朝鮮半島と中国と世界の動き

最新の週刊誌及び月刊誌などの拾い読み 朝鮮半島での出来事及び中国の政治経済などテレビ新聞が
報道しない記事を拾う

「やられる前にやれ」の根拠、防衛に出し惜しみは、するな

2017-04-07 23:16:37 | 経済



今回の自民党提言は、地対空ミサイルのイージスアショア(陸上配備型イージスシステム)やTHAAD(高高度地対空ミサイル)の導入を提言しており、「現状は不十分」と認めたのと同じことだ。問題はカネである。

現在のMDシステムは初期配備に1兆円、その後の改修などを含めれば1兆4000億円の防衛費を投じた。イージス護衛艦、地対空ミサイル「パトリオット」という自衛隊保有の武器を改修したにもかかわらず、これほどの出費を強いられた。

一から導入するイージスアショア、THAADが極めて高額の防衛費を必要とするのは自明だろう。

しかも米政府の提示する価格、納期で購入が義務づけられる対外有償軍事援助(FMS)となるのは確実なため、「いつ、いくらでどう提供するか」は米政府次第となり、武器を媒介にした米国による日本支配が強化されるのは間違いない。トランプ米政権の掲げる「アメリカ・ファースト」を後押しすることにもなろう。

あらたに追加配備したとしても100%の迎撃は困難だ。北朝鮮は3月、中距離弾道ミサイル4発を同時に発射し、うち3発を日本の排他的経済水域に落下させた。

MDシステムは遠方の弾道ミサイルを補足するためレーダー波を絞り込み、限られた範囲しか見えなくなるため、連射には対応できない。3月の4発連射はそうした弱点を北朝鮮が熟知していることを示したといえる。

日本列島には休止中も含め54基の原発がある。使用済み燃料棒が原発建屋の天井近くに保管されている事実は、東日本大震災の福島第一原発の事故で世界中に知れ渡った。通常弾頭であっても命中すれば、放射性物質の拡散により大惨事となるおそれがある。

また核弾頭を搭載したミサイルであれば、落下地点やその周辺一帯が壊滅的打撃を受けるのは確実である。

自民党提言は、迎撃失敗による甚大な被害が生じる可能性にはまったく触れず、MDシステムをもっと強化しろと主張する。

だが、弾道ミサイルとMDシステムは「矛」と「盾」の関係にあり、競い合いには際限がない。MDシステムを強化すれば、日本攻撃を意図する他国は、この「盾」を打ち破る「矛」を必ず開発するはずである。

 

そうしたジレンマの解消策だろうか、自民党提言は「敵基地反撃能力」との呼び方で敵基地攻撃能力の保有も主張する。あえて反撃としたのは先制攻撃ではないかとの批判を避ける狙いであろう。

いずれにしても弾道ミサイルが落下する前に発射基地を攻撃する能力を持つべきだ、との主張で、有体にいえば「やられる前にやれ」というのだ。

根拠にしたのが1956年鳩山一郎内閣が示した政府見解である。「誘導弾等の攻撃を受けて、これを防御するのに他に手段がないとき、独立国として自衛権を持つ以上、座して死を待つべしというのが憲法の趣旨ではない」として敵基地攻撃を合憲とした。

1990年代以降、北朝鮮による弾道ミサイルの発射が繰り返されるたび、主に自民党議員が敵基地攻撃能力の保有を求めてきたが、政府は自衛隊が保有できる兵器を「自衛のための必要最小限度のものでなければならない」とし、「自衛隊には敵基地攻撃能力はない」と答弁してきた。本当に「ない」のだろうか。

現代ビジネスからの引用記事

 


慰安婦像撤去は二の次、三の次でよい、 北朝鮮対策に重心を移せ

2017-04-07 22:33:39 | 政治



日本の駐韓大使と釜山総領事が3か月の一時帰国を経て、帰任することになりました。慰安婦問題をこじらせる韓国側への対抗措置のつもりでした。何をしでかすか分からない北朝鮮の動きを見ていますと、北対策が最重要、最優先の外交課題です。今朝の新聞には、早速「少女像撤去を要請へ」とあります。慰安婦像の撤去は二の次、三の次の扱いでいいのです。

誤解のないように申し上げますと、201512月の慰安婦問題に関する日韓合意は、両国政府が懸命な交渉の結果、たどり着いた努力の結果であり、「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」との理解です。それなのに両国関係をこじらせているのは、韓国国民の反日感情、毅然とした措置をとらない韓国政府の側に責任があります。

ソウルの大使館前の慰安婦像の撤去について、「適切に解決される」という理解だったのに、そういう進展はありませんでした。それどころか釜山の総領事館前に新たな慰安婦像が設置され、それに抗議して駐韓日本大使の一時帰国という措置にでたのです。国際合意の重みをなんとも感じない国民感情、優柔不断な韓国政府には困り果てます。

対韓政策の優先順位を決めよう

ではどうしたらよいのか。残念ながら、慰安婦像、少女像の撤去は、対韓外交政策における優先順位を下げることです。撤去の要求はそのままにしておき、「慰安婦像を撤去しなければ、日本は一歩も退かないぞ」、という強硬姿勢はしばらく控えるのがいいのではないでしょうか。

