米国と他のメンバーの間で貿易や温暖化対策、対ロシア外交などで溝が埋まらなかったため、各国首脳は戦々恐々とした気持ちでサミットに臨んだ。ところが複数の当局者の話では、結果は恐れていたほど悪い事態にはならなかった。
首脳宣言で、温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」を尊重するかどうかで米国と他の6ヵ国は意見が分かれた点を認めたものの、通商面ではトランプ氏が残りのメンバーの圧力に屈する形で保護主義と闘うとの表現が盛り込まれた。
対照的にNATO首脳会議は、複数の欧州政府当局者が「大惨事」と評する結末になった。トランプ氏は、他のNATO加盟国の首脳をまるで学校の生徒を整列させて国防支出が十分でないと叱責し、任意のはずの拠出金について一部加盟国に過去の「未払い分」を督促した。
加盟国を最も動揺させたのは、トランプ氏が集団的自衛権への支持表明を手控えたことで、大半の欧州諸国にとって今もNATOの存在意義とみなすロシア問題にもトランプ氏はまったく言及しなかった。
そしてブリュッセルにおけるトランプ氏の振る舞いは、特にトランプ政権との関係づくりに腐心してきたドイツの苛立ちを誘った。NATO首脳会議に先立ち、トランプ氏が欧州連合(EU)高官との非公式会合で、ドイツの対米貿易黒字を蒸し返して批判したためだ。
あるドイツ政府高官は「トランプ氏が本当に孤立化を目指したいのなら、中国が世界の覇権を握るスピードを速めるだけになる」と不満を漏らした。
もっともトランプ氏の側近が今回の大統領の外遊を総括した際、最も熱心に語ったのはサウジ訪問だった。米国はサウジに総額1100億ドル相当の武器を売却する契約をまとめた上、サルマン国王とトランプ氏が「個人的な絆」を結べたとの声も聞かれる。
コーン大統領補佐官は「大統領は、歴代のどの政権もなし遂げられなかった驚くべき商談をまとめることができた」と胸を張った。
ドイツ外交評議会の調査ディレクター、ダニエラ・シュバルツァー氏は、結局のところトランプ氏の外遊で、同氏が世界には勝者と敗者しか存在せず外交関係など取引でしかないという「ゼロサム・ゲーム」的思考を持っていることが確かめられたと指摘。
「トランプ氏の言動からは、これまで米国が最も重要な要素の1つと考えてきた同盟国との良好で密接な関係構築を、優先的な政策とするつもりがないことがうかがえる」と話した。
週刊ダイヤモンドからの引用記事