来月でセンター設立から10年経つ。タイガーナッツというカヤツリグサが栄養価の高いスーパーフードとして注目されているが、ちょうど10年前、センターができたころに武漢にある中国科学院の武漢研究所から種子を貰って来て、これまでは乾燥地での栽培は行なわれていなかったが、最初に試験をスタートしたことがある。その後、2010年に村での普及を試みたがその頃は市場を開拓できずに失敗した。他にも糖度の高いトマト品種を探すために600種類ものトマトを集めて栽培したりした。こちらも甘い品種が出来たのだが、安く売ってしまった。今考えるとこういった経験の積み重ねで、コウバクニクジュヨウを牧民に普及させて栽培し、現在「金山来福酒」として販売しているが、こちらは北京大学で痴呆症改善の研究が行なわれている。あと10年くらいしたら流行るかもしれない。当初、タイガーナッツはイネ科の植物が地球を回復させる可能性が高いと考えていて、このカヤツリグサで砂漠化した大地のカバープランツとすることを考えていたのだが、ちょっと時代が早かったなあ。表浜ネットワークの皆さんはお元気かな?(写真は2007年のセンターでのタイガーナッツ試験)
エミューケーキというのをご存知だろうか。小さくて孵化に適さない卵を使って作るふんわりとしてとても美味しいケーキ。一度食べるとやみつきになります。この原料にはエミューの卵が使われる。東京農業大学でもエミューの研究はされていて、ここでもエミュー生どらやきが食べられる。http://www.nodai-bio.jp/product/food.html
村に行くと出されるお菓子の中に、チョコレートのような甘いお菓子がある。これはヤギのミルクを沸かして上に浮き上がった5mmくらいの厚さの脂肪分で作ったものだ。味はミルクチョコレートを薄くしたような美味しい味でとてもサクサクして歯触りも良い。羊からも採れるが、すぐに逃げてしまうのでヤギのようにはなかなか搾るのが難しい。なので、ここでは環境を破壊するヤギを飼う人が多いのも頷ける。町で一枚50元くらいで高く売っているが、味は村のものの方が甘みがあって美味しい。「美味しい」と言うとどんどんお食べと言って、ついついたくさん食べてしまった。普段はにっくきヤギも、このチョコレートのせいで許せる気がしてくる。この甘さに人類が負けて増えていったのかもしれないなあ。
バインホトの町でキノコ売りを見かける季節になった。ここにあるガラン山にはこの時期になるとたくさんのきのこ採りの人が2000m~3000mの山に入る。中国でも有名な産地の一つだ。ここのキノコにはアミノ酸が多く含まれていて、リン、カリ、鉄、カルシウム、マグネシウムや微量元素が多く、食べるとがんが治るということで、北京等からもたくさんの人が買いに来て値段が高騰しているようで、普段は20元/kgくらいで買えるのが、今年は生のものでも50元もした。高いというと、数日前だと100元以上したというから値段もバブルだ。それでも箱買いすれば30元程まで下がるようだが、毎日値段が変わるので良くわからない。これから乾燥のものが出てくるが、昨年は160元以上していたが、生を買っても1/10くらいまで小さくなるので、買うのなら乾燥したものの方がいいかもしれない。日本でいうとアガリクス(ハラタケ属)と呼ばれているが、世界には300種類以上あるようで、ここ賀蘭山でも数種類のアガリクスがある。ここの人たちは紫磨菇のものがいいと言うが、このキノコも乾燥すると紫になるので、乾燥した紫色のキノコと同じようだ。今日、買ってみたキノコは同定すると紅肉磨菇Agaricus haemorrhoidarius Schw.et Kalchbr.という種類のもののようだが、他に粗柄磨菇Agaricus spissicaulis F.H.Meller.という種類のものが混ざっている。こちらは青海トウヒの林の中によく見かける種類だ。ガンの人は試してみるといいかもしれない。麺に入れるととても美味しい。
ここ4日連続で捕まっている。そう、白酒攻撃である。今日は13人席だった。「最後の晩餐かもしれない」と大きなテーブルを見て思う。この国では酒を飲まないと物事が進まない。逆に考えれば、楽な人もいるだろう。そういえば、以前、酒井さんと中国人からあだ名を付けられていた人がいた。確かに酒豪の人だった。でも、飲めない人にとっては地獄のような苦しみが襲う。今日の戦いのメンバーは、隣は環境局の書記で向かいは教育局局長、図書館長もいる。あと馬頭琴の歌手もいた。早速、エミュー琴作ってよというと「いいよ」と言ってくれた。今度演奏してもらおう。まずまず中級レベルだ。こちらでは初級レベルというのはまずない。まずは戦う前の握手。そして顔を上げれば、ターゲット(鴨)にしているのが良くわかる。今日は逃れられそうにないな。この試練を繰り返す前に、勝つためには対策ということがどうしても必要になる。まずは空腹で行かない。これが前提だ。牛乳等を飲むと酔うまでの時間が遅くなる。ウコンの力などがあればいいのだが、生憎持っていない。そして戦いに望む時は究極に酔う量を改めて計算しておくことだ。ラベルを見ると「蒙古王」42°の鬼門のお酒だ。これは飲みやすいが二日酔いするタイプだ。前日は冬虫夏草酒で中に虫が入っていてそれも滋養にいいと言って食べさせられたのだが、さらにきついお酒だった。私の場合は42°であれば500mlが限界値だ。12人だとすれば、1杯1フィンガー(30ml)とする。