日韓関係のトゲとして、慰安婦像問題がシンボル化しています。シンボルを巡って不毛の対立を続けています。そうさせたのは韓国側にあるにせよ、日本側の論調も、厳しい韓国批判が目立ち、それが韓国側に跳ね返って、国民感情がさらにこじれるということの繰り返しです。5月の大統領選挙では「共に民主党」の文在寅氏が優勢で、強硬な反日派、北朝鮮寄り(親北)とされます。日韓合意については、交渉を促していくと、訴えています。両国関係がこじれる可能性があります。

アジアに日本、韓国の二国しかなければ、日韓両国がずっとにらみ合っていても、構いません。北朝鮮の金正恩政権が暗殺や処刑、粛清を繰り返し、核ミサイルの開発・実験にまい進しています。とても正気とは思えない人物ですから、脅しだけのつもりで核ミサイルを開発していると、考えるのは甘いでしょう。いつ、どこで暴走するか分からない国です。暴発したら、最大の標的、被害者は恐らく日本でしょう。にらみ合うべきは日韓ではなく、北朝鮮に対してです。

批判ばかりでなく建設的な議論を文氏が大統領になって、日韓合意が無効、再交渉という態度をとってきたらどうしますかね。たった2年前の国際合意を白紙にしようなんて無茶な話です。日本国内では「そんような要求に応じられない。はねつけるべきだ」という主張も高まるでしょう。日本も相手が韓国となると高飛車になり、「ひどい国で、日韓関係をまとめて行こうなんていう気持ちはない」との指摘が多く登場することでしょう。そんな分かり切った話はこれくらいにして、「どうしたら北朝鮮対策を協力して推進できるか」という議論をもっと聞きたいですね。

日米韓が北朝鮮対策を念頭においた協力の枠組みを構築し、韓国の反日感情が突出しないよう抑え込む。韓国だって経済不振、財閥の弊害除去など、経済面でやるべきことは多く、日本が協力する余地はあります。「健全な日韓関係の構築がいかに無理か」、「韓国はいかにだめな国か」という議論から卒業したいですね。

アゴラ からの引用記事

 


自衛隊も反対したPAC3導入(絶対数が足りない)

2017-04-07 16:16:13 | 戦争


自民党政務調査会は、北朝鮮が進める核実験とミサイル開発を「深刻な脅威」として、弾道ミサイル迎撃のための新規ミサイルの導入と敵基地反撃能力の保有を提言にまとめ、安倍晋三首相に提出した。

自衛隊のミサイル防衛(MD)システムを充実させ、同時に攻撃力も持てとの主張はもっともらしくみえるが、「力には力」で対抗する論理はつねに相手を上回る防御力と反撃力を持つ必要があり、現実的ではない。

日本のMDシステムは、開発した米国が勧める通りに導入した。飛来する弾道ミサイルをイージス護衛艦から発射する艦対空ミサイル「SM3」で迎撃し、討ち漏らしたら地上配備の地対空ミサイル「PAC3」で対処する。

北朝鮮の弾道ミサイル迎撃を想定すると、イージス護衛艦「こんごう型」4隻のうち、2隻を日本海に配備する。搭載するSM3は1隻あたり8発とされ、1発の弾道ミサイルに対し、万全を期すために2発のSM3を発射する場合、対処可能な弾道ミサイルは8発程度となる。

では、北朝鮮は弾道ミサイルを何発持っているだろうか。2013年5月、米国防総省が発表した「朝鮮民主主義人民共和国の軍事および安全保障の進展に関する報告」によると、日本まで届く弾道ミサイルは「スカッドC」(九州北部、中国地方)、「スカッドER」(本州全域)、「ノドン」(日本全域)の三種類あり、合計250基以上の発射器を保有するとしている。


一斉に発射されれば、イージス護衛艦ではたちまち対処不能となり、PAC3が「最後の砦」となる。

だが、自衛隊はPAC3を32基を保有するにすぎない。2基1セットで活用するので防御地点は16ヵ所に限定される。防衛省は首都防衛に6基使うため、PAC3で防御できるのは残り13ヵ所。しかも1ヵ所あたりの防御範囲は直径約50キロと狭い。

米軍が沖縄県の在日米軍基地を防衛するため嘉手納基地にPAC3を24基配備しているのと比べ、日本列島全体を32基で守ろうというのは破れ傘、いや骨だけの傘で雨をしのごうというのに等しい。これが日本のMDの現実である。

軍事的合理性や費用対効果の面から当初、自衛隊の制服組はMD導入に反対した。これに対し、2002年当時の守屋武昌防衛事務次官は「米国はMD開発に10兆円かけた。同盟国として支えるのは当然だ」と主張して導入の旗を振り、「防衛庁の守護神」といわれた山崎拓元防衛庁長官が後押しする形でMD導入は翌03年に閣議決定された。きっかけは対米追従だったのだ。

導入が決まると「MDシステムは相手に弾道ミサイル攻撃を思いとどまらせる拒否的抑止の効果がある」など後付けの理屈が考案されたが、「効果がある」のは意図を汲んでくれる相手でなければならない。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長はそんな人物だろうか。

