朝鮮半島と中国と世界の動き

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トランプ政権が南シナ海ですべきこと

2017-04-06 22:47:45 | 政治


米国のシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)東南アジアプログラムのAmy SearightディレクターとGeoffrey Hartman研究員が、同研究所ウェブサイトで、トランプ政権が南シナ海の戦略を見直すことを提言し、その際に留意すべき原則を掲げています。要旨次の通り。

南シナ海では中国に主導権を握られ、航行と上空の飛行の自由、ルールに根差した国際秩序、紛争の平和的解決という米国の利益がリスクに晒されている。従来の米国の対応は中国の行動を変えるには不十分であった。新政権は徹底的な戦略見直しを行うべきであり、その際、次の原則に留意すべきである。

米国は、抑止戦略の強化が地域的・世界的問題(北朝鮮、地球温暖化など)での米中協力を阻害するという懸念にとらわれるべきではない。他の分野での協力を保全したいばかりに南シナ海における米国の政策を変更することは不必要であり逆効果である。米中関係の緊張を怖れるべきでなく、弱さと見られることは中国のさらに強硬な振舞いを助長する。

新政権は明確で一貫性のある戦略的メッセージを出すべきである。リバランス戦略の目的に関する一貫性のない説明、航行の自由作戦と日常的な軍事的プレゼンスに関する一貫性のない説明と政策が混乱を招いた。新政権は、これらへのきちんとした説明をすべきである。中国の圧力で行動の日程を変更すべきではない。米国はこれらの行動を定期的に実施すべきである。

南シナ海における米国の政策は軍事行動に偏り過ぎであったが、外交的、広報的、経済的な対応を組み込むことも重要であろう。例えば、不安定化の策謀に関与した中国企業を制裁の対象とすることが考えられよう。

米国は中国の威圧に抵抗する同盟国とパートナー諸国の能力構築の支援を強化すべきである。東南アジア諸国の能力構築は中国の低いレベルでの威圧に対する抑止力を増し、米軍が高いレベルの緊急事態に焦点を絞ることを可能にする。このためには、米国は地域的な防衛関係を保全せねばならない。

南シナ海の地形に係る領有権紛争については如何なる立場も取らないとする一方、国際法に従って平和的解決が図られるべしとする従来の米国の立場は健全であり、維持されるべきである。この原則に基づいた立場が、米国がその利益と国際的な規範を守るために南シナ海に柔軟に介入することを可能にする一方で、米国の行動を中国の主権に対する脅威だといい立てる中国の試みを挫くことになる。

上記提言の内容は妥当なものであり、大筋において異論はありません。現在中国がやっていることは、国連憲章39条の「平和に対する脅威」と認定されておかしくないようなことです。トランプ政権が骨太の戦略を打ち出すことを期待したいものです。

航行の自由作戦は、定期的に実施する必要があります。オバマ政権時代のどことなく腰の引けた実施ぶりではなく、どういう法的効果を狙って、どういう態様で、どういう航路で実施したかを明確にすべきものと思います。海洋調査のようなもっと穏便な活動もあっていいでしょうが、水中ドローンを眼前で中国海軍に盗まれるという先般の失態は米側の弱さを見せたようなものであり、繰り返してはなりません。

領有権の紛争に中立の立場を維持することが米国の立場として健全であるという指摘に敢えてコメントすれば、南シナ海に該当するケースがあるかどうかはともかくとして、米国が関与した事案であって、法と正義に照らして判断が可能なのであれば、その判断を宣明しないのは責任ある態度とはいえないと思います。

北方四島については、米国はそれをしています。尖閣諸島についても、米国は「日本領土と考える」と宣明することが責任ある態度だと思います。もっとも、日本の施政の下にあり、安保条約5条の対象となるということで当面の目的に過不足はないのかも知れません。さらに、米韓関係が崩壊の危機に瀕することになるでしょうが、竹島についてすら、米国は日本の領土だと言い得るのではないかと思います。

ウェッジからの引用記事

 

 

 

 

 

 

 


米国は盧武鉉側近だった文在寅氏大統領就任を歓迎せず

2017-04-06 21:31:20 | 政治



最新の韓国世論調査で次期大統領候補としての支持率トップを独走する文在寅氏が5月に新大統領の地位に就いた場合、防衛の専門家が問題視しているのは「戦時作戦統制権」についてだ。

 

韓国は朝鮮半島有事が起きた際、作戦を指揮する権限を米軍に委ねることになっている。しかし文氏は、これを韓国に取り戻そうとしているからだ。さらにこの統制権委譲は、米国の虎の尾を踏むことにもなりかねない。軍事評論家の潮匡人氏が言う。

 

「米国では盧武鉉政権が反米だったという苦い記憶があり、その側近だった文在寅氏の大統領就任を歓迎していない。米国が最も懸念しているのが、戦時作戦統制権の問題です。在韓米軍へのTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備も、この統制権ありきの話。

 

在韓米軍は今も国際法上は戦争状態にある北朝鮮と対峙するために韓国に駐留しており、戦時作戦統制権がなくなれば、米軍の存在意義が問われることになる。韓国からの米軍撤退まで行きかねないほどのインパクトを持っています。

もちろんトランプ政権は昨今の北朝鮮情勢に大きな懸念を持っているため、文在寅政権ができた時のことを想定してすでに動き出している。ティラーソン国務長官の訪中など、中国との融和路線はその一環ではないでしょうか」

 

文在寅氏については、米ニューヨークタイムズ紙が、「韓国は米国にNOと言うことを覚えるべきだ」という文氏の発言を紹介し、「文氏はやはり反米なのか」と米国で物議を呼んでいる。

 

その余波は韓国国内にも及び、「文氏が米国を相手にNOと言ってはいけないことをNOと言って、北朝鮮・中国にNOと言うべきことを言わないのではないかと心配している」(朝鮮日報)といった不安の声が上がっている。

 

北朝鮮への融和姿勢についても「金正恩と対話しようとするのは、ナイフを首に突きつけている強盗に『話をしよう』と言っているようなものだ」(中央日報)などと批判が根強い。

 

だが、そうした批判をものともせず、文氏は高支持率を保っている。だからこそ韓国国内では、「文在寅大統領が誕生したらすぐ、米国を後ろ盾にした韓国軍部によるクーデターが起きる」という懸念が真顔で語られているのだ。潮氏はこう指摘する。

 

