
Landing Gear(ランディング・ギア)とは、航空機の着陸装置のことだ。通常は翼の下に付いていて、離陸時と着陸時のみ外側に出ている航空機の「足」のような存在だ。目立たないように見えて、実はこれが航空機システムの中でかなり重要な位置を占めている。ランディング・ギアがしっかりしているかどうかで、航空機の売れ行きが左右されることだってある。そのくらい大切な部品だ。
ランディング・ギアにはトラブルが多い。小さな故障もあれば、着陸時にポッキリと折れてしまうことだってある。折れてしまった場合や、それ以前の問題としてランディング・ギアが出てこなかった場合などは、航空機は胴体着陸を余儀なくされる。2007年に高知空港で起こったボンバルディア社のDHC-8 Q400の胴体着陸事故は記憶に新しいのではないかと思う。
なぜ、それほどまでにランディング・ギアのトラブルが多いのか。もちろん、ランディング・ギアの構造的な問題もあるのだろうけれど、一概に設計ミスばかりが原因だともいえない。それは航空機が着陸する場面を想像してもらえれば分かりやすいと思う。時速数百キロのスピードで上空から進入してきた何十トン、何百トンという航空機の重量が、あの細い3つの「足」に一気に圧し掛かってくるのだ。ランディング・ギアは、そのとてつもない一瞬の圧力に耐えうるだけの強さを、あの細い軸の中に備えていなければならない。
しかし、今日同僚から聞いた話によると、着陸の上手なパイロットの場合、ランディング・ギアへの負担をかなり減らすことが可能なのだそうだ。すなわち、下手なパイロットならドスンと着陸して一気に大きな衝撃を与えてしまうところを、上手いパイロットはできるだけ静かに、かつ、スムーズに航空機を滑走路に着地させることができる。パイロットの技量次第で、ランディング・ギアへの負担は相当違うらしい。
ということは、ランディング・ギアのトラブルを少なくする手段というのは、ランディング・ギア自体の構造を強化したり、特殊な衝撃吸収システムを採用することだけではない。パイロットの着陸技能向上もまた、ランディング・ギアの信頼性を高める手段の一つでもあるのだ。そのために、航空機製造メーカーとして追加のトレーニングをしたり、より丁寧なマニュアルを整備したりと、何かしらできることはある。
しかも、パイロットの技能向上というのは、航空機の重量になんら影響を与えない。もし、ランディング・ギアの構造を強化したり、あるいは、特殊な衝撃吸収システムを装着したりすれば、それは航空機の重量アップとしてフライト・オペレーションに少なからず影響を及ぼす。最大離陸重量は変わらないので、乗客を少なくするか、あるいは、搭載する燃料を少なくして短い距離のフライトで我慢するか、とにかくオペレーション上の制約が増えることは間違いない。
空を飛ぶ航空機にとって、重量は想像する以上にクリティカルな要素だ。問題の解決に至る道は必ずしも一つではないことを肝に命じて、解決策を考えていかなければならない。