融通無碍なる留学生活

~豪に入っては豪に従います~

触れる鍵盤

2006年12月03日 | 音楽
D先生は本気だった。

私がやっかいな事態になったときに、掛けてくださった身にしみるような優しいお言葉は、本当のものだった。快くご自宅のピアノを弾かせて下さったのだ。

バッハ、ショパン、ブルグミュラー、ロス・エドワーズ、尾高尚忠あたりを弾き、先生のお母様(おそらくは80代!とてもチャーミング!)のソプラノに合わせて伴奏もした。日本の懐かしい合唱曲も何曲か歌った。
ピアノはKAWAI。D先生とはYAMAHAとの音質の違いで意気投合した。

夕食の前に裏庭(馬が二匹いる。あれはすでに庭じゃない。自然保護区。)を散歩中、離れの家も見せていただたら、なんとそこには、ベヒシュタインの小さなアップライトが置いてあった。蜀台付き。製作者の名前とSydneyとが、飾り文字で描かれてあった。およそ100年前のものだという。D先生のおばあ様にあたる人が、ピアノの先生をしていらしたとか。ならしてみると、古ぼけた、それでもなにか反響のしっかりした音がした。きれいに調整したら、きっといい音が出るんじゃないかと思う。先生・・・もったいない・・・(涙)

4ヶ月ぶりに触れた鍵盤上で、私の指はすっころんでばかりいたけれど、鍵盤に触れるというその指の感触、楽譜を目で追うというその感触は、やはり何にも代えがたい。オーストラリア人の方の家庭で、暖かな食卓を囲みとても幸せな夕べだった。
優しい人たち、本当にありがとう。