「気になる動きがあるのは確かです。大統領不在という政治的空白にもかかわらず、THAADの配備は急ピッチで進んでいる。日韓の日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)にしても、韓国の国防の現場は文在寅氏の路線とは真逆の姿勢を取っています。

 

文在寅氏はTHAADGSOMIAにしても反対の立場ですから、大統領に就任してこれをひっくり返したらどうなるのか。即クーデターという展開になるかはともかく、文氏を引きずり降ろす動きが顕在化する可能性はあると思います」

 

週刊ポストからの引用記事

 

 

 

 


北朝鮮の核開発問題、中国の助けなくても解決 トランプ米大統領

2017-04-06 20:42:36 | 政治



北朝鮮が国連安保理決議に違反して核開発を進めている問題をめぐり、ドナルド・トランプ米大統領が、中国の助けがなくても米国が解決するとの考えを示したことが明らかになった。

トランプ大統領は2日付の英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、「もし中国が北朝鮮問題を解決しないのなら、我々がする。言えるのはこれだけだ」と述べた。

米国単独で解決できるのかと、さらに質問されたトランプ大統領は、「もちろんだ」と語った。

トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は、今週6、7日に米フロリダ州パームビーチにあるトランプ氏の別荘「マール・ア・ラーゴ」で首脳会談を行う予定。

インタビューの中でトランプ大統領は、「中国は北朝鮮に対して大きな影響力を持っているが、中国は北朝鮮問題で我々を助けるか、そうしないかだろう。もし中国が手助けするなら中国にとって非常に良いことだ。もし手助けしないのなら、誰にとっても良くないことだ」と述べた。

「1対1」の単独行動を念頭に置いているのか、さらに質問されたトランプ大統領は、「これ以上言う必要はないだろう。完全に」と語った。

どんな措置を取る考えなのか、トランプ氏は明らかにしなかった。米政府の高官らは相次いで、北朝鮮の核・ミサイル開発に警告を発している。北朝鮮が米国の本土が攻撃できる長距離核ミサイルの開発に成功するのではないかとの懸念が出ている。

レックス・ティラーソン米国務長官は、先月東アジアを訪問した際、先制的な軍事攻撃も選択肢に含まれると述べた。

その1カ月前には、ジェイムズ・マティス米国防長官が核兵器のいかなる使用にも、「圧倒的な対抗措置」を取ると語っていた。

北朝鮮の唯一の同盟国である中国は今年2月、最近相次ぐ北朝鮮のミサイル実験を受け対抗措置を取っている。中国は今年2月、北朝鮮からの石炭輸入を年末まで禁止するとした。石炭の輸出は北朝鮮にとって主要な収入源となっている。

しかし、トランプ氏は習主席との会談で、対応の拡大を中国に促すとみられており、貿易問題がてこに使われる可能を示唆していた。

インタビューでトランプ氏は、「貿易がインセンティブだ。貿易が全てだ」と述べた。しかし、首脳会議では関税は取り上げないと語った。

トランプ大統領は先月末、貿易赤字の縮小に向け、現在の貿易協定や外国による協定乱用を精査する2つの大統領令に署名した。

政権幹部らは、大統領令は中国を標的としていないとしている。しかし、米国にとって最も大きな貿易赤字が出ているのは中国で、年間の貿易赤字5020億ドル(約56兆円)のうち3470億ドルが対中国となっている。

トランプ大統領はツイッターで先週、「我々はこれ以上巨額の貿易赤字を許容できない。その点で、来週の中国との会談は難しいものになるだろう」とコメントした。

トランプ氏は、貿易をめぐり中国とどのように交渉する考えなのか明らかにしていない。一方で、北朝鮮の核開発については、中国に影響力の行使を求めている。

専門家らによると中国は、北朝鮮の体制崩壊で南北朝鮮が統合され、自分たちと国境を接する国に米軍基地があるという状況を避けたいと考えている。また、北朝鮮で大量の難民が生まれ、国内に流入する可能性を心配している。

BBCニュースからの引用記事

 

 


首相に靖国参拝を説得した、昭恵婦人

2017-04-06 18:28:40 | 政治



ある神道関係のシンポジウムに呼ばれて、パネラーとして出席した。そのとき、同席した別のパネラーから興味深い話を聞くことになったのだ。そこには、昨今、さまざまな形で物議を醸している安倍首相の妻、「昭恵夫人」がからんでいた。

 

安倍首相は、右派的な保守勢力から篤い支持を得ており、就任1年目での靖国神社参拝はそうした人々の要望を満たす意味合いを持っていた。

ところが、中国や韓国からだけではなく、アメリカからもクレームがついた。アメリカ政府は在日米国大使館のウェブサイトに「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに失望している」との声明を掲載した。

 

その結果と考えていいだろうが、これ以降、安倍首相は靖国神社には参拝していない。例大祭のときに真榊を奉納するだけである。

実は、安倍首相が靖国神社に参拝したとき、境内にある別の神社を訪れていた。それが、「鎮霊社」である。

 

鎮霊社という名称を聞いても、多くの人はその存在さえ認識していないだろう。そもそも鎮霊社は目立たない場所にある。拝殿の手前にある中門鳥居の前を向かって左側に進み、南門の前で右に曲がると、その奥、本殿と並ぶ位置に鎮霊社はある。

 

この鎮霊社の創建は戦後の1965年のことで、靖国神社の側の説明では、「戦争や事変で亡くなられ、靖国神社に合祀されない国内、及び諸外国の人々を慰霊するために」建てられたものだとされている。

 

靖国神社に祀られているのは、軍人や軍属が中心で、沖縄戦や空襲で亡くなった一般の国民は祀られていない。また、明治維新前後に賊軍とされた人間のなかにも、未だ祀られていない者がある。

 

まして、海外の戦争犠牲者ともなれば、まったく祀られていない。鎮霊社は、そうした枠を超え、あらゆる戦争で亡くなった人々の霊を慰めるために建てられたものだというのである。

 

安倍首相は、靖国神社に参拝した際に談話を発表している。それは、「本日、靖国神社に参拝し、国のために戦い、尊い命を犠牲にされた御英霊に対して、哀悼の誠を捧げるとともに、尊崇の念を表し、御霊安らかなれとご冥福をお祈りしました。

 

また、戦争で亡くなられ、靖国神社に合祀されない国内、及び諸外国の人々を慰霊する鎮霊社にも、参拝いたしました」というもので、鎮霊社に参拝したことにもふれているのだった。

 

