風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第一部) 其の拾九

2010-02-07 20:55:01 | 大人の童話

仮校舎での学校生活は、何かと不自由も多く大変でしたが、夢は相変わらず、

のびのびと日を送っていました。ある日、先生の怒鳴る声が東中校舎内に

響きました。

「こら、誰だ。廊下の壁にいたずら書きしたのは。すぐに消せ。」

どうやら、誰かが校舎に落書きをしたようです。仮住まいの六小、先生たちも気を

つかって大変です。先生の声に、さっそく何人かの子たちが、「ごめんなさい。」と

言って、落書きを消して歩いていました。しかし、子どもたちだって大変です。二校の

校庭を三校の子どもたちで使うため、子どもたちが遊ぶスペースも狭くなり、

あちこちで子どもたちどうしの、小さないざこざが起きているようでした。中学の子が

六小の子に「じゃまだ、どけ。」と言ったとか、四小の子にも「じゃまだなあ、六小は。」

と言われたとか。幸い、夢自身にはそういうことはありませんでしたが。四小は、

そんな子どもたちの様子を、いつも静かに見ていましたが、ある時、夢に

言いました。

「ごめんね。みんなのことじゃまにして。」

四小の子たちが、六小の子たちをじゃまにしているのを見て謝ってくれたのです。

「ううん、いいよ。だって、四小の子たちの気持ちわかるもん。それより、いつも給食

ありがとね。牛乳は、やっぱりおいしいね。あのミルクとは大違い、よかった。あ、

そうだ。あのね、新校舎に移っても、まだ給食はないんだって。だから、お弁当なの。

牛乳だけはでるらしいけど。」

「まあ、そうなの。じゃあ、こっちにいる間に、いっぱい給食食べていってね。」

「うん、ありがと。」

四小は、一年の時と同じく屈託のない、夢の明るい笑顔に、ほっとした気持ちに

なるのでした。