宇宙航空MBAブログ

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技術のコスト見積り②

2007年03月30日 | MBA
 
昨日はテクノロジーを使ったビジネスのコスト見積りに関して、Analogical Method(アナロジカル法)、 Parametrical Method(パラメトリカル法)、 Analytical Method(アナリティカル法)の3つがあることを紹介した。今日はより具体的な例として、Airbus(エアバス)社が航空機の開発意思決定に用いる際のコスト見積り手法を紹介したい。

一般的に航空機ビジネスで発生するコストは、Non Recurring Cost(NRC:ノン・リカリング・コスト)とRecurring Cost(RC:リカリング・コスト)に分けられる。NRCとは、航空機の「開発」に必要な全てのコストのことで、一度航空機の開発が終了すると、基本的には2度と発生しないコストだ。それに対して、RCとは、航空機の「製造」に必要な全てのコストで、1機、2機、3機と航空機が製造される度に発生していくコストのことだ。

ビジネスとしての航空機開発を成功に導くためには、このNRCとRCのどちらも十分な精度でコスト見積りを行い、Net Present Value(NPV:正味現在価値)分析、Internal Rate of Return(IRR:内部収益率)分析、Break Even Point(損益分岐点)分析などにより、十分にProfit(利益)が見込めるビジネスであることを確かめておかねばならない。これらは、Investor(投資家)から必要な資金を得るための必要最低条件でもある。

製造段階で必要となるリカリング・コストの見積りは先の話なので置いておいて、航空機の開発段階で必要となるノン・リカリング・コストを見積もるには、開発のステップをベースに18のCost Chapter(コスト項目)に分類し、それぞれ必要なコストを計算していく。

 1. Design (デザイン費)
   1.1 Non specific design work (一般デザイン作業費)
   1.2 Specific design work (特殊デザイン作業費)
 2. Aero dynamical test (空気力学テスト費)
 3. Structural test (構造テスト費)
 4. System test (システムテスト費)
 5. Simulator (シミュレーター費)
 6. Equipment development (設備開発費)
 7. Tooling (機械設備費)
   7.1 Mock-up (モックアップ)
   7.2 Preparation (準備)
   7.3 Tooling (道具)
 8. Development Aircraft (航空機開発費)
 9. Flight test (フライトテスト費)
 10. Modification (修正費)
 11. Ground support equipment (地上設備費)
 12. Spares (スペアパーツ費)
 13. Documentation (資料化費)
 14. Management (一般管理費)
 15. Program management (プログラムマネジメント費)
 16. Sustaining (維持費)
 17. Miscellaneous (雑費)
 18. Refurbishing (刷新費)

これが、Airbus(エアバス)社の航空機開発における18のコスト・チャプターだ。もちろん、Finance(財務)やAccounting(会計)の専門家だけでは全ての費用を正確に見積もることは不可能なので、航空機のデザイナーやエンジニア、メンテナンス担当者も含めて議論を深め、最終的に最も合理的なコストを導き出す。

参考までに、超大型2階建旅客機A380の開発コストは130億ユーロ(日本円で約1兆8千億円)と見積もられ、現在では50ユーロのコスト超過になっている。さらに、今後の最新機A350EWBの開発コストは100億ユーロと見積もられている。予算内に収まる可能性は、、、誰にも分からない。

(写真は今後エアバス社で開発が予定されているA350XWB機のイメージ図)
 


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