安倍首相は、自分が靖国神社に参拝すれば、必ずや周辺諸国からの反発を受けることになると予想していたはずだ。そのため、参拝は過去の日本の戦闘行為を正当化するものではなく、むしろ世界平和を願ってのものであることを強調するために、鎮霊社へ参拝し、そのことをここで強調しているわけである。

 

その後、2014年4月に、つまりは靖国神社参拝から4カ月後に、当時のオバマ大統領が来日した折の共同記者会見でも、鎮霊社に参拝したことに言及し、「二度と人々が戦火で苦しむことのない世界をつくっていくとの決意の下に、不戦の誓いをした」ことを強調していた。安倍首相は、鎮霊社への参拝をかなり重視していたのである。

 

私はそのことに興味を持ったが、メディアはほとんど関心を示さなかった。安倍首相の鎮霊社についての言及が共同記者会見の最後だったこともあり、オバマ大統領も、そのことについては何も述べなかった。

 

その点では、鎮霊社への参拝をことさら重視した安倍首相の行動は、メディアにもアメリカ側にも理解されず、空回りに終わってしまったように思えるが、なぜ急に、首相が鎮霊社参拝を思いついたのか、またそれにかなりのこだわりを見せたのかは謎だった。

 

その謎が、最初に述べた神道関係のシンポジウムで解けたのだ。

そのパネラーは、自分が昭恵夫人に対して、鎮霊社への参拝をアドバイスし、その結果、首相が参拝することになったと説明したのである。その人物は、昭恵夫人と一緒に写っている写真を見せながら、そのことを説明したように記憶している。

 

ただ、謎が解けたとは書いたものの、その時点では、私は必ずしもそうだとは考えなかった。私には、それを語った人物が、自分の影響力を誇示するために、話を盛っているのではないかと思えたからである。

 

しかし、今回の騒動が起こってみると、私はその人物に対して大変失礼な誤解をしてしまったように思えてきた。昭恵夫人をめぐってなら、そうしたことは十分にあり得るのだ。

 

昭恵夫人がいったいどういう人物なのか、分かるようでいて分からないところも少なくないが、彼女としては、総理大臣に返り咲いた夫が、悲願である靖国神社参拝に踏み切れないでいることに忸怩たる思いを抱いていたことだろう。

 

そんななか、その人物から鎮霊社のことをはじめて聞かされ、それに興味を抱いたのだ。

鎮霊社を創建したのは、A級戦犯の合祀をずっと棚上げにしていた筑波藤麿宮司であった。

 

筑波宮司は、1963年9月から10月にかけて、「核兵器禁止宗教者平和使節団」の一員として欧米諸国を歴訪し、ローマ教皇、ロシア正教大主教、カンタベリー大主教や国連のウ・タント事務総長などと面会した。この体験から、筑波宮司は、日本の英霊を祀るだけではなく、世界の英霊を祀らなければ、世界平和の実現はならないと考えるようになり、全世界の戦没者を祀ることを計画した。

 

ただし、靖国神社のなかでは、その計画が神社本来のあり方から逸脱するとして反対が起きた。それでも、筑波宮司の強い意向で鎮霊社が建立された。その意義について、筑波宮司は社報で、「世界の諸国がお互いに理解を深め、本当に平和を望むなら、かつての敵味方が手を取り合って、上として我々を導かれることこそ一番大事だと思います」と述べていた。

 

昭恵夫人は、おそらくそのことも聞いたのだろう。そして、首相が靖国神社に参拝しても反発を受けない方策として、鎮霊社に参拝したことを強調するのが決定打になると、首相に提案したのだ。

 

首相は、夫人からの提案をグッド・アイディアだと思ったに違いない。そのときの夫婦の会話はかなり盛り上がったのではないだろうか。

 

もちろんそれは私の勝手な推測だが、森友学園の問題をながめていると、どうしてもそのように考えてみたくなる。昭恵夫人の首相に対する影響力は、相当に大きなものなのだ。

 

昭恵夫人が私人なのか、それとも公人なのかは議論の分かれるところだが、それ以上に重要なのは、この影響力である。

 

靖国神社の問題は、日本の国家が解決していかなければならない重大な事柄だ。そこに、昭恵夫人の考え方が影響を与えている。「昭恵イズム」は、国を動かしているとさえ言えるのである。私たちは、この昭恵イズムの正体を探る必要あるのではないだろうか

PRESIDENT Online からの引用記事

 


ソウルは火の海に、日本も報復攻撃されることは確実

2017-04-06 15:57:18 | 戦争



先制攻撃にせよ予防攻撃にせよ、北朝鮮を軍事攻撃した場合は直ちに北朝鮮から報復攻撃を受け、第2次朝鮮戦争がスタートすることになる

先週、韓国紙(英語版「Korea Times」)で、ジョージタウン大学のロバート・ガルーチ教授が警告した。

もともと大学教授であったガルーチ氏はビル・クリントン政権に加わり、アメリカ側の首席交渉官として「米朝枠組み合意」(1994年)の成立に尽力した。その後、再び大学に戻り、現在はジョージタウン大学で外交を教えている(北朝鮮はしばらくの間「米朝枠組み合意」を履行していたが、徐々に困難に直面し2003年に決裂した)。

トランプ政権は「過去20年にわたる北朝鮮に対する関与政策は失敗であり、今後は軍事攻撃も含むあらゆるオプションを実施する」といった方向性を打ち出している。それに対してガルーチ氏は、「封じ込め政策」でなく「関与政策」こそが有効であると反論している。

そしてガルーチ氏は上記の警告に続けて、「(北朝鮮を軍事攻撃するからには)アメリカと同盟国は第2次朝鮮戦争に備えねばならない。しかしながら、アメリカも同盟国も戦争には備えていないではないか」と強い懸念を表明している。

このようなガルーチ氏の懸念に対して、朝鮮半島に戦闘部隊を展開させているアメリカ陸軍関係者は、「我々(アメリカ軍と韓国軍)は、勃発するしないにかかわらず第2次朝鮮戦争には常に備えている」と反論する。

彼らによると、朝鮮半島には「Ready to Fight Tonight!」をモットーとするアメリカ陸軍第2歩兵師団が常駐しており、いわゆる38度線を越えて押し寄せてくる北朝鮮軍に対して常に準備万端なのだという。

北朝鮮軍は、極めて旧式装備とはいえ、兵力110万、戦車4000輛、重火砲15000門を擁する強大な戦力である。だが、近代的装備と優れた戦術情報環境を手にしているアメリカ軍と韓国軍側は、北朝鮮軍に効果的に反撃することができると胸を張っている。