そのうち2/3に入れたとして1周で240ml(全員と乾杯するので)、2周で480mlになる。3周でノックダウンとなるため、2周あたりで、どうするかしなくてはならない。以前教えてもらった方法は飲んでいる振りをしてお茶に吐くだ。そうすれば大体200mlの節約になる。3周は望めそうだ。でもこれがなかなかもったいなくてできない。そして3周目に突入した。あと肝心なことは酔っぱらう前に自ら乾杯を全員とするのもマナーだ。(大体最後の方になる)できれば歌を歌うとさらに喜ばれる。なので、早めに「あなた達は毎日こうしているからお腹が大きくなってきているようだけれど、減肥するには、エミューの肉を食べなさい、環境にも優しいし」と解いてから乾杯を済ませる。怒っていなかったようだ。(偉い人程、だいたい太っている)気持ち悪くなったときはやはりトイレに駆け込むのがいい。ただ、これは喉に詰まることがあり、死ぬ人もいるので気をつけなければならない。トイレでは自害したくない。必ず酔い潰れる前にやること。今日はそのうち記憶がぼんやりとしてきて、何杯飲んだか分からなくなってきた。「日本男児よ、モンゴルに負けるな、頑張れ!」頭の中で誰かがささやいている。しかし、だんだんと背筋が曲がってくる。丹田に力を入れてみたが、気を保つのも限界だ。きっとダウンしてしまったようだ。「今日も敗戦だ...」数日後には、奢ってもらったら招待しなければならない。これもルールだ。でなければ、ケチだと言われてしまう。なので、こうした宴会が延々と続く。ここの習慣なので、郷に入れば郷に従うしかないのだ。
今日は疲れたなあ、そういう日はラーメンに限る。こちらの人は3度のメシより麺が好きというほど、麺が大好きだ。ここ阿拉善の中にはたくさんのラーメン屋がある。その中で多いのが牛肉ラーメン、どこも緑に金字の看板だ。私の好きなラーメン屋は吴中回郷食府牛肉拉面。別名、蘭州清湯牛肉拉面とも言われる。100年以上の歴史があると言われるが、ここの味は1915年に馬保年家が開発し、1925年頃より爆発的に流行った系統の味のラーメンだ。カレー風味の牛肉麺が北京や上海には多いが、本場は透明だ。一に透明で二に白く、三に赤く、四に緑と言われる。まずスープが透明、面が白く、唐辛子が赤く、ネギ(場所によっては香菜)が緑色で、単純なように見えて、秘密のスパイスはとても奥が深い。これに醤油で煮た卵が付けば完璧だ。酢が好きな人は少し酢を入れて食べる。辛そうに見えて辛くない。ここの店は第一回の牛肉ラーメン技術大会で優勝しているだけに、外見では単なる牛肉ラーメン屋なのだが、いつ食べても飽きのこない味なのだ。これを食べると、疲れやストレスなどが不思議とすっとんでしまうから不思議だ。場所は旧バス停(幹線道路沿いの昔(下)の長距離バスターミナル)から銀川方向に500mほど、最初の信号より手前の左手にある。何気ない店なので分かりづらい。ラーメン4.5元(小)5元(大)、卵1元。
阿拉善にもファーストフードの波が押し寄せ、中心街に台湾系のDicosが出来たと思えば、今度は新しくDFC(美味基)というKFC(肯匇基)のニセモノのようなハンバーガー屋ができた。でもなぜDFCなのかは、今のところ謎である。Delicious(うまい)のDかもしれない。阿拉善には、他に麦肯基(マクドナルドとケンタッキーの合作のようなお店)があったが、これからは、この3店で競争が始りそうだ。それにしても、看板の顔がカーネルサンダースにそっくりで思わず苦笑してしまう程のできばえだ。
熱い砂漠を歩いていると、時々アブラナ科沙芥属の沙芥Pugioniumcoruntum(L.)Gaertn.(中国名で沙萝卜:砂漠大根の意味)の群落に出会う。日本ではアブラナ科のカラシナに近い味でおひたしや漬け物にするとうまい。ただ、花が咲く前に羊が好物で食べてしまうため、なかなか自然で増えていかないのが難点だ。また、雨が降ると一気に増えるが、干ばつの天気のもとでは、なかなか増えてくれない。この植物はビタミンやミネラル、カロテン、カルシウムがあり、栄養豊富なので夏バテした身体にはありがたい野菜だ。これを漬ける前に熱湯を軽くかけると、色よく辛味も増して、さらにおいしくなります。今回は羊に一歩先を越されていて、柔らかい部分がかなり食べられていました。
今回のエミューから作ったエミューオイルです。エミューオイルは他の油に比べ、人間の皮脂成分に最も近く、人間が不足している成分を自然に補うことが出来るそう。しわ取りから日焼け止め、そしてアレルギーもなくアトピー皮膚炎の方にもいいそうで、野球やマラソン等のスポーツ選手が疲労回復のマッサージに使うそうです。
今年は冬の間に雪が多く降ったので、高級食材の髪菜(Nostoc flagelliforme ランソウ綱ネンジュモ目)がたくさん出てきている。実は日本のスタッフの田中さんの故郷の福岡県甘木にもスイゼンジノリと呼ばれる高級食材の淡水産のランソウ綱の一種(クロオコックス目 アファノテーケ属)がある。何という偶然か?この髪菜を少し採って食べてみた。こちらでは、水に2日程浸して、かなり大きくしてから食べるそうだが、まずはもずくのようにして、酢醤油に漬けて食べてみる。砂糖と塩を加えて、なかなかもずくに近い味ができた。「うまい!」と言って食べていると、「これに胡椒油をかけた方がいい!」と言って、ごま油をかけられてしまった。こちらの方がスタッフにはうけがいいらしかったが、この食感、この味はまさにもずく(中国語:海髪菜)だった。