風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第一部) 其の拾三

2010-02-02 21:40:10 | 大人の童話

それから夢は、自分からも積極的に四小に話しかけるようになりました。

あるお昼休み、夢は校庭で四小に給食のことを話していました。

パンは食パン・コッペパンなどいろいろあって、どれもおいしいけど、一番

おいしいのは揚げパンだということ、おかずは、やっぱりカレーやシチューが

大好きだけど、鯨の竜田揚げもおいしくて好きなこと、でも、脱脂粉乳の

ミルクだけはまずくてなかなか飲めないこと等々、話し出したらとまりません。

四小は、そんな夢の話を楽しそうに聞いていました。特にミルクの話は、夢が鼻を

つまんで顔をゆがませ、本当にまずそうに飲むしぐさをしたので大笑いでした。

「なんで笑うの。本当にまずいんだから。あんなの一杯飲むのがやっと。半分残す

人もいるのよ。」

夢は、ほっぺたをふくらませて怒ったように言いました。

「ごめん、ごめんね。だって、夢ちゃんの顔ったら、本当におかしかったんだもの。

でも、そのまずいミルクも、もうすぐ飲まなくてすむようになるわ。」

「ほんと?」

「ほんとよ。来年から牛乳になる予定だから。」

「わぁー、よかったあ。牛乳ならおいしいもん。」

「だからもうちょっとだけ、まずくてもがまんして飲んでね。」

「うん。牛乳、牛乳、はやく給食にでてください。今のミルクはもう飲めない。

牛乳でたらもう飲まない。」

給食で牛乳を飲める日が待ち遠しくてたまらないと、ちゃめっけたっぷりな

歌としぐさで喜びを表す夢を、四小は、午後の始業のチャイムが鳴るまで、

じっといとおしそうに眺めていました。