現代ビジネスからの引用記事


北に複数撃たれると日本の防衛網は完全に突破される

2017-04-07 14:33:19 | 戦争



挑発的な態度を続ける北朝鮮。アメリカによる武力行使の可能性が囁かれている。

今月、ウォール・ストリート・ジャーナルが「トランプ政権は北朝鮮による核兵器の脅威に対応するため、武力行使を検討している」と報じた。

これを裏付けるかのように、トランプ政権に太いパイプを持つ共和党の外交安保アドバイザーでクレーニッグ・ジョージタウン大学准教授が

「検討中のオプションは北朝鮮の核開発計画すべてを除去するものではなく、恐らくミサイル発射実験を防ぎ、新たなデータ収集を防ぐための限定的な空爆だ」とコメント。

核やミサイル開発を遅らせることを目的とした関連施設への空爆が検討されていると指摘、さらに日本と韓国の米軍基地への将来的な核兵器配備についても話し合う可能性があるとした。 

アメリカ在住のコラムニスト町山智浩氏は、現地報道について「ウォール・ストリート・ジャーナルの報道があって、本当にそういった可能性があるのかな、という論調になってきている」と話す。

「ただ、ティラーソン国務長官は石油会社エクソンモービルのCEOであって、軍事・外交はもちろん、戦争経験がない。だからそんなに早く攻撃することは

できないのではないか。政権自体がそういう集団。また、トランプ自身がアジアの軍事に関わらないと言って票を集めたので、想定外のことが起こっている」

と指摘、「大陸間弾道ミサイルはまだ開発されていないという事実もあるので、アメリカはまだ本当には焦っていない」と、早急な軍事的行動の可能性は低いとの見方を示した。

北朝鮮の開発しているミサイルは大きく5種類。最も射程距離が長いのが「テポドン2」で、約10000kmと言われている。アメリカ本土の都市、サンフランシスコやデンバーまで届く計算だ。

北朝鮮が今月6日に発射したミサイルはスカッドER。そのうち1発はこれまでのミサイルで最も日本に近い能登半島から北に約200キロメートルの日本海上に落下した。

ミサイルの射程距離は約1000キロメートルにも及ぶとされ、長崎県の佐世保米軍基地や山口県の岩国米軍基地もその中に収まっている。

朝鮮人民軍は弾道ミサイルについて「米韓合同軍事演習に対処した訓練」だとした上で、「在日アメリカ軍基地を打撃目標」にして行ったものと強調、

発射訓練は主権国家の自衛的権利と主張。国連安保理などの非難に対しても「盗っ人猛々しい奇怪な醜態」などと激しく反発している。

軍事評論家の田岡俊次氏は北朝鮮の現実的な脅威について「去年くらいからは実戦配備についたと見ている。今まではテストだった。1発ずつ撃つのはテストだが、

複数撃つのはテストではない。米韓合同軍事演習に対して、こちらもやるぞという姿勢を見せたのでしょう。ただ、北朝鮮の一般的な軍事力は全然ダメ。

25年くらい武器は新しいものを買っていない。だからこそ核に頼らざるをえない」と話す。

「ただ、命中の精度はまだあまり良くない。ノドンの場合は、1300km飛んで、3000メートルくらいの誤差がある。だから核を使わないことには、ほとんど意味がない」

とする一方、「ノドンはミサイルを直立させてから燃料を入れるので、発射準備に1時間くらいかかる。

だから事前に攻撃もできるかもしれないが、ムスダンになると燃料を入れたまま待機でき、発射準備の時間は10分くらい。固体燃料のミサイルも研究していて、

これはボタンを押したらすぐに発射できる。発射準備に時間がかからないため実用性がどんどん増してきた」とも指摘。

 

日本は北朝鮮のミサイル迎撃ができるのだろうか。「演習では命中率75パーセント。ただしこれは発射する場所も、落下する場所も分かっている場合。

加速度なども分かっていて、事前にデータを入力しておいて"当たりました"というけれど、それは野球で言えばノックを捕っているようなもの。現実となると難しい」

と指摘。今回の発射の際も、日本の船に警報が出たのは発射の13分後で、落ちてから警報が出るような状態だったのだという。

「ミサイル防衛には今まで1兆8千億円くらい使ったけれども、どれほど役に立つのか極めて疑問。1発だけならまだしもだが、複数撃たれると完全に防衛網を突破される」

アメリカによる北朝鮮攻撃の可能性をどう見ているのだろうか。「過去に北朝鮮の核開発関連施設への攻撃を検討した際に在韓米軍が試算したところ、

米軍の死傷者5万2千人、韓国軍の死傷者49万人、民間人の死傷者100万人が出ることが分かったという。そのため、アメリカによる攻撃が実際に起こる可能性は低いが、

アメリカが攻撃した場合、北朝鮮は核を使った反撃もあり得る」と、すぐに軍事的な衝突が起こる可能性については低いとの見方を示した。

「ただ、北朝鮮には抑止が効かない。抑止というのは、相手が冷静で合理的な判断をすることを前提にしている。ところが相手が何をするか分からない、自暴自棄になっている場合は意味がない」とも話した。

Abema TIMESからの引用記事


トランプ外交の方針転換は「正常化」の兆しなのか

2017-04-07 12:56:35 | 戦争



シリア・アサド政権の化学兵器使用疑惑をめぐって、トランプ政権が外交方針を180度転換。しかしこれまで異例だった外交方針が「正常化」に向かう兆候と考えれば、納得はいく

今週4日から5日にかけて、「シリア内戦でアサド政府軍が化学兵器を使用か」というニュースが世界を駆け巡りました。5日朝には、例えば三大ネットワークの一つであるNBCテレビでは、中東特派員として長年シリア内戦を取材してきたリチャード・エンゲル記者が、「サリン攻撃の被害者とみられる人々を治療する様子」の動画を紹介しながら、事態の深刻さを解説していました。

