旧約聖書の創世記の中では
少しの涼を得るために、
イサクが父アブラハムに
ヤギのミルクと雪を混ぜた飲み物を
飲ませるシーンがあります。
またアレクサンドロス大王は
雪に蜂蜜、フルーツ、スパイスを配合したものを
インド遠征時に好んで食べたともいわれ
エジプトのファラオも来客に
雪とフルーツジュースを混ぜたものを
振る舞ったと言われています。
古代ローマ帝国でも
エトナ山やヴェスヴィオ山から運ばれた雪を使って
同じようなものが作られ
貴族だけでなく、庶民も冷たい飲み物や食べ物を
楽しんでいたと言われています。
しかし、ジェラートやシャーベットの起源や時代の詳細は
未だにはっきりしていません。
ルネッサンス時代のフィレンツェで
メディチ家のために
同じように冷たいデザートが考案されたのは
よく知られている事実です。
当時のメディチ家お抱え料理人であった
Ruggeri(ルッジェーリ)と
お抱え建築家であったBuontalenti(ブオンタレンティ)が
1565年にコジモ一世の命で
スペイン代表団をもてなす饗宴の場で
ジェラートを提供したと言われています。
どの時代にも暑さを凌ぐために
各地で様々な工夫がされていたことを示す一つの事例です。
そして1500年代のメディチ家の居館であった
Palazzo Pitti(ピッティ宮殿)には
エアコンも装備されていたという研究結果が発表されました。
フィレンツェの夏に滞在したことがある方は
ご存知だと思いますが、
地形的によく似た京都の夏のように蒸し暑いのです。
ピッティ宮殿前の広場は
真夏は35度を超えることも珍しくありません。
1500年代も同じように暑かったのでしょう。
壮大な建物をどのように冷やしていたかというと、
建物の裏手に広がるボボリ庭園の冷気を
一方向にまとめて高いところから低いところへ流して
宮殿の半地下となる部屋まで送り込み
そこから上階の各部屋の格子窓などを通して
建物全体に送り込んでいたらしいのです。
半地下の冷気受け入れ所には
宮殿の氷室に貯蔵されている冷水を配して
冷気を更に低温化し適度な湿度を含ませるシステムも
導入されていたようです。
こうした工夫によって
実際ピッティ宮殿内の温度を
約10度下げることも可能だったようです。
もちろん現代社会に
同じシステムで対応しきれるはずはありませんが
夏の暑さを凌ぐための1500年代の工夫は
電力問題を考えるときに
一つの参考にはなるのではないかと思います。