたのはなぜか』というテーマで所見を書かせよ。書き終わったら、武装解除をすべて終え、米軍の進駐日程が決まったら、その二日前に全員切腹させよ」

 「私は、これらの事が一段―落ついたら、退位するつもりでいる。道義的責任を取れば、戦後の日本の教育にすこしでも資する所はあると思う。」