これに関してトランプ大統領は、「オバマの弱腰な姿勢がこうした事態を招いた」という意味不明なツイートをしていました。意味不明というのは、つい先週、トランプ政権は「アサド政権のシリアには政権交代を求めない」という「新方針」を発表したばかりだったからです。

一方で、今週3日にロシアのサンクトペテルブルグで発生した地下鉄テロ事件に関しても、トランプ大統領は丁重なメッセージをプーチン大統領に対して送り、状況としては「トランプ=プーチン=アサド」という連携体制が強化されたような印象を与えています。

シリアの子供たちは、何度化学兵器で殺されるのか、この流れは、トランプ大統領自身が昨年の選挙戦を通じて主張してきた方針に沿っているものです。選挙戦の中では何度も、「シリアはアサドとプーチンに任せる」という発言が繰り返されました。

 

それが「この政権の外交方針」だということが、賛成・反対の立場は別として、アメリカの政界やメディアの共通理解となっていました。

そこへ今回の「オバマの弱腰が招いた事態」発言が出てきたわけです。つまり自分はアサド政権を支持しておきながら、オバマ前大統領には「アサド政権を攻撃するべきだった」という非難をしているのですから、これでは激しい自己矛盾というか、意味不明としか言いようがないのです。

5日になると、その意味合いが段々と明らかになってきました。トランプ政権は、シリアのアサド政権への非難を開始したのです。これは、一見すると「矛盾の上に矛盾を重ねる」行動に見えます。確かに、「アサド政権を認める」という前週のコメント、そして「悪いのはオバマの弱腰」という発言、そして「アサド政権への非難」という格好で、短期間に発言がクルクル変わったのは事実で、一連の発言はお互いに矛盾しています。

ですが、これを「発言が矛盾している」のではなく、短期間に政権の方針が急速に転換していると考えれば、辻褄は合います。選挙戦から一貫していた、「シリアはアサド政権とプーチンに任せる」という方針を捨て、「アサド政権の退陣を求める」方向、つまり米外交をオバマの路線に戻すということです。

その理由として一つ考えられるのは、3月を通じて「トランプ陣営のロシアとの癒着疑惑」をずっとスッキリしないまま引きずってきたという問題があります。特に、この疑惑によって辞任に追い込まれたマイケル・フリン前安保担当補佐官が「一切の訴追を逃れるという条件(訴追免除=イミュニティ)なら議会証言をしても良い」とコメントした際には、「やはり不法行為があったのか!」という衝撃が走り、政権の支持率低下の原因になりました。

ですから、今回特に問題となっているシリア情勢に関して「アサド=プーチン」に距離を置くという方針転換をすれば、「政権がロシアと癒着している」とか「大統領はプーチンに弱みを握られている」といった疑惑をかわすことができるという思惑です。

さらに、この動きに重なるように5日にはNSC(国家安全保障会議)のメンバーから、スティーブン・バノン分析官が「外された」という報道がありました。いわゆる「オルタナ右翼」の代表として、保守本流から危険視されていたバノン氏がNSCの常任メンバーに入っていたのは、そもそも異例の処遇だったわけですし、与野党からかなり批判を浴びていたのですが、結果的にメンバーから外れることになりました。

対テロ軍事作戦に積極的なトランプが抱える血のリスク、こうした動きを全体的に捉えるのであれば、トランプ政権の外交路線が「極端な方向」に向かうことは阻止されて、「正常化」に向かう兆候だという見方が一番スッキリします。例えばNATOへの防衛責任を見直すといった「極端な路線」は消えたと見るべきなのでしょう。

 

一部には、マティス国防長官とマクマスター安保補佐官が強く主張して、このような方針変更に至ったという報道もあります。

今回の急激な変化は、今週6日から始まるフロリダでの米中首脳会談の前に体制を整えたという見方もできます。そうであれば、同時に、切迫した北朝鮮の核危機への対処に関しても、「トランプの自己流軍事外交」ではなく、国務省と軍・諜報機関が一体となった「常識的な対応」が取られるという期待はできます。

 

ニューズウィークからの引用記事

 


米国が同盟諸国に国防費増額を要求し始めた

2017-04-07 11:35:06 | 政治


トランプ政権は、ティラーソン国務長官とマティス国防長官を指名して連邦議会で承認されて以降、安全保障関係の高官人事が足踏みをしている。

3週間ほどで辞任を余儀なくされたマイケル・フリン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の後任は、ハーバート・マクマスター陸軍中将に決定した。

だが、マティス国防長官を直接補佐するペンタゴンの3長官職(海軍長官、陸軍長官、空軍長官)がいまだに連邦議会の承認を得ていない状態が続いている。

とはいっても、安全保障環境はアメリカ軍部高官人事などとはお構いなしに厳しさを増している。先週もマティス国防長官、ティラーソン国務長官がNATO(北大西洋条約機構)諸国を訪問し、同盟関係の問題点に関する本格的な調整を開始した。

両長官、それにマクマスター補佐官などの経歴からは当然の帰結であったが、アメリカの国防政策の関心は対IS戦が最優先である。これまでは、次にロシアのウクライナをはじめとする東ヨーロッパへの侵攻態勢強化に対する警戒、そしてイランの対米姿勢という順であった。

ところがここに来て、金正恩政権によるICBM開発の動きがアメリカにとっても完全に警戒レベルに達した。そのため、イランよりも北朝鮮に対する警戒の優先度が繰り上がったことが、マティス長官のNATO諸国での言動で明らかにされた。