ただし、そのように主張する陸軍関係者も、準備態勢に問題がないとしているわけではない。

ガルーチ氏が指摘しているとおり、アメリカ軍にせよ韓国軍にせよ、北朝鮮を軍事攻撃した場合には、すぐさま北朝鮮による報復反撃が韓国に加えられることは確実である。とりわけソウル一帯には1時間近くにわたって砲弾やロケット弾が雨あられと降り注ぐことはもはや周知の事実となっている。

そのため、極めて多数にのぼる一般市民(韓国市民のみならず多くの外国人も含む)の死傷者が出ることは避けられない。1000万人以上の人口を擁するソウルとその周辺一帯における死傷者数の推計は不可能に近く、死者数万名、負傷者数十万名でもおかしくないといわれている。

今のところ、このような事態を避けることは不可能である。よって、ソウル一帯の壊滅的損害に着目するならば2次朝鮮戦争に対する準備が整っていないと言えなくはないのである。

軍隊が果敢に防戦に努めても、数万名の民間人が犠牲になることが前提では、戦争に対する準備が整っているとは言いがたい。

北朝鮮の報復攻撃とそれによって生ずる莫大な数の民間人の犠牲といったこうした悲惨な状況は、ガルーチ氏のように北朝鮮への軍事攻撃そのものに反対を唱える人々だけでなく、北朝鮮に対する予防攻撃は場合によってはやむを得ないと考えている人々にとっても共通してきわめて悩ましい難問である。

「アメリカ本土に達する可能性がある核搭載大陸間弾道ミサイル(ICBM)を北朝鮮が手にする以前に、北朝鮮の核兵器関連施設を破壊しておく必要がある」と考えている戦略家たちの間でも、「ソウル一帯での膨大な非戦闘員の死傷者はどうするのか?」は最大の論点になっている。

多くの軍関係者たちは、北朝鮮に対する軍事攻撃の必要性は認めつつも、実際には極めてハードルが高い軍事作戦になると考えている。なぜならば「ソウルに対する報復攻撃を避けるには、核関連施設だけでなく、国境地帯に展開する北朝鮮軍も一掃せねばならず、それも急襲によって一気に殲滅しなければならない。

したがって、とても局所を狙ったピンポイント攻撃といった軍事行動では済まなくなり、第2次朝鮮戦争をこちらから仕掛けざるをえない」からだ。

一方、「北朝鮮がICBMをはじめとする核兵器を手にした場合に生ずる結果を考えるならば、ある程度の犠牲はやむをえない」との考えも見受けられる。

例えば極めて少数ではあるが、「広島と長崎に原爆攻撃を実施する際にも、敵側に多くの民間人犠牲者が出ることに関して議論が闘わされた。しかしながら、原爆攻撃を実施せずに上陸作戦を敢行した場合に予想された我が軍側と日本軍ならびに日本国民の莫大な死傷者数予測を考えた結果、やむを得ず原爆攻撃に踏み切ったのだ」という米陸軍による公式見解を引き合いに出す関係者もいる(ただし、米海軍や海兵隊にはこのような説明に異を唱える人々も少なくない)。

JBpressからの引用記事


米中会談、アメリカの目的は中国の北朝鮮「裏の支援」断ち切り

2017-04-06 14:30:22 | 政治



46日からトランプと習近平の首脳会談が行われるが、議題となる北朝鮮問題でアメリカが望むのは、中国に北の核開発を阻止する努力を約束させることばかりではない

46日と7日の両日、アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席はフロリダ州のトランプ氏の別荘で初会談を行う。この会談を前に、北朝鮮はまたぞろ中距離弾道ミサイルを発射してみせた。今回の発射はミサイルに核を搭載する技術試験ではないかと目され、北朝鮮が核開発の技術を一層向上させていることが推測される。

今回の米中首脳会談では喫緊の課題として北朝鮮問題が主要な議題となることはまちがいないが、トランプ大統領自身が「非常に難しい」議論になる見込みだとツイートした通り、現時点で米中両国が速やかに一致点を見いだし、「ウィンウィン」の関係になれるとは、到底考えにくい。

では、北朝鮮問題におけるアメリカ側の真の目的とはなにか。なにをもって会談の「成果」とするのだろうか。それは北朝鮮の核開発で中国に対して積極的に制止する努力を約束させることばかりではない。それ以上に重要なことは、中国が暗黙裡に行っている「裏の支援」を断ち切ることにある。

「裏の支援」とは、中国の多数の金融機関や企業が北朝鮮のマネーロンダリングに加担し、北朝鮮の核開発を実質的に支えていることである。この資金源を断ち切れば、北朝鮮は即座に資金に行き詰まり、核実験やミサイル開発がとん挫することは必定だからである。

ブッシュ政権時代には、米国政府は北朝鮮への制裁措置として、マカオのバンコ・デルタ・アジア銀行に金一族が持つ2500万ドルの資産を凍結したことがある。

世界の他の銀行はアメリカの金融システムから排除されることを恐れて北朝鮮との取引を自主的に停止し、北朝鮮は資金繰りに行き詰まり、ミサイル部品の購入などができなくなったことから、米国に措置の解除を懇願した。米国政府はライス国務長官(当時)らの強い要請により、北朝鮮に対して非核化を条件に、2007年、銀行口座の凍結を解除した。

だが、北朝鮮はこの約束を反故にして、今日にいたるまで核実験やミサイル開発をくり返し実施してきた。その間、中国はアメリカの金融システムに依存しない一部の銀行を介して、北朝鮮との金融取引を続行してマネーロンダリングを助長し、北朝鮮への「裏の支援」を行ってきたという経緯がある。

昨年9月、オバマ政権下で、米国政府は中国遼寧省丹東市の貿易会社「遼寧鴻祥実業発展有限公司」と創業者の富豪の女性・馬暁紅ら4人を、北朝鮮の光鮮銀行と組んで核開発のための禁止部品の輸出とマネーロンダリングを行っていたとして刑事告訴し、米財務省の要請でこの公司が中国に持つ25の銀行口座を凍結して、米国企業との取引を禁止した。馬暁紅も中国で逮捕された。

しかしながら、この公司は創業者の逮捕によって看板は外されたものの、未だに地下に潜って活動を続けていると目されている。


「裏の支援」を行う金融機関は多数ある

問題は、中国の「裏の支援」を行う金融機関が光鮮銀行以外にも、多数あるという点だ。博訊ネット(201744日付)によれば、国連安保理のプロジェクトチームが227日に発表した研究報告では、国連が北朝鮮に対する制裁を強化した後も、北朝鮮の金融機関は依然として国際金融システムの中で非合法な銀行業務を展開し、その多くが中国との金融取引であるという。

