今年の現地は雨が多かったこともあり、8割以上の活着率になった。このような年はこれまでで初めてであり、原因は台風であると思っている。今後、台風が増えれば、こちらでも気候がいい方向に変わる可能性がある。来春からは、この植林地においてはすでにニクジュヨウが寄生できているので、ニョキニョキと出て来る。今から楽しみだ。
今日は中国国家環境部からの委託プロジェクトをカプラムガ村で行なった。北京から国家環境部の環境文化促進会の張さんらが応援に来てくれた。この村は井戸水の中にフッ素が多く水質が悪い。ここでは水の改善事業を行なっている。中国は都会と僻地の格差が大きく、こうした取り残された地域の生活改善もまだまだ必要だ。研修が終ると、村の人達がありがとう、ありがとうと口々にお礼をして帰って行った。
最近は村々を回っている。今日はセンターから300kmあまりのゲルホト村に研修で入った。今日の宿は面白い家だった。普通は長方形の家が多いのだが、モンゴルパオのように丸くなっている。これなら自分にも作れそうだ。中に入ると思ったよりも広く感じる。家の電気は4枚のソーラーパネルで供電している。LEDなので明るく、テレビや冷蔵庫もあり快適だ。周囲は全く何もなく、夜は星がきれいだった。町に戻ると、将来はどうしようとか、身近な問題などをいろいろと考えてしまうのだが、ここに入ると、不思議と何にもなくても何とかなるという気になるから不思議だ。実際に煮炊きは枯れ枝を取って来て、羊の干し肉と沙漠ネギ、ヤギの乳とご飯くらいで数ヶ月は何とか暮らせるかな。
今年は台風のおかげでこれまでにないほど雨が多く降った。温暖化が進むと、内モンゴルあたりの降雨量が増えるという予測データーもある。さて、雨が多ければ当然、豊作なのだが、ひとつおかしなことが起こっている。梭梭の種子が例年よりも少ないのだ。この状況は私たちのセンターだけでなく、甘粛省から阿拉善全域で起こっている。この原因を調べるべく、あちこちの場所を見て回った。普通は干ばつのせいだと考えられるが、逆に雨が多くてもダメなのかもしれない。ただ、同じ場所でも種子が実っている木もあるために、詳細な調査が必要だが、雨が降るとハエが飛ばなくなる。乾燥地にて花粉をつけるのはハチではなくハエなのだ。このハエは不快なのだが、重要な役割を果たしている。このハエが大きな原因かもしれない。
27日までに中国公益映像フェスティバル(China International Philanthropy Movie Festival)に1159作品のうちブラザー中国より内モンゴルの活動映像を出展しています。30%は投票、70%は専門家にて10作品が選出されます。ホームページhttp://www.cipmf.com/Listから右上に440と入れて捜索のボタンを押し、440番の内モンゴルの私たちの映像にアクセスして投票頂ければ(1つのコンピューターから1日10回ずつ27日までに投票して頂ければありがたいです)「投一票」を押すと識別検証というボタンが出てきます。検証の所を押すと、戻ると絵が出てきますので、絵の中にある○や☆印を押してから確定を押せばOKです。他に微信からも投票できますので拡散頂ければありがたいです。これらのネットの影響は中国ではとても大きく、AKBの投票ではありませんが、日本の皆様のお力を頂きたくよろしくお願い致します。またこの機会にぜひ映像も見て頂ければと思います。
日本では売電価格の下落もありソーラーパネルの設置が一段落しているが、こちらでは今年に入り、ソーラーパネルの設置が各地で急速に増えている。これはなぜなのか?中国の経済は輸出が落ちている分、内需に回しているのだろう。自然エネルギーへの積極的な投資は、今後もますます増えていくだろう。
昨年より味の素の支援で砂漠でも育つ、陸性の環境を破壊しないアヒル「マスコビー種」の普及を行なっている。先日、成都の講演会でも「ニワトリ、ブタ、牛の肉にうち、どの肉が好きですか?」と聞けば、ほとんど牛肉を挙げた。確かにビーフは美味しい。ただ、飼料効率の悪い牛肉の消費量が爆発的に増える中、この内モンゴルでも肉牛飼育農家が増えて来ていることに懸念を覚える。このまま牛肉が途上国でも食べられるようになれば、大豆の消費量は益々増えていき、2000年当時の約1000万tから2012年現在で5838万tという爆発的に増えている大豆輸入が、さらに増えていくことになる。幸運かどうか、ブラジルが森林を伐採し、1億tあまりの生産量の半分を輸出していることで、何とか食糧供給を保っている。ただ、今後の需要増に対応できるかどうかは分からない。このことは日本とも無関係ではなく、味噌や納豆などの価格高騰にも繋がっていく。半乾燥地という今後、人口を養って行くことができる唯一の広い大地(水問題があるが)で、環境を破壊する羊やヤギではなく、1日40kgの草を食べる肉牛ではなく、飼料効率が良く、強い家畜といえば、消去法でマスコビー種しかない。このマスコビーの肉はビタミンDが多く、卵の栄養価も普通の卵の3倍、また、このマスコビー、日中は1km以上もの距離を歩いて移動し、夜には自分で戻ってくるという、とても飼いやすいアヒルだ。しかしながら、普及には管理上の課題も多く、味は最高級だが羽根を取る手間等があるため、一歩ずつの普及を図っている。このマスコビーも2年目のヒナが産まれる時期になり、次々と産まれ、そのマスコビーをさらに周辺の牧民に配り、循環が少しずつできてきている。「ニワトリは厳しいこの環境で全部死んでしまったけれど、このアヒルは強いね」こう言われると何だか嬉しい。この先、何十年か後に、半乾燥地域でのマスコビー飼育の試みに脚光があたる日が果たして来るだろうか?