ただし、アメリカ国防当局の関心の78割が、すでにNATO諸国と共同歩調をとりつつ関与しているISを中心とする中東問題と、ロシアと東ヨーロッパの国境地帯の防衛問題で占められていることは変わらない。

 

そこでアメリカ国防当局がまず着手したのは、NATO同盟諸国に対する国防費増額要求である。

先週の金曜日、ブリュッセルでのNATO諸国外務首脳会合で、ティラーソン国務長官は「NATO諸国は国防費を増額しなければならない」ことを強く要請した。

トランプ政権は選挙期間中に、NATO諸国の国防予算の低さを繰り返し指摘してきた。政権発足後もトランプ大統領はじめ国防長官、国務長官がNATO諸国の防衛費支出についてしばしば口にしている。

今回はNATOの会合で、公式に国防費増額を要請したことになった。なお、トランプ政権は大統領選挙期間中の公約通りに国防費増額に踏み切っている。

そもそも選挙期間中にトランプ陣営が引き合いに出していたのは、「アメリカ以外のNATO諸国の国防費の総額は、アメリカ一国の国防費の半分にも満たない。さらに言うとNATO諸国のおよそ半数の国々の国防費は、ニューヨーク市警察の予算規模より小さい」という事実であった。

ただし、国防費の額そのものについては、経済規模や内政事情、それにそれぞれの国を取り巻く戦略環境などの諸要因がある。そのため、集団安全保障を義務づけているNATO同盟といえども、標準国防費といった類いのガイドラインを一律に設けるわけにはいかない。

しかし、「国防努力の目安」として国際的な指標として用いられている「国防費のGDP比」は、NATOでは一応のガイドラインが設定してある。すなわち「GDP2」というのがNATO諸国間の努力目標とされている。

ところが、この数値を達成しているのは2016年の推計値で、アメリカ(3.61%)、ギリシャ(2.36%)、エストニア(2.18%)、イギリス(2.17%)、ポーランド(2.01%)の5カ国に過ぎず、22カ国はガイドライン値に達していない。それどころか19カ国の国防費GDP比は1.5%以下と話にならないレベルである。

また、もう1つのガイドラインである「装備購入費の国防費全体に占める割合」の目標値「20%」に関しても、半数以上の加盟国が達成していない。10カ国が目標値を達成しているが、ドイツやカナダやオランダを含む17カ国が下回っている状態だ。

以上の「国防費のGDP比」「装備購入費の国防費全体に占める割合」という2つのガイドラインを共にクリアしているのは、アメリカ、イギリス、そしてポーランドの3カ国だけである。

それゆえにトランプ政権は「ほとんどのNATO諸国が同盟の義務を真剣に果たそうとせずにアメリカの軍事力にただ乗りしようとしている」と批判を強めているのだ。そして、「すべてのNATO加盟国は少なくともこれらのガイドライン値を達成すべく直ちに努力を開始するべきである」との要求を突きつけ始めた。

NATO諸国に対して国防費増額を迫ったティラーソン国務長官もマティス国防長官も、日本を訪問した際には国防費増額を要求しなかった。

それは、北朝鮮問題が浮上してきているとはいえ、トランプ政権による国防政策の優先順位はいまだにNATO方面が圧倒的に高いからである。

アメリカの軍事政策が北朝鮮と中国に目を向けるようになるのは、IS壊滅戦がおおかた収束し、ロシアによる東ヨーロッパへの侵攻姿勢に対するNATOの防御態勢がある程度確立したとき、あるいは対IS戦におけるロシアとの協調関係を通してロシアとの妥協が成立したときであろう。

その時点になったら、日本をはじめとするアジア太平洋の同盟諸国の防衛努力について、当然、現在のNATOへの要求と同じ防衛費増額要求を突きつけてくるはずである。

先日、安倍総理がトランプ大統領と会談した際にも、アメリカ側は日本の国防費増額要求や沖縄問題などには触れてこなかった。そして、「尖閣諸島は安保第5条の適応範囲内である」と明言した。

日本側は「安全保障に関しては満額回答だ」などと喜んでいるが、やがてNATO諸国に対してと同じ要求がなされるのは理の当然だ。

もっとも、日本はアメリカ以上に北朝鮮の軍事的脅威を直接受けているし、中国の強力な海洋戦力による脅威もまともに被っている。

したがってアメリカが国防費増額要求を突きつけてくる以前に、日本自身によって国防費を大幅に増額し、防衛戦力を大増強するのは当たり前の流れである。

日本政府がいまだそのような政策に転じず、雀の涙ほどの国防費増加(1.4%)であたかも防衛力増強努力をしているかのごとく考えているのは、国際社会から見れば噴飯物に近い。

NATO諸国に日本を加えていくつかの指標をグラフ化してみると、日本は「国防努力の目安」であるGDP比がいかに低いかが一目瞭然である。いくら日本が今後10年間にわたって現在の規模(年率1.4%)で国防費を増加させたとしても、6兆円規模に達するか達さないかの程度であり、話にならない規模であるのには変わりはない。

現在の国防費増額は、国際常識からみれば「増額しているかしていないか分からない」にしか映らない。もちろん国防力は国防予算だけで判断できるものではないが、金をかけずに強力な防衛戦力を身につけることは夢物語である。

