風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の参

2010-02-20 17:20:34 | 大人の童話

始業式から2日経った九月三日、一学期間お世話になった四小・東中との

お別れ会を四小の校庭でやることになりました。夢は、朝からそわそわしていて、

学校に行ってもおちついていられません。そんな夢を見て、六小が

「夢ちゃん、おちつかないね。何で?どして?」

と、しつこく聞いてきます。夢は、困ってしまいました。だって、まさか「四小さんに

会えるから」なんて、六小には言えませんもの。すると六小は、”夢が落ち着かない

理由なんて、ほんとはとっくに解っている”とでも言いたそうに、プイッと横を向いて、

「今日はお別れ会だもんね。四小さんに会えるんだもんね。うれしいよね。」

と、たたみかけるように言ってきました。六小が、自分の心の内の想いを

解っているとはおもいもよらなかった夢は、素直に六小に謝りました。

「うん、そうなの。四小さんに会えるんでうれしいの。だから、落ち着かないの。

ごめんね、六小さん。」

六小はしばらく黙っていましたが、少したって、

「まあ、しかたない・・・・か。夢ちゃんと四小さんは、一年間もつきあってきたんだし。

わたしとは、会ったばっかりでこれからだし。うん!うれしそうにしていても許して

あげる。」

「ほんと?ありがと。」

「でも、これからの五年間は、わたしといっしょなんだからね。それを忘れないでよ。」

「うん、わかってるって、安心してよ。」

「ほんとかなあ。心配だなあ。」

そうこうしているうちに時間になり、夢たちは学年ごとに並んで、会場の四小に

向かって歩いて行きました。六小は、その後ろ姿を見送りながら、

”夢ちゃんと心通わせられてよかった。四小さん、きっと一年間楽しかっただろうな。

うふっ、明日から楽しくなりそう。”

と、一人、いえ一校微笑んでいました。