蝸牛の歩み

「お話」を作ってみたくなりました。理由はそれだけです。やってみたら結構面白く、「やりたいこと」の一つになっています。

こだわり

2015-08-14 14:21:23 | 日記

油断していたと言えばそれまでなのだが、まさか強盗が入ってくるとは思ってもいなかった。閉店時間、店内の清掃、棚に並んでいる商品の整理と確認、売上金の確認、レジとの照合が終わって着替えのために部屋に入って全員居るのを確認した直後に、二人の男が入ってきた。二人とも手にはピストルを持っている。素早い動きでドアの前に移動し、8人いる店員を一人づつ手招きしてガムテープでぐるぐる巻きにしていく。

 現金はない。Aさんが近くの銀行に振り込んでいる。
 そのことを告げると、男たちは、私たちにむかって、財布の中の金を出せと要求してきた。みんな黙って個人のロッカーを指さした。ロッカーの中のバッグの中に入れていた財布の中から男は現金を抜き取って行く。もう一人は銃を私たちに向けている。それだけで終わっただけで幸いだったと言える。怪我をしたものもいないし、命を奪われたものもいない。

 男たちが立ち去った後で、私たちはお互いにガムテープをはがしあい、警察に連絡をした。
 被害状況については一人一人が申告をした。
 お昼のニュースでその事は取り上げられた。

 夕方になって、警察から連絡があった。男の片方が自首してきたという。自首というより、怒鳴り込んできたという。
 男はお昼のニュースを見ていて、B子ちゃんが被害について語る場面を見ていたらしい。B子ちゃんは、財布の中に入れていたお金10万円を盗られた、あのお金は、故郷にいるおばあちゃんに初めての給料だからお菓子とマフラー、ちゃんちゃんこを送ってあげようと入れていたのに、と涙ながらに語っていた。

 私たちはB子ちゃんに、これ少ないけど・・・といいながら、カンパをした。店長は立場上一万円カンパしていた。
 男は、それは違う!と警察の窓口で対応した警官に言ったらしい。あいつの顔はちゃんと覚えている、あいつの財布はブランドものだったけど、中身はシケてた。1万円しか入ってなかった。なのに、10万円とは何事だ、人の道に外れていると言ったらしい。うそつきは泥棒の始まりだ、とはさすがに言わなかったようだ。

 共犯の男もすぐつかまった。共犯の男は、あいつと組むんじゃなかったと後悔していたそうだ。幼稚園の時から、変なところにこだわる奴だったと言っていたそうだ。
 幼馴染だったんだ・・・。