例をあげれば、平譲にある国際武道銀行は人民元の決済銀行として、人民元建て預金口座と融資、送金業務を行っている。同じく平譲にある国際連合銀行(The International Consortium Bank)はマレーシア企業とパートナーシップを組むグループ企業だが、北朝鮮の中央銀行から営業許可を受けて、外貨取引と企業融資を実施し、顧客数は世界に5200万人いるとされる。

北朝鮮の羅先経済特別区に開設された中華商業銀行は、2013年に中国の大連市のグループ企業との間で設立された合弁銀行で、中国と北朝鮮の貿易取引の融資を行い、役員会主席は中国丹東市の金取引所の事務所主任が兼務。中国の内モンゴルの国際貿易有限公司との合弁でできた華麗国際商業銀行はロシアと内モンゴルのレアメタル取引と融資を実施。また香港の旺福特有限公司が延辺に設立した東大銀行は、預金内容を中国政府にも北朝鮮にも報告義務がない完全な独立銀行である。

その一方、北朝鮮独自の銀行は光鮮銀行以外にも、大同信託銀行、大成銀行、東方銀行の3行が中国の丹東、大連と瀋陽に事務所をもち、米国から危険人物として名指しされている金哲三(Kim Chol Sam)が2006年から大連事務所の所長に就任。登記上は別会社だが、登記上の責任者で名前が酷似した金鉄三名義で、大量のドル送金や百万ドル単位の現金取引を行っているほか、彼が北京に開設した柳京商業銀行の顧客リストの中には、北朝鮮の武器商人も含まれている。

これらの金融機関の多くは平譲と北京に本支店を開設し、核開発やミサイル製造のための部品輸入やマネーロンダリングを行っているとみられ、ニューヨークにも銀行口座がある。

米中首脳会談では、おそらくトランプ大統領は習近平主席に対して、韓国への高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備を巡る米中間の緊張緩和と引き換えに、こうした北朝鮮への「裏の支援」を断ち切るよう強く迫るはずである。あるいは世界貿易機関(WTO)協定上の「市場経済国」として認定するかわりに条件交渉をするかもしれない。

もし中国による北朝鮮への「裏の支援」を断ち切ることができれば、アメリカは北朝鮮の核の脅威に対して有効な手段を得たことになり、米中首脳会談の真の「成果」のひとつとなる。米中両国の貿易不均衡という目に見える交渉事の一方、水面下でそうした交渉と妥協策も同時に進行するにちがいない。

 

ニューズウィークからの引用記事


日本政府、北朝鮮のミサイル発射に強く抗議する

2017-04-06 12:38:04 | 政治


政府、ミサイル発射で北朝北朝鮮が5日朝、日本海に向けて弾道ミサイル1発を発射したことを受けて、菅官房長官は緊急の記者会見を開き、「極めて問題のある行為で抗議し、強く非難する」と述べた。 

菅官房長官は、「航空機や船舶の安全確保の観点から、極めて問題のある行為だ。また、安保理決議等への明白な違反だ」、「北朝鮮による度重なる挑発行為を断じて容認できず、北朝鮮に対し、厳重に抗議を行い、強く非難した」などと述べた。 

菅官房長官によると、北朝鮮は、5日午前6時42分ごろ、北朝鮮の東岸から弾道ミサイル1発を発射し、数十km飛翔(ひしょう)したのち、日本海に落下した。 
日本のEEZ(排他的経済水域)からは、外れているとみられる。 

安倍首相は、政府に対し、「情報収集と分析に全力を挙げ、国民に迅速・的確な情報を提供すること」、「航空機や船舶などの安全確認を徹底すること」、「不測の事態に備え、万全の態勢を取ること」の3点を指示した。 

政府首脳は、今回の弾道ミサイル発射について「前回と同じ場所から発射し、数十km飛ばしている」と述べ、「失敗ではない」との認識を示した。

 

東部の新浦から日本海に向け弾道ミサイル1発を発射した。飛行距離は約60キロ、最高高度は189キロだった。米太平洋軍も米東部時間4日(日本時間5日)、新浦近郊の地上設備から発射されたミサイル1発が9分後に日本海へ落ちたと発表。「初期評価では、準中距離弾道ミサイルとみられる」と推定した。

 

韓国国防省当局者は、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の技術を応用した新型の固体燃料推進式弾道ミサイルである「『北極星2型』と推定される」と述べた。北朝鮮は2月12日、日本海に向けミサイルを発射し、翌13日、国営メディアを通じて「北極星2型」の試射に成功したと発表している。

菅義偉官房長官は直ちに臨時記者会見を行い「北朝鮮東岸より、1発の弾道ミサイルが発射され、数十キロ飛翔(ひしょう)し、日本海に落下したとみられる」と発表した。また「落下したのは(日本の)排他的経済水域(EEZ)内ではないと推定される」と述べた。

稲田朋美防衛相は記者団に対し「北東方向に発射したとみられる。北朝鮮の東岸沖に落下したと推定される。特異な高度では全くなかった」と強調した。発射されたミサイルについて防衛省関係者は「準中距離弾道ミサイル『スカッドER』(射程1000キロ)だとみている」と語った。

 

韓国政府は、国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開き、対応を協議、核実験などさらなる挑発に備え警戒を強化する方針を決めた。

ミサイル発射については、米韓が実施中の合同演習に対抗するとともに、6日から始まる米中首脳会談を前に、ミサイル能力を誇示する狙いがあるとみられている。今年に入って北朝鮮は、2月12日に引き続き、3月6日には弾道ミサイル4発を発射し、うち3発が日本のEEZ内に着弾したとみられている。3月22日にも、東部・元山からミサイル1発を発射したが、韓国軍などは失敗したと推定している。

ティラーソン米国務長官は、弾道ミサイル発射を受けて声明を出し「米国は北朝鮮について十分に言及してきた。これ以上のコメントはない」と述べた。

 


中国の習近平国家主席、北と米の板挟み 窮地の米中首脳会談に

2017-04-06 10:11:45 | 政治

北朝鮮が5日強行した弾道ミサイルの発射は、6日に迫った米中首脳会談に衝撃を与えた。限定的な軍事手段も視野に「単独解決」に傾く米国と、中国のメンツを省みない北朝鮮の強硬姿勢の間で、習近平国家主席は窮地に立たされ会談に臨む。

