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宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

アンケート結果

2007年06月04日 | MBA
 
残念ながら非公開となってしまった常時滞空型風力発電ビジネスのビジネスプランに関して、皆さんに答えていただいたアンケートの一部をご紹介したいと思います。ほんの一部だけになってしまうのですが、皆さんがこのビジネスに対して直感的にどのように感じたかを伺い知ることができます。

今回のインターネット調査では、世界中の152名の方から回答をしていただくことができました。改めて、皆さんのご協力に感謝いたします。どうもありがとうございました。

さて、肝心のインターネット調査結果ですが、まず、「環境問題に興味がありますか?」との質問に対して、92.8%の方から“Yes”との回答をいただきました。皆さん、概して環境問題には関心があるようですね。当たり前なのかもしれませんが、昨今の地球温暖化や原油高を背景に、もう他人事とは思えなくなっているのだと思います。

次に、「常時滞空型風力発電装置(FEG)を受け入れることができるか?」との質問に対して、79.5%の方から“Yes”との回答をいただきました。上空に発電装置がフライトするのはそれなりに未知のリスクがあるのですが、大体25kmくらい家から離れていれば、皆さん受け入れ可能との感触をもったようです。

そして、「風車式の風力発電とFEGのどっちのタイプがより好きか?」との質問に対して、73.2%の方から“FEGのほうが好き”との回答をいただきました。革新的な技術であることに加え、環境への付加の少なさが評価されたようです。

最後に、「このFEGビジネスに投資したいと思うか?」との質問に対しては、68.0%の方から“Yes”との回答をいただきました。加えて、全体の10%以上の方から「150万円以上投資してもよい」と回答をいただき、チームメイト一同驚いてしまったのを今でも覚えています。

投資したい理由としては、環境へのやさしさや、技術的な革新性を評価される方が多かったのです。逆に、投資しない理由としては、安全面での懸念や地域での受け入れを心配される方が多かったです。FEG技術の経済性については、投資したい理由と同じくらいの割合で、投資したくない理由にも挙がっていました。皆さんの意識調査の結果を受け、ビジネスプランでは、特にこの点にページを割いて説明を充実させることができたと思います。

ビジネスプラン自体を非公開とするという決定の影響もあり、アンケート結果の全てを公開することができないのがとても残念です。

ご協力、本当にどうもありがとうございました。
 

トゥールーズ弾丸ツアー

2007年06月03日 | MBA
 
週末だけを使ってヨーロッパ宇宙航空の中心地トゥールーズを訪問できるかどうか、Out of box thinkingで『トゥールーズ弾丸ツアー』なるものを考えてみました。予算は航空券、ホテル代、飲食代等も含めて13万円以内。可能な限り現実に実行できる範囲内で、しかも、宇宙航空の風とフランスとトゥールーズを思い切り堪能できるプランです。

■金曜日(夜)
21:00、成田発パリ行きエールフランス航空の夜行便に乗る。もちろん、機内ではワインをたっぷり飲んでしっかりと睡眠をとる。

■土曜日(終日)
朝4:00、パリのシャルルドゴール空港到着。トゥールーズへの乗り継ぎ便の時間までパリの雰囲気を楽しむ。(ただし、空港内のみ)

朝7:30分、エールフランス航空国内線に乗り、トゥールーズへ向けて出発。

朝8:40分、トゥールーズ到着。ターミナルで荷物を受け取った後、空港まで迎えに来たAerospace MBAと合流し、空港内のカフェでクロワッサンとコーヒーを飲みながら、ヨーロッパ宇宙航空の最前線の話で盛り上がる。

朝9:45分、Aerospace MBAの車(ルノーClio)に乗って、まずはAirbus(エアバス)社の工場見学。最新鋭超大型旅客機A380の組立工場か、もしくは、A330/A340の組立工場のどちらかを見学。

午前11:30分、エアバス社の工場を後にしてトゥールーズ市内へ。キャピトル広場のカフェで名物セップ茸のオムレツを食べた後、カフェを飲んでまたヨーロッパ宇宙航空最前線の話で盛り上がる。

午後13:00分、徒歩で足早にトゥールーズを市内観光。サンセルナン・バジリカ大聖堂、ジャコバン修道院、ガロンヌ川のポン・ヌフをご案内。希望に応じて、世界遺産ミディ運河のクルーズをアレンジすることも可能(所要時間1時間)。

午後14:00分、再びAerospace MBAの車に乗って宇宙のテーマパークCite de l’espace(シテ・ド・レスパス)へ。国際宇宙ステーションのIMAX、ニューヨーク自然史博物館から直輸入した3D立体球形プラネタリウムを堪能。その他、アリアン5ロケット、ロシアの宇宙ステーションMir(ミール)などをAerospace MBAの解説付きで見学。

午後19:00分(冬期は18:00分)、シテ・ド・レスパスの閉園時間ギリギリまで楽しんだ後、再度Aerospace MBAの車に乗ってフランス宇宙機関(CNES)へ。中には入れないので、入り口のモニュメントで記念撮影。希望に応じ、歩いて2分のAerospace MBAの住むIASキャンパスでお茶(コーラ)することも可能。