日本政府はそのことを肝に銘じ、アメリカなどからの外圧がかかる以前に自主的な判断で、日本にとり適正な規模の国防費を打ち出すべきである。

JBpressからの引用記事

 


金正恩政権「転覆計画」極秘来日していたアメリカ高官

2017-04-07 09:14:31 | 政治


「残念のひと言です。北朝鮮のことを、あれほど率直に語ってくれる人はいませんでした。それが、こんなことになるなんて……」


 沈痛な面持ちで語るのは、かつて金正男(享年45)に7時間インタビューし、計150通もメールをやりとりした「金正男の友人」五味洋治東京新聞編集委員である。


 「彼が5年前から暗殺対象になっていたという報道もありましたが、北朝鮮にとって脅威ではなかったはずで、金正恩は自己の政権に相当強い危機感を抱いているからこそ、過激な行動に走ったのでしょう。


 しかしこのような暴挙によって、北朝鮮情勢は、ますます不安定になっていくはずです」

 

2月13日朝、マレーシアのクアラルンプール空港のチケット・カウンターに並んでいた金正男が暗殺された。故・金正日総書記の長男で、金正恩委員長(33歳)の異母兄である。2人の若い女性が、金正男に突然近づき、毒物を浸した布で顔を覆い、毒殺したのだった。金正男は近くの病院に搬送される途中で死亡した。

 

まさに世界が驚愕した暗殺劇。金正恩委員長は、なぜ血のつながった異母兄を、かくも残忍な手段で葬り去ってしまったのか――。

 

話はいまから2ヵ月ほど前、トランプ政権誕生を控えた昨年12月17日に遡る。この日、アメリカ国務省でアジア地域を担当するダニエル・ラッセル東アジア太平洋担当国務次官補が、ひっそりと来日した。

 

現在63歳のラッセル次官補は、アメリカの東アジア外交のキーパーソンである。日本と韓国のアメリカ大使館での勤務が長く、'93年から'94年にかけてアメリカが北朝鮮を空爆する一歩手前まで行った核危機の際には、現場責任者だった。

 

オバマ政権では国家安全保障会議(NSC)のアジア上級部長を務め、一貫して北朝鮮を担当してきた。

 

トランプ政権が始動するや、ケリー国務長官以下、国務省の幹部は軒並み去っていったが、ラッセル次官補だけは留任している。


実はラッセル次官補が来日した目的は、翌月のトランプ政権発足を前に、今後のアメリカの対北朝鮮政策について、日本政府に説明するためだった。ラッセル次官補は、日本政府の高官たちを前に、まずは直近の韓国政界の話題から入った。


「いま起こっている朴槿恵大統領のスキャンダルは、ワシントンとして、もうこれ以上、我慢ならなかった。だから、いろいろと後押しした。


朴槿恵大統領の長年の友人で逮捕された崔順実は、北朝鮮出身者の娘だ。彼女は密かに北朝鮮と通じていた。このままでは、韓国が国家的な危機に陥るところだったのだ……」


日本政府にしてみれば、韓国政界の混乱に北朝鮮が「関与」していたというのは、初めて耳にする話だった。


ラッセル次官補は、本題の北朝鮮問題に入るや、さらに語気を強めた。「トランプ政権になっても、オバマ政権時代の対北朝鮮政策は引き継がれる。いや、さらに一歩踏み込んだ政策を取ると、日本には覚悟してもらいたい。


周知のように、ワシントンがいくらプレッシャーをかけても、金正恩政権は、核及びミサイル開発をストップしない。それどころか、今年は核実験を2回、ミサイル実験を23回も強行した。その結果、北朝鮮の軍事能力は、もはやワシントンが看過できないレベルまで達してしまった。


それに対して、北朝鮮の抑止力になるべき韓国は、経済力でははるかに北朝鮮を上回っているのに、まるで抑止力になっていない。それどころか政治的混乱が当分の間、続くだろう」


日本側は、ラッセル次官補の言葉を、じっと聞き入っていたそんな中、ラッセル次官補は、核心の問題に言及した。「ワシントンとしては、近未来の北朝鮮を、アメリカ、中国、ロシアの3ヵ国による信託統治にしようと考えている。


このままでは近い将来、必ずや金正恩が暴発するだろう。そのため金正恩が暴発する前に、こちらから行動に出なければならないのだ」


週刊現代からの引用記事


韓国の内紛は日本にとっても対岸の火事ではなくなってきた

2017-04-07 07:07:51 | 政治


朴槿恵氏は韓国史上初の罷免された大統領となり、3月31日未明に友人による国政介入疑惑によって逮捕された。

大統領をめぐるスキャンダルは韓国では珍しくないし、韓国の歴史を遡れば、軍事クーデターはこれまでにも政権転覆の“武器”となってきた。

1960年、李承晩大統領が大統領選において再選のために露骨な不正選挙を行なったことに国民が反発、学生や市民がデモを起こした。

李承晩政権は暴力での鎮圧を図るも、それに対する怒りが全国に広がり、李承晩氏は大統領職を退いた。

その後、選挙で新政権が誕生したが、翌1961年には朴正煕氏率いる軍部勢力が、社会の無秩序と混乱を口実にクーデターを起こして政権を奪取した。

「5.16クーデター」と呼ばれるもので、朴正煕氏は軍政を実施した後、正式に大統領の座に就いた。朴正煕大統領はその後、16年間にもわたって権勢を振るうが、1979年に暗殺されたことで再び混乱が起きる。