 

消息筋によると、北朝鮮の不穏な動向は米中ともに察知しており、これが首脳会談の早期実現につながった。北朝鮮では核実験施設周辺でも活発な動きが伝えられ、両首脳の初会談を迎える空気は緊迫している。

 

会談を前に、中国の対米安保専門家の間では、米国の「外科手術」との言葉が頻繁(ひんぱん)に交わされ始めた。中朝国境付近に多い北朝鮮の核・ミサイル関連施設に対して、米軍が精密誘導兵器によるピンポイント爆撃を加える可能性が「現実味を帯びた」との認識だ。

 

中国は「朝鮮半島の非核化」を掲げつつも、緩衝地帯として北朝鮮を存続させる必要から、労働党政権を追い詰めてこなかった。

 

米中間では、2013年6月に行われた習氏とオバマ前大統領の初会談でも北の核開発阻止を「米中の共通目標」と表明していた。4年後の現実が習氏の眼前に突きつけられている。

 

ところが、王毅・中国外相は、北の大量破壊兵器開発と米韓軍事演習を同列において「同時停止」を提案するなど、なおも内科治療での対話解決をめざしている。

 

中国側は「核問題の主要当事者は米朝だ」(王氏)という逃げ腰で首脳会談に臨もうとしたが、逆に米朝の強硬姿勢の板挟みで会談を迎える事態となった。

 

だが、会談直前を狙ったミサイル発射で、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備をめぐる中国の反発は、さらに説得力を失った形だ。

中国外務省の華春瑩報道官は5日の記者会見で、北朝鮮の弾道ミサイル発射について「関係各国は自制を保ち、緊張を激化させることをすべきではない」と述べ、北朝鮮だけでなく米側にも自制を求めた。6日からの米中首脳会談への影響については「必然的な関係を見いだすことはできない」とした。

 

消息筋によると、北朝鮮の不穏な動向は米中ともに察知しており、これが首脳会談の早期実現につながった。北朝鮮では核実験施設周辺でも活発な動きが伝えられ、両首脳の初会談を迎える空気は緊迫している。

 

会談を前に、中国の対米安保専門家の間では、米国の「外科手術」との言葉が頻繁(ひんぱん)に交わされ始めた。中朝国境付近に多い北朝鮮の核・ミサイル関連施設に対して、米軍が精密誘導兵器によるピンポイント爆撃を加える可能性が「現実味を帯びた」との認識だ。

 

中国は「朝鮮半島の非核化」を掲げつつも、緩衝地帯として北朝鮮を存続させる必要から、労働党政権を追い詰めてこなかった。

 

 

ところが、王毅・中国外相は、北の大量破壊兵器開発と米韓軍事演習を同列において「同時停止」を提案するなど、なおも内科治療での対話解決をめざしている。

 

中国側は「核問題の主要当事者は米朝だ」(王氏)という逃げ腰で首脳会談に臨もうとしたが、逆に米朝の強硬姿勢の板挟みで会談を迎える事態となった。

 

だが、会談直前を狙ったミサイル発射で、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備をめぐる中国の反発は、さらに説得力を失った形だ。

 

産経新聞 からの引用記事

 

 

 

 


北朝鮮が瀬戸際外交を越える時 戦慄シミュレーション

2017-04-06 05:30:42 | 戦争

米ソ冷戦が終わり核の脅威が遠のくかと思いきや、北朝鮮の核実験と弾道ミサイル発射が止まらない。もし日本に落ちた時の被害は。そしてどう防ぐか。

瀬戸際外交、朝鮮半島紛争、そして自殺攻撃──。北朝鮮が日本をミサイル攻撃するシナリオとして、防衛省防衛研究所出身で、政策研究大学院大学教授の道下徳成氏(51)はこの三つを挙げる。

「瀬戸際外交」では、日米を譲歩させようと在日米軍基地がある日本のほうへ撃つ。被害に直結する領土でなく、領海に落としてミサイル能力を見せつける。「朝鮮半島紛争」では交戦する韓国を日米が支援しないよう威嚇する。「自殺攻撃」は金正恩(キムジョンウン)政権の崩壊寸前で、自暴自棄になった場合だ。

北朝鮮は36日に弾道ミサイル4発を発射し、3発が秋田沖の日本の排他的経済水域(領海外)に落下。発射はほぼ同時で、ミサイル防衛(MD)で迎撃する場合の難易度は増す。朝鮮労働党機関紙の労働新聞は、有事に在日米軍基地攻撃を担う部隊が参加したと報じた。

こうした動きに日米は譲歩どころか、「北朝鮮は米国を手玉に取ってきた」(17日のトランプ大統領のツイート)と反発。トランプ政権は軍事中枢を先にたたく「予防攻撃」も視野に対北朝鮮政策を見直す。労働新聞は19日付で米国に届く大陸間弾道弾(ICBM)開発のためとみられる地上燃焼実験を伝え、緊張が高まっている。

韓国軍は「3倍返し」瀬戸際外交が破綻(はたん)すれば、朝鮮半島紛争シナリオへと移る。米国が「予防攻撃」に踏み切れば、北朝鮮はソウルを長距離砲などで「火の海」にして報復。韓国軍は交戦規定による「3倍返し」でまた報復、とエスカレートする。

日米韓が結束すると勝ち目がない北朝鮮は、「日米が韓国を支援するなら日本を攻撃する」と恫喝。脅しの信憑性を高めようと、韓国の攻撃をかいくぐり、日本の都市をめがけてノドン数発を同時に放ちかねない。日本全土をほぼ射程に入れる中距離弾道ミサイルだ。マッハ1520で複数の弾頭が同時に飛来する。MDは撃ち漏らすかもしれない。1発が着弾したら、どうなるか。

 

火薬が詰まった通常弾頭の場合に参考になるのが、第2次大戦中にドイツが英国へ放った弾道ミサイルV2による被害だ。積める火薬はノドンに近い1トンになる。

BBCの報道によると、1300発以上で2724人が亡くなった。19449月にロンドンに落ちた1発は地面に直径10メートル、深さ2.5メートルの穴をうがち、3人死亡、22人けが、家6棟が壊れた。中小ビルなら崩れそうな威力だ。

最悪のケースは、追い込まれた北朝鮮が核弾頭を積んだノドンを日本の人口密集地へと放つ場合だ。自殺攻撃に近い。

核ミサイルの被害想定 道下氏も参考にする被害想定がある。韓米の研究者2人が『ウォー・シミュレイション 北朝鮮が暴発する日』(2003年、新潮社)で示したもので、「米ヘリテージ財団の協力を得て、米国防総省が使用する軍事シミュレイションのソフトウェアを活用」と説明がある。

