不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Marsilio Ficino in Flagellazione

2011-06-21 23:35:00 | アート・文化

Bernardo Provenzano(ベルナルド・プロヴェンツァーノ)は
イタリアのマフィア史にも残る歴史的犯罪者の一人で、
シチリアマフィアのリーダーの中のリーダーと言われた人。
彼が30歳であった1963年から逃亡生活を続け、
実に43年の逃亡生活の末
2006年に身を隠していた家屋で逮捕されました。
家族をはじめグループのメンバーとのやり取りをしていた
メモをもとに居場所の確定が行われ逮捕に至りましたが、
さすがに43年を経て
その風貌は大きく変わっていることが予想され
パレルモ警察のマフィア部門では
彼の若い頃の写真をもとに特殊なソフトを使って
逮捕当時(73歳)の顔写真を作成しており、
これはかなり精度の高いものでした。

このソフト(Age Progression)の逆まわし、
つまり老齢期の風貌から
若い頃の風貌を特定するという方法を用い
人物の確定を試みたのが
ウルビーノのマルケ州立美術館に所蔵される
Piero della Francesca(ピエロ・デッラ・フランチェスカ)の
Flagellazione(キリスト笞刑)。
Flagellazione

その作品自体も、
その構成について諸説存在する作品ではあります。
作品画面右側手前に描かれる人物群は
伝統的にルネッサンス絵画の解釈として
主題である奥のシーンと鑑賞者を繋ぐ役割を果たし
シーンの目撃者、解説者であるとされるのが主流の見解です。
通常手前に描かれるのは
単なるアレゴリーの一部である場合もありますが、
作品の依頼者であったり
依頼者に関係のある親族や政治家であったりすることが多く、
この作品でも依頼者であるMontefeltro(モンテフェルトロ家)に
縁のある人物だと言われてきました。
この3人の人物のうち中央の人物に例のソフトを適用したところ
若い頃のMarsilio Ficino(マルシリオ・フィチーノ)である
という説が浮上してきました。
アンコーナ警察を動員して
フィチーノであると確定している老齢期の肖像を利用し
若い頃の風貌を特定し、
ピエロ・デッラ・フランチェスカの作品内の人物と
照合するという捜査の結果として発表されています。
この謎の多い作品の42番目の新説とも言われて
俄に話題になっていますが、
この作品は研究する人ごとに新解釈が生まれることでも有名で
まだまだ今後も研究は続けられそうです。

1975年2月5日の夜中(6日の未明)には謎の一団が
ウルビーノのドゥカーレ宮殿に侵入し
このFlagellazioneとMadonna di Senigallia(セニガッリアの聖母)が
盗難に遭うという事件が起きました。
14ヶ月後にスイスで見つかっていますが、
この事件自体もほぼ迷宮入りと言われています。

Madonnasenigallia
Madonna di Senigallia(セニガッリアの聖母)は保存修復が完了し
6月18日からセニガッリアのRocca Roverescaで展示中です。


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2011-06-21 19:03:08 | Tweet Log