宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

エアカーゴ

2006年11月29日 | MBA
 
今日は午後からエアバス社のマーケティングディレクターであるDidier Lenormand氏が来校して特別講義をしてくれた。こうやってヨーロッパ航空宇宙産業のキーマンから直接にノウハウを伝授してもらえるのも、このAerospaceMBAの大きな特長の一つだ。

話は主にセグメンテーション(市場の細分化)とそれぞれのカテゴリーにおけるビジネスの特徴に関するものだった。その中で僕が一番興味を持ったのは、Lenormand氏のエアカーゴビジネス(航空貨物の輸送ビジネス)に対する分析の仕方だ。

エアカーゴビジネスとは、簡単に言うと、飛行機で荷物を運ぶビジネスだ。花や魚といった鮮度重視の消費者向け物品から、コンピュータの半導体といった小型高額物品、さらには人工衛星といった大型の超高額貨物まで、世界中のSeller(売主)とBuyer(買主)を飛行機という手段で繋いでいる。

輸送手段としてのエアカーゴのメリットは、もちろんスピードの速さにつきる。船も鉄道もトラックも、スピードに関しては決して飛行機にかなわない。だからこそ、いかにしてスピードをアップするかが重要になる。

ここでLenormand氏から僕達にこんな質問が投げかけられた。「もし君達がCEOなら、どうやってスピードを最大化するかい?」

この問いに対して一番最初に思いつくのは、やはりスピードの速い航空機を導入するということだろう。飛行機のスピードが早ければそれだけ荷物も早く運べると考えれば、これは賢明な選択と言える。

しかし、結論から言えばこの回答は正解ではない。100%有り得ない選択肢だとも言えないが、投資対効果を最大にする経営の観点から考えるならば、最良の選択肢ではないのだ。

では、何がベストなのか。その答えは、エアカーゴビジネスにおける標準的なオペレーションの分析にある。

エアカーゴビジネスでは、通常、送り主から荷物を受け取り、それを空港まで運び、税関手続(国際貨物の場合)を経て、航空機に搭載する。そして、航空機で目的地まで運んだ後、今度は輸入にかかる税関手続を経て、再度トラックなどに積み込んで受取人の元まで運ぶというオペレーションが行われる。

ここで鍵となるのは、各オペレーションに要する標準的な業務処理時間だ。荷物が送り主から受取人に届くまでの総時間を100とすると、荷主から出発地の航空機に積み込むまでの時間が32、航空機で輸送している時間が12、到着地の空港から最終的に受取人の元に荷物が届くまでに要する時間が56といった割合なのだ。

すなわち、エアカーゴビジネスにおいて実際に航空機で荷物を輸送している時間というのは、全体の12%でしかない。ここにいくら投資をして改善したところで、全体に対するインパクトはそれほど大きいものにはならない。

なので、CEOとしては、残り88%を占めるグラウンドオペレーションをいかにして効率化してスピードアップするかを一番に考えるべきなのだ。エアカーゴビジネスの勝利の鍵はここにある。

こうやって第一線のビジネスパーソンから直接話を聞けることは、本当に有り難いと思う。
 


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