04531日午前8時、12キロトン級の核兵器(広島型は15キロトン、長崎型は21キロトン)が地表爆発したら──。天気や風向きもふまえた予測はこうだ。

東京 爆心地・国会議事堂付近 死者423627人、全体被害者811244

大阪 爆心地・梅田付近 死者482088人、全体被害者881819人その時の表現は生々しい。

2.5キロ以内に存在する人の90%以上はカメラのフラッシュのような閃光(せんこう)を見た瞬間に消える」「爆発で生き残っても、弾丸のように吹き込む大量のがれきで致命傷を負う」「永田町、霞が関、丸の内が壊滅すれば日本の中枢機能は一瞬で停止する」

実は広島市も核攻撃の被害想定を07年に出している。国民保護法で自治体に求められる国民保護計画の策定にあたり、「原爆投下による惨害を受けた都市の使命」としてまとめ、ウェブサイトで公開している。

想定は1945年当時と同じ爆心地で、8月の平日の昼間、晴れ。16キロトン級の核兵器が地上600メートルで爆発した場合、死者66千人、負傷者205千人、死傷率は46.4%にのぼる。

45年末までに14万人が亡くなったとされる当時よりも頑丈な建物が増え、倒壊による圧死は大きく減る。それでも「建物内に窓ガラスや備品が飛散し凶器と化す。高層ビルでは避難階段に生存者が殺到し将棋倒し」「道路は建物や自動車の残骸で埋め尽くされ、火の手が迫り人々は逃げ惑う」とみる。

自治体が国民保護計画を作る基準として政府が閣議決定した基本指針にも核攻撃の項目があるが、政府は、被害想定について、「攻撃類型、規模、環境などの前提で全く異なり、仮定を重ね想定するのは適当でない」(内閣官房)と示していない。

その時避難できるか 北鮮の度重なるミサイル発射で、着弾に備える動きは始まっている。政府は317日、日本海に面する秋田県男鹿市の漁村で、日本初のミサイル避難訓練を実施した。

ノドン発射から着弾までは710分。政府が発射情報をつかみ、弾道を予測し、住民に防災行政無線で伝えるまで数分。残り数分で遠くへの避難は無理だ。とにかく近くの建物へ逃げ込み、周辺に落ちた時の爆風や高熱にさらされないようにする。

訓練は一帯を通行止めにして住民110人が参加。校庭の小学生は校舎へ、掃除中の高齢者は公民館へ急ぐ。「男鹿半島西約20キロに落下」という訓練放送に、元漁師の加藤喜正さん(76)の表情が締まった。

防災意識の高い集落だが、発射から避難完了まで7分前後とぎりぎり。立ち会った内閣官房幹部は、「他の自治体に訓練を働きかけたいが、都市部ではより丁寧な周知が必要」と話した。

政府は18年度までに累計約2兆円を投じて「盾」のMDを強化する方針だが、北朝鮮のミサイル能力向上といたちごっこ。そこで、ミサイル施設をたたく「矛」の敵基地攻撃能力を持つべきだとの声が強まる。自民党のMD検討チームは「直ちに検討を」との提言書をまとめ、330日に座長の小野寺五典・元防衛相らが首相官邸で安倍晋三首相に手渡した。

 

安倍首相は、「北朝鮮のミサイルは新たな脅威の段階に入っている。提言をしっかり受け止めたい」と応じた。同月24日の国会答弁でも「従来の発想にとらわれず検討すべき」と含みを持たせている。

外国の領土に届く「矛」の兵器保有を、日本は憲法9条や米軍との役割分担から控えてきた。軍事的にも疑問の声が上がる。ノドンを載せる移動式発射台は北朝鮮に約50台あり、その位置をつかむのは難しいからだ。また、日米韓の役割分担として、ミサイル施設への攻撃は北朝鮮により近い場所に基地を持つ米韓が当たるのが合理的だ。

トランプ氏の腹一つ だが、北朝鮮と戦う状況をさらに詰めて考えれば、攻撃を米韓にお任せだと、日本向けのノドンへの対処が後回しにされるおそれがある。政府内には、「有事に米韓との結束が揺らがないよう、日本の姿勢を示すシンボルとして敵基地攻撃能力が必要」との見方も出ている。

そんな議論にお構いなく、北朝鮮がICBM発射や6回目の核実験に踏み切るかもしれない。「力による平和」を掲げるトランプ政権の反応次第で東アジア情勢は一気に流動化する。

道下氏は対話が必要だと説く。「追い込まれた北朝鮮には核・ミサイルしか外交手段がない。核兵器を持つなら対話をしないという建前論では解決しない。追い込むばかりではヤクザは更生できない。生計が立つ道筋をともに考えるべきだ」

日朝間では今世紀に入り、首相が2度平壌を訪れたが、対話は絶えて久しい。危機を避ける手立ては日本にあるのか。

 

AERAからの引用記事

 

 

 

 


軍事攻撃という選択肢も、北朝鮮攻撃の日は近いのか?

2017-04-06 02:29:25 | 戦争

トランプ政権が北朝鮮への態度をいよいよ硬化させ、北朝鮮の核兵器や長距離弾道ミサイルの開発を阻むための軍事攻撃という選択肢も語られるようになった。

46日から中国の習近平国家主席と首脳会談するトランプ大統領は、徹底した経済制裁によって北朝鮮の核開発を防ぐことを中国に改めて要請するという。中国がこの要請に応じない場合、米国はどうするのか。

北朝鮮情勢はいまやかつてない危機を迎えたと言っても過言ではない。ワシントンでもソウルでも東京でも、トランプ政権による「金正恩政権への軍事攻撃」というシナリオが論じられるようになってきた。

トランプ政権はこれから北朝鮮に対してどんな政策や戦略をとるのか。ワシントンの政府内外で長年、朝鮮半島情勢の研究を専門としてきたジョージワシントン大学のラリー・ニクシュ教授に見解を尋ねてみた。

ニクシュ氏は米国政府の国務省や議会調査局で朝鮮情勢の専門官として30年ほど勤務し、戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員を経て現職に就いた。歴代米政権の北朝鮮への対策や戦略に精通する専門家である。

