ドッジボール大会から一ヶ月後、卒業も真近ということで、卒業文集を書くことに
なりました。夢は四小と六小、どっちの思い出を書こうか困ってしまいました。
普通ならもちろん、五年間の時を共に過ごした六小でしょう。しかし、夢には、
一年生の時の四小のことが深く心に残っていて、六小でのことが書けそうも
ないのでした。四小のことが大好きな夢、その四小と同じくらい六小のことも
大好きなのに。するといつの間に来たのか、いきなり六小が声をかけてきました。
「どうしたの、考えこんで。」
「わっ、びっくりしたぁ。急に来ないでよ。」
「わかった、文集のことでしょ。もうすぐ卒業だもんね。」
「うん。何を書こうかなって考えてたの。」
「そんなの決まってるじゃない。わたしとのことを書けばいいのよ。」
「うーん、でも、なんかねえ。あ、ねえ六小さん、文集に四小さんとのことを
書いてもいい?」
「えーっ、何それ。四小さんとの思い出の方が、わたしとのことより残ってるの?」
「う・ん。」
六小はしばらく黙っていましたが、やがて、
「いいよ。」
と言いました。
「え、いいの?」
「だって、しようがないじゃない。」
「ありがとう。決して、六小さんとの思い出が残ってないわけじゃないからね。」
「わかってるわよ、そんなこと。」
そう言いながらも、六小は本当は少し寂しく思っていたのです。しかし、文集に
四小とのことが書けるとただ喜んでいる夢には、そんな六小の気持ちなど全然
気づくことができなかったのでした。こうして夢は、”思い出の第四小学校”という
題で卒業文集を書きました。その中から最後の二行を、ここに載せておきます。
”わたしは戸久野第四小学校のことを、そして、この戸久野のことを一生
忘れないだろう”