Santi di Tito(サンティ・ディ・ティト)は
1500年代後半からフィレンツェを中心に活躍した画家。
フィレンツェで修行を積み、
Agnolo Bronzino(アーニョロ・ブロンツィーノ)や
Baccio Bandinelli(バッチョ・バンディネッリ)
などとも交流がありましたが、
若いころにはあまり目立った作品を残しておらず
実際に名を知られるようになったのは
1558年から1564年のローマ滞在のころから。
ローマでマニエリスムの最先端技術に触れて開花。
教皇の擁護の下、
当時の重要な建築物の装飾などを手がけていき
当時名を馳せていた画家たちと肩を並べるまでに。
その後、フィレンツェに戻ると
メディチ家の宮廷に迎えられ
精力的に活動を続けていきます。
フィレンツェに戻ったばかりのころの作品には
ローマ派の影響を受けた作風が残っていますが
徐々に簡素化を重ねて
1500年代初頭の簡潔なフィレンツェ風の作風に移行。
このころの作品として挙げられるのが1565年製作の
サンタ・クローチェ教会の「復活(Resurrezione)」。
この作品は1966年のフィレンツェの洪水の際に
被害にあった作品のひとつ。
1500年代半ばのフィレンツェはヴァザーリが幅を利かせており、
反宗教改革の方針に従い、
まさにヴァザーリの命で
サンタ・クローチェ教会の内装の全面的な変更が行われた時に
サンティ・ディ・ティトも参加して3作品を手がけています。
このうちの一点が「キリスト復活」。
教会左身廊の祭壇(ガリレオの墓碑の右隣)に置かれた作品は
洪水の際に泥流と屋根からの漏水の被害を受けています。
2006年7月に修復が完了し、再び一般公開となりました。
マニエリスムらしい色遣いとプロポーションでありながら
力強い姿で描かれる復活のキリスト。
構図的に浮き上がる感じが非常に強くなっています。
残念ながら復活後のキリストがまとう「青色マント」ですが
修復の際にも復元することができず、
現在はグレーのマントになっています。
しかし、これはこれでなんとなくしっくりきているのが妙なところ。
洪水から40年の今年に修復を完了した作品のうちのひとつ。
機会があったら午後の日差しの中で鑑賞することをお勧めします。