当時、大統領権限代行だった崔圭夏氏が大統領の座に就くも、軍部勢力がクーデターを敢行し政権を掌握。

その際、クーデターに抗議した学生デモを鎮圧するため軍を投入し、1000人以上もの死者が出た(光州事件)。

この後、軍部勢力から大統領に選ばれたのが全斗煥大統領だった。皮肉なことに、朴正煕政権をめぐる経緯は、彼の娘である朴槿恵氏のスキャンダルに端を発する今の状況に似ている。

韓国に詳しい評論家の室谷克実氏は指摘する。2度の軍事クーデターは、どちらもその始まりに国民のデモがありました。

実態としては、過去のデモは暴動に近いようなもので、それと比べると、今回の朴槿恵に対するデモは、韓国史上初めての統制が取れたデモらしいデモでした。
 
ただし、その統制には親北勢力の介入があった。親北の色合いの強いデモで朴槿恵政権は倒れ、その流れがあるからこそ文在寅氏が大統領になろうとする状況になっているわけです。

文氏には、盧武鉉政権当時、北朝鮮への国連非難決議の賛否について大統領秘書官だった文氏が北朝鮮の意向を聞き、その結果として棄権したのではないかという『おうかがい疑惑』がある。

こうした状況で、文大統領が親北朝鮮の政策を打ち出した場合、軍部が、『国家保安法違反である』との名目でクーデターを起こすことは十分考えられます。

また、軍の保安司令部(現・機務司令部)が文氏と北朝鮮とのつながりを捜査し、その証拠が出てきた場合、軍部が動きを取るという可能性もある。

今の韓国はそれほど不安定な状況なのです 当然、その際には相次ぐミサイル発射で周辺国を牽制する金正恩も何らかの動きを起こすだろう。

韓国の政情不安は東アジア全体の混乱を招く。日本にとっても、いよいよ対岸の火事では済ませられなくなってきた。

週刊ポストからの引用記事

トランプ政権の「先制攻撃」はソウルで100万人が死ぬ

2017-04-07 05:02:22 | 戦争


北朝鮮の暴走が止まらない。過去最大規模の米韓合同軍事演習に反発し、北朝鮮が6日朝、ミサイル発射を強行した。北朝鮮は、昨年の米韓合同軍事演習の際も対抗措置として、新型中距離弾道ミサイル「ムスダン」を発射するなどしている。今回も同じような挑発行為に出た格好だ。

 

ただ、今年は様相が違う点がある。今年の場合は、北朝鮮だけが強硬姿勢に傾いているわけではなく、米政権も強硬姿勢をみせている。国連制裁を無視し、核・ミサイル開発を続ける平壌に対し、直接対話の可能性は排除してはいないものの、米国は軍事オプションをちらつかせ、このところ、ぐっと北への圧力を強めている。

 

しかし、こうした米国の強硬姿勢は、核の非核化や開発凍結に向けた譲歩を引き出すための、一種のブラフ(脅し)に過ぎない。実際の軍事力行使はさまざまな理由から事実上、不可能だ。

 

米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、トランプ政権は、北朝鮮の核ミサイル開発をほとんど放置してきたオバマ前政権の「戦略的忍耐」の方針を見直し、北朝鮮への軍事攻撃や体制転換を含めた「あらゆる選択肢」を検討しているようだ。特に、北朝鮮が米本土への攻撃が可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に踏み切ろうとした場合、北朝鮮を先制攻撃する軍事オプションも含んでいるという。

 

この意味で、発射されたミサイルが仮にICBMであったならば、それが北朝鮮に対して、米国が定めた「レッドライン」(越えてはならない一線)となった可能性があり、トランプ政権は金正恩朝鮮労働党委員長に早速、軍事オプションの本気度を試される一大事となるところだった。金正恩氏が1月にICBMをいつでも発射できると主張した際、トランプ大統領はツイッターで「そうはさせない」と述べていたからだ。

 

米韓両軍は、朝鮮半島有事を想定した毎年恒例の合同軍事演習を開始した。演習は約2カ月間続き、今年の訓練の参加人数は、過去最大規模で実施した昨年の米韓両軍計31万7000人を上回るとみられている。

 

2016年の米韓合同軍事演習では金正恩氏ら要人を狙った「斬首作戦」と称する訓練を実施し、北朝鮮は強く反発した。今年も斬首作戦の訓練をはじめ、北朝鮮国内の核やミサイルの施設を攻撃する訓練が行われる見通しだ。韓米両軍は今年2月中旬には既に、ソウル北方の京畿道抱川市で北朝鮮の大量破壊兵器(WMD)関連施設を探索・破壊する過去最大規模の演習も実施している。

 

北朝鮮への軍事力の行使に慎重だったオバマ前政権と違い、トランプ政権は、このように米国の強大な軍事力を背景に、北朝鮮への先制攻撃をちらつかせ、金正恩体制に圧力をかける戦術に乗り出している。

 

確かに、米国が軍事攻撃の覚悟を示さないと、北朝鮮は譲歩しないという過去の教訓もある。1990年代の「第1次核危機」の際、クリントン大統領が核施設攻撃を決意した段階で、北朝鮮は核放棄に応じた。しかし、その危機が去ると、北朝鮮は核開発を再開した。

 