 
ICBMが米国西海岸まで到達する日

──北朝鮮の現在の動向に関して、トランプ政権が最も懸念することはなんでしょうか。

ニクシュ氏 私は現在、政権の外にいます。その立場であえて述べれば、トランプ政権は、北朝鮮がこのままだと2020年頃までにアラスカやハワイ、場合によってはアメリカ本土の西海岸にまで到達する核弾頭装備のICBM(大陸間弾道ミサイル)を開発するだろうとみています。なんとかしてそれを阻止することを当面の最大の目標としていると言えるでしょう。

──もし北朝鮮が米国本土に届く核弾頭装備のICBMを保有したとなると、米国は核戦略を根本から変える必要に迫られますね。もしも北朝鮮がソウルや東京への核攻撃の威嚇をかけてきた場合、これまでならば米国は同盟国への「拡大核抑止」の原則に従い、北朝鮮に「核攻撃をかけるぞ」と威圧して北を抑えることができました。

しかし北朝鮮が核装備のICBMを持っていると米国本土が核攻撃を受ける危険性が生じる。となると、米国としては自国本土の大きな被害を覚悟してまで韓国を守ることができるのか、という問題が生じます。

ニクシュ氏 そのとおりです。米国がサンフランシスコに核攻撃をかけられる危険を覚悟してまでソウルを守るのか、という議論になります。北朝鮮の核ミサイルは、ソウルや東京を破壊できても、米国本土の大都市は攻撃できないだろうという現在の大前提が根本から崩れるわけです。米国の歴代政権は、そんな事態は絶対に許容できないとして「北朝鮮の非核化」政策を追求してきました。トランプ政権もその点では歴代政権と変わりはないでしょう。

生かすも殺すも中国次第

──そんな事態を阻止するために、トランプ政権がいま最も重点をおく政策とはなんでしょうか。

ニクシュ氏 トランプ政権は、中国こそが北朝鮮の生殺与奪の権を握っているとみています。北朝鮮は食糧とエネルギーのほぼすべてを中国に依存しています。その中国が北朝鮮に対する経済制裁を徹底すれば、北朝鮮は国家滅亡の危機とみて核兵器開発の停止にも踏み切るだろうと考えるわけです。

 ──トランプ政権はそのために中国に対してなにを求めるのでしょうか。 

ニクシュ氏 北朝鮮への石油輸出を全面停止する圧力行使を求めるでしょう。それが、最大の効果を発揮できるほぼ唯一の残された経済制裁です。北朝鮮は国内の官軍民で必要な石油の9割を中国からの輸入に依存しています。その全面ストップは核兵器やミサイルの開発停止にもつながるでしょう。

──トランプ大統領はまもなく米国のフロリダ州の私邸で中国の習近平国家主席との初めての首脳会談に臨みます。そこでも北朝鮮問題は当然、提起されるわけですね。

ニクシュ氏 当然、提起されるでしょう。米中間には貿易不均衡、サイバー攻撃、南シナ海、台湾問題など摩擦につながる案件は多数ありますが、いまやトランプ政権は対中関係全体の中で北朝鮮問題が筆頭に位置すると考えるようになりました。

米国の「軍事的な行動」とは? 

──しかし、中国は北朝鮮に対する石油の輸出を止めようとはしていません。その中でトランプ政権は、北朝鮮に対する軍事攻撃という選択肢を示唆するようになりました。たとえばティラーソン国務長官は北朝鮮との外交交渉を拒んだうえで、対応策の1つとして「軍事的な行動」という言葉を使いました。トランプ政権にとっての「軍事的な行動」とはなにを意味するのでしょうか。

ニクシュ氏 トランプ政権が最後の手段として北朝鮮への軍事攻撃の可能性を検討していることは確実です。米国の歴代政権が少なくともその軍事シナリオをどこかで考えてきたことも事実です。

まず考えられるのは、北朝鮮の核兵器の開発拠点や貯蔵基地を破壊する方法です。しかし核施設への直接の攻撃は難しいでしょう。北朝鮮はすでに2040個と推定される核弾頭(核爆弾)を完成させているというのが米側の当局の見方です。ですが、この核弾頭の所在地が不明です。同時に核燃料の再処理や濃縮の施設も正確な位置が分かりません。山岳部の深い地下にあるのでしょう。そのため、そうした核施設への攻撃は効果が期待できません。

──となると、長距離ミサイル関連施設への攻撃がより現実的だということでしょうか。

ニクシュ氏 そうです。トランプ政権がまず優先しようとしている軍事オプションは、北朝鮮の北西部の弾道ミサイル発射基地などへの攻撃です。最も現実的な方法として、それらのミサイル施設へのミサイルあるいは有人無人の航空機による限定的な爆撃が検討されているようです。

──しかしこれまで、北朝鮮への軍事攻撃計画は米国内で反対論が圧倒的に多かったですね。もし米軍が、たとえ限定的でも北朝鮮を軍事攻撃すれば北朝鮮は即座に韓国に全面的に反撃し、朝鮮半島で全面戦争になるとみられているからです。

「韓国に重大な被害をもたらすことになる北朝鮮攻撃などとんでもない」というわけです。いまもその主張は広範に存在しますが。

ニクシュ氏 確かにそのとおりです。ただしトランプ政権内では「北朝鮮への拠点攻撃は拠点だけで限定できる」「全面戦争は抑止できる」という見解が広まってきた印象があります。全面戦争となれば北朝鮮という国家が完全に崩壊するわけだから、金正恩政権も理性を働かせて、限定的な攻撃への反撃は限定的に抑えておくだろうという推察がなされるようになってきました。

米国で崩れてきた前提

長らく米国では「北朝鮮への米軍のいかなる軍事攻撃も、全面的な反撃を招いて韓国に大惨事をもたらすため、現実的な選択肢にはなりえない」とされてきた。だが、以上のニクシュ氏の見解によると、米国ではその大前提がついに崩れてきたようである。

つまり、米軍が北朝鮮の核やミサイルの施設のみに照準を絞って限定的な攻撃をかけた場合は、北朝鮮は全面的な反撃に出ることを抑えるかもしれない、というのだ。ニクシュ氏はこの部分を「米側による新たな抑止」と表現した。

同氏によれば、米軍の攻撃は、北朝鮮のミサイルやミサイル関連施設だけが標的であっても、弾道ミサイル開発の主要部分を破壊することで核弾頭装備の長距離弾道ミサイルの脅威をかなり阻止できることになる、という。

やはり現実の事態として朝鮮半島の危機が迫ってきている。日本としても国家の非常事態として認識するぐらいの覚悟が必要なことは明白である。

JBpress からの引用記事