今日は中国西南地域の四川省成都のブラザー分公司にて環境講演会を行なった。ここ成都は緑が多い町で、街中の湿度が高くガジュマルのような木々があり、まるで亜熱帯の様相をなしていた。普段、砂漠に行ったことも見たこともない職員の方に、砂漠化についてどう話せばいいかと悩んだが、砂漠化問題というのは、つい昨日起こったことではなく、またすぐに解決できる問題でもない。数世代の時間が掛かるため、緊急性としての課題になりにくい。そして結果がすぐに出てこない。2001年に植えた場所も2mくらいの灌木に育っているが、他から来た人にとっては、たったこれだけ?と思うこともあるかもしれない。そのような話から土壌を作る話までを広く話した。例えば普通の水はpHが7.5くらいだが、砂漠に生える植物の種子やシアノバクテリアを入れるとすぐにpHが5.4くらいまで下がる。「これはなぜなのか?」種子の周囲に酸性多糖類があり、この多糖類がpHを下げることや、中国発の生理学ノーベル賞を貰った内容が黄沙蒿というアルテミシア属の植物で、それがなぜマラリアに効くか?砂漠の植物になぜ身体の抵抗性を高めたり、滋養強壮、抗がん作用のある漢方薬が多いのか?こういった所からの謎掛けで、砂漠化を回復するためにはただ単に木を植えるということではなく、植生が回復するために土壌硬度を上げたり、pHをアルカリ性から中性にしたりすることにより、植生回復を回復させるなど、いろいろな方法があることを話した。また地球カレンダーの話をして、地球の年齢から私たちの年齢をみれば、1年を46億年として、ほんの0.3秒くらいの間の一瞬であり、この一瞬の破壊力の大きさがいかに大きいかという話から、後の世代の人類が住める地球にしなければならないという話をした。どこまで分かって貰えたかな。その後、分公司の皆さんで食事をした。とても楽しい一日だった。ブラザー中国の皆様、ありがとうございました。内モンゴルのクリック募金にご協力よろしくお願い致します。http://www.brotherearth.com/ch/top.html
2012年9月13日のブログでも書いたのだが、この時期が1年で最も苦痛の時期である。ウズベキスタンから戻るとすぐに目が充血し鼻水が止まらず、気管支炎の症状を起こして、身体がだるくなった。また急性の皮膚炎にもなった。恐るべし刺沙蓬(Salsola tragus)という植物。千もの種子を飛ばす。可溶性シュウ酸や硝酸塩が羊にも毒草で、これはかなり危険だ(2012年)。GROVAL INVASIVE SPECIES DETABASE(全世界の侵入生物種データーベース)で調べた所、1933年アリゾナ州でのsalsa属で花粉や接触性での皮膚炎の例から始っている。イランでも9種のSalsolaの症例が報告されており、またスペインでは花粉の5%がこの草で、沢山の花粉症の人が出ている。医者に聞くと、この時期は避難するしかないですねと言われる。来年からは8月下旬から9月中旬まで避難しようかとも考えているくらいの重症に陥ってしまった。
現在、世界の約4割の食糧は半乾燥地で作られている。今後、人口増大が続く中で食糧増産の可能性がある場所といえば、ブラジル等の熱帯林などの森林地帯か広大な未使用地が残る半乾燥地が挙げられる。熱帯林の伐採は今後、CO2の問題もあり規制が入って行くが、広大な土地がある半乾燥地の開発は今後も続いて行くだろう。ただ現在の栽培方法では地下水のくみ上げにより枯渇してしまう危険性がある。今後は点滴灌漑などで降雨量分の作物を作るようにできれば、半乾燥地での農業開発が一気に広がるだろう。(写真は陜西省のゴビ砂漠上空)