また、ブッシュ大統領が「悪の枢軸」と非難し、イラク攻撃に乗り出すと、北朝鮮は6カ国協議に応じた。平壌は軍事攻撃の危機やレジームチェンジの危機に直面しないと、譲歩しない歴史がある。

 

クリントン政権期の第1次核危機と、2000年代のブッシュ政権期の「第2次核危機」のように、米国は今回も軍事オプションを検討している。しかし結局、先制攻撃をした際の韓国や日本の被害リスクが大きすぎる。今回も実行には移せない可能性がかなり高いのではないか。

 

北朝鮮の金正恩氏は過去の経験から、たとえ第3次核危機が起きても、北に対する武力行使や政権転覆などの米国の強硬姿勢は、単なる脅しであると判断する可能性が高い。トランプ大統領も、やりたい放題の北朝鮮の金正恩氏を放置せずに、米国民向けに強い指導者としてのイメージを広めるジェスチャーに利用するだけかもしれない。

なぜ米国は北朝鮮への軍事攻撃が難しいのか。一番の理由として、ソウルは、南北の軍事境界線から40キロしか離れてない一方、平壌は150キロほど離れている。このため、北朝鮮は戦略上有利にソウルを「人質」にとっていることがある。

 

2016年版防衛白書によると、北朝鮮の地上軍は、約102万人を擁し、兵力の約3分の2を非武装地帯(DMZ)付近に展開していると考えられている。戦車3500両以上を含む機甲戦力と火砲を有し、口径240ミリと300ミリの多連装ロケット砲(MRL)や170ミリ自走砲といった600門を超える長射程火砲をDMZ沿いに集中配備する。これらを撃てば、韓国総人口の約半分の2500万人を占める首都ソウル一帯に着弾できる戦略的な強さを有している。

 

米国による北朝鮮への先制攻撃がもたらすリスクについて、盧武鉉政権時に大統領府外交安保首席秘書官を務めた韓国国防研究院のソ・ジュソク責任研究委員は5日、慶應義塾大学で行われた朝鮮半島の安全保障政策に関するシンポジウムで次のように語った。

 

「北朝鮮の核ミサイル攻撃が差し迫って先制的に攻撃をするpreemptive attackであれ、(最近米国で議論されているような)北朝鮮の核能力がさらに高度化される前に、予防的に核攻撃施設を攻撃するpreventive attackであれ、北朝鮮は自らの安全保障体制への攻撃であるので、非常に強硬な反応を見せる」。続けて「米韓の攻撃能力がいかに優れているとしても、北朝鮮の核能力をすべて破壊することはできない。北は当然、核を動員した反撃をする。

同時に、長射程砲など北朝鮮が持っているさまざまな攻撃手段を活用した対韓国、対米国攻撃に入る」と述べた。

 

そして、「(2010年に南北で砲撃事件があった)延坪島やソウルなどを含めた広範囲な場所に対する反撃につながると思われる。94年のクリントン政権時には、米国が北朝鮮の核施設を対象にサージカルアタック(局部攻撃)をしたら、10万人以上の米国人と100万人以上の韓国人が死亡するとの計算があった。

 

おそらく今は北朝鮮の攻撃能力が上がっているので、被害はもっと大きくなる。韓国のいかなる指導者も先制攻撃があってもいいと考えている人は一人もいない」と述べ、米国による先制攻撃のリスクに強い懸念を表明した。

また、米国による北朝鮮への軍事行使の可能性が低い理由として、トランプ大統領がイスラム国(IS)など「イスラム過激主義のテロ根絶」を最優先事項に掲げることがある。

 

志方俊之・帝京大名誉教授(安全保障)は筆者の取材に対し、「トランプ政権は中東問題の解決が先。マティス国防長官やマクマスター大統領補佐官らは中東の専門家で、対ISが何より優先される」と述べた。

 

また、退役海兵隊大将のマティス氏や陸軍中将を務めたマクマスター氏は戦闘部隊司令官でもあったことから、アジアで不必要な戦争や無駄な犠牲者を生じさせる考えはないとみられる。特にマクマスター氏はかつて著書「Dereliction of Duty(=職務怠慢の意)」を出版し、ベトナム戦争の泥沼化を分析し、当時の大統領や軍上層部を批判した。軍史や戦略の専門家としても知られる同氏がうかつに第2次朝鮮戦争を引き起こす北朝鮮への先制攻撃を強行するとは思えない。

 

朝鮮問題のルポで知られ、38度線を撮り続けている報道写真家の山本皓一氏は筆者の取材に対し、北朝鮮は38度線の山の斜面にはトンネルや土嚢を使って大砲や移動ミサイルを隠している」と述べ、米軍の先制攻撃で北の兵器を破壊する難しさを指摘した。

さらに、「トランプ大統領が実力行使をしたら、北朝鮮は当然、在日米軍の総司令部がある横田基地や横須賀基地をミサイルで狙うだろう」と憂慮した。

 

慶應義塾大学の西野純也教授も前述のシンポジウムで、「軍事的なオプションが今後ともテーブルの上に載せられていく状況は続くと思われるが、それは韓国だけでなく日本にも重要な意味を持つ」と指摘。「とりわけ安倍政権になって、厳しい安全保障環境の中で、日本の安全保障政策が法律を含め、大きく変わってきている。

 

もし朝鮮半島情勢に何かが起これば、日本はより深い形でかかわらざるを得ない」と話した。緊迫する半島情勢に日本も翻弄されることになりそうだ。

東洋経済からの引用記事