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今回の自民党提言は、地対空ミサイルのイージスアショア(陸上配備型イージスシステム)やTHAAD(高高度地対空ミサイル)の導入を提言しており、「現状は不十分」と認めたのと同じことだ。問題はカネである。
現在のMDシステムは初期配備に1兆円、その後の改修などを含めれば1兆4000億円の防衛費を投じた。イージス護衛艦、地対空ミサイル「パトリオット」という自衛隊保有の武器を改修したにもかかわらず、これほどの出費を強いられた。
一から導入するイージスアショア、THAADが極めて高額の防衛費を必要とするのは自明だろう。
しかも米政府の提示する価格、納期で購入が義務づけられる対外有償軍事援助(FMS)となるのは確実なため、「いつ、いくらでどう提供するか」は米政府次第となり、武器を媒介にした米国による日本支配が強化されるのは間違いない。トランプ米政権の掲げる「アメリカ・ファースト」を後押しすることにもなろう。
あらたに追加配備したとしても100%の迎撃は困難だ。北朝鮮は3月、中距離弾道ミサイル4発を同時に発射し、うち3発を日本の排他的経済水域に落下させた。
MDシステムは遠方の弾道ミサイルを補足するためレーダー波を絞り込み、限られた範囲しか見えなくなるため、連射には対応できない。3月の4発連射はそうした弱点を北朝鮮が熟知していることを示したといえる。
日本列島には休止中も含め54基の原発がある。使用済み燃料棒が原発建屋の天井近くに保管されている事実は、東日本大震災の福島第一原発の事故で世界中に知れ渡った。通常弾頭であっても命中すれば、放射性物質の拡散により大惨事となるおそれがある。
また核弾頭を搭載したミサイルであれば、落下地点やその周辺一帯が壊滅的打撃を受けるのは確実である。
自民党提言は、迎撃失敗による甚大な被害が生じる可能性にはまったく触れず、MDシステムをもっと強化しろと主張する。
だが、弾道ミサイルとMDシステムは「矛」と「盾」の関係にあり、競い合いには際限がない。MDシステムを強化すれば、日本攻撃を意図する他国は、この「盾」を打ち破る「矛」を必ず開発するはずである。
そうしたジレンマの解消策だろうか、自民党提言は「敵基地反撃能力」との呼び方で敵基地攻撃能力の保有も主張する。あえて反撃としたのは先制攻撃ではないかとの批判を避ける狙いであろう。
いずれにしても弾道ミサイルが落下する前に発射基地を攻撃する能力を持つべきだ、との主張で、有体にいえば「やられる前にやれ」というのだ。
根拠にしたのが1956年鳩山一郎内閣が示した政府見解である。「誘導弾等の攻撃を受けて、これを防御するのに他に手段がないとき、独立国として自衛権を持つ以上、座して死を待つべしというのが憲法の趣旨ではない」として敵基地攻撃を合憲とした。
1990年代以降、北朝鮮による弾道ミサイルの発射が繰り返されるたび、主に自民党議員が敵基地攻撃能力の保有を求めてきたが、政府は自衛隊が保有できる兵器を「自衛のための必要最小限度のものでなければならない」とし、「自衛隊には敵基地攻撃能力はない」と答弁してきた。本当に「ない」のだろうか。
現代ビジネスからの引用記事
政府と中央銀行を統合ノーベル経済学賞受賞者でコロンビア大学教授のスティグリッツ氏が来日し、経済財政諮問会議で、財政政策による構造改革を進めるべきだと提言した。
そのなかでスティグリッツ氏は、政府や日銀が保有する国債を「無効化」することで、政府の債務は「瞬時に減少」し、「不安はいくらか和らぐ」と発言した。
実は彼のこの主張は、日本の財政の真実を明らかにするものだが、具体的になにを意味するのか。
スティグリッツ氏のこの提言には様々な前提がある。まず、「統合政府」とよばれる考え方を押さえておきたい。これは財政や金融問題について、政府と中央銀行を一体のものとして考えることを指す。
たとえば日本の場合、中央銀行である日本銀行は実質的に政府の「子会社」といえる。だから、民間企業でグループ会社の資産も連結決算で考えるのと同じように、政府と日銀の資産は連結してみることができるということだ。
ちなみにこれは「中央銀行の独立性」とは矛盾しない。中央銀行の独立性とは、政府の経済政策目標の範囲内でオペレーションを任されているという意味で、民間でいえばグループ企業が独立して営業する権利を持っているのと同じである。
この統合政府の財政状況を示すバランスシートでは、右側の「負債」はすなわち国債残高を示す。重要なのは左側の「資産」であるが、統合政府の場合この資産に日銀が保有する国債が含まれるのだ。
国の借金1000兆円のウソ、国債残高はおよそ1000兆円、左側の日銀保有国債は約400兆円である。これらを「無効化」すると、国債残高は「瞬時に減少」するとスティグリッツ氏は主張しているのだ。
ちなみに「無効化」とは内閣府が用意した資料の和訳によるもので、筆者は「相殺」と訳すべきだと考えている。というのも、スティグリッツ氏が書いた英文原資料には「Cancelling」とあり、これは会計用語で「相殺」を意味するからだ。国全体の国債と、日銀保有の国債は「相殺」できると考えるとわかりやすい。
たしかに、日銀の保有国債残高に対して、政府は利払いをするが、それは「国庫納付金」として政府に戻ってくるので、利払いのぶん国債が増えることにはならない。
要するに、スティグリッツ氏は「国の借金が1000兆円ある」という主張を鵜呑みにしてはいけないと警告している。
この考え方をさらに進めると、政府の連結資産に含められるのは、日銀だけではない。いわゆる「天下り法人」なども含めると、実に600兆円ほどの資産がある。これらも連結してバランスシート上で「相殺」すると、実質的な国債残高はほぼゼロになる。日本の財務状況は、財務省が言うほど悪くないことがわかる。
スティグリッツ氏は、ほかにも財政再建のために消費税増税を急ぐなとも言っている。彼の主張は、財務省が描く増税へのシナリオにとって非常に都合の悪いものなのだ。
彼の発言は重要な指摘であったが、残念ながら、ほとんどメディアで報道されなかった。経済財政諮問会議の事務局である内閣府が彼の主張をよく理解できず、役所の振り付けで動きがちなメディアが報道できなかったのが実際のところだろう。
『
週刊現代からの引用記事