午後20:00分、トゥールーズ市内のレストランで食事。フランス名物のフォワグラを前菜として味わった後、メインはトゥールーズ名物の鴨料理を堪能。ワインは地元ミディ・ピレネー産のものを1本空ける。

午後22:00分、車でホテルまで送迎。希望に応じ、ホテル近くのバーでまたまたヨーロッパ宇宙航空の最前線について盛り上がることも可能。

■日曜日(終日)
朝8:00分、ホテルまで迎えに来たAerospace MBAの車に乗ってトゥールーズ空港へ。

朝9:50分、トゥールーズ発のパリ行き飛行機に乗る。Aerospace MBAはお見送り。

午前11:00分、パリ、シャルル・ド・ゴール空港着。国際線の搭乗手続きを済ませた後で、免税品店でショッピングを楽しむ。

午後13:00分、パリ発成田行きエールフランス航空に搭乗。機内ではワインをたっぷり飲んだ後、爆睡。途中のカップヌードルのサービスも忘れずに!

■月曜日(早朝)
朝7:00分、成田到着。税関手続きを済ませた後、成田エクスプレスにのって東京駅へ。

朝9:30分、いつものオフィスで元気に勤務スタート!

いかがでしょうか?航空券さえ安い時期を選べば、十分に予算13万円以下で実行可能な企画です。

以上、Aerospace MBA Tours社の企画による『トゥールーズ弾丸ツアー』でした。
 

MBAの授業見学

2007年06月02日 | MBA
 
最近、MBAの授業見学をしに来る人の数が多くなった。顔ぶれは、将来的にMBAへの進学を考えている学生さんや、めでたく来年度のAerospace MBAに合格が決まった社会人まで、実に様々だ。

僕達Aerospace MBAの学生にとっても、宇宙航空企業で働いている、あるいは、将来的に働くことになるであろう人達とのネットワークを広げることができる授業訪問は大歓迎だ。それは学校側も同じで、時間の許す限りAerospace MBAのProgram ManagerであるAudeが懇切丁寧にビジネススクールの詳細について説明してくれる。

さらに学校側として、フランスのトゥールーズまで来るのが大変だという人のために、ロンドン、パリ、ニューヨークなど、世界各地のMBAフェアで学生を勧誘しているらしい。残念ながら、東京のMBAフェアにはブースを出展しなかったらしいのだけど、将来的にはアジアでの出展も考えているとのこと。もし東京に来ることがあれば、僕もOBとしてお手伝いしたいと思っている。

実は、こういった機会を利用して早めにビジネススクール側にコンタクトしておくことも、希望するMBAに有利に合格するための大事なステップの一つだ。僕も、2年前の秋に一人でトゥールーズを訪問し、丸1日かけてAudeにビジネススクール内を案内してもらったり、プログラムの内容を説明してもらったりした。僕にとっては自分の熱意をアピールするための絶好のチャンスでもあった。今となってはとても懐かしい思い出だ。

僕が訪問した当時は9月で、既にAerospace MBAの学生は学校には来ておらず、企業でインターンシップをしている最中だった。なので、授業には参加できないと聞いていたのだけど、Audeの計らいによってPart-time MBAの授業に飛び入り参加させてもらうことができた。

確か、Knowledge Management(ナレッジ・マネジメント)の授業だったと思う。聴講しているだけにも関わらず、クラス内で「Nemawashi(根回し)」に関する説明を求められてビックリしたのを覚えている。その時のAlexander教授とは、彼がドイツに帰ってからもメールをやりとりする仲だ。

Aerospace MBAに関する情報は、可能な限りこのブログで発信しているつもりなのだけれど、やはり『百聞は一見に如かず』なところもある。僕がこのAerospace MBAで感じたことの全てを伝えられているとは思わないし、人によって感じ方はそれぞれ違うと思うので、もし将来的にAerospace MBAへの進学を考えている人がいたら、ぜひトゥールーズのキャンパスを訪問してきてほしい。

僕も、僕のクラスメートも、喜んで皆さんの訪問を歓迎します。気軽に連絡してきてください。

(写真はAerospace MBAの授業の一コマ。左から2番目が僕。)
 

無人偵察機

2007年06月01日 | MBA
 
未来の軍用ミッションの主流になると言われ、その研究に莫大なお金がつぎ込まれているタイプの航空機がある。無人偵察機だ。従来の航空機のようにパイロットを必要とせず、地上からの遠隔操作、又は、半自律飛行により、偵察ミッションを遂行する軍用機だ。

イメージで言えば、普通の飛行機と同じくらいの大きさのラジコン飛行機を思い浮かべてもらえれば分かりやすいだろうか。基本的にラジコン飛行機と同じように地上からの指示によって高度や方向を変え、搭載された高性能カメラによって敵地に関する情報をリアルタイムに収集し、その画像を地上へと送信する。

もちろん、軍事用の立派な航空機なので、金額はラジコン飛行機の比どころではない。一機あたり何億円もする超高額商品だ。国家の軍隊や災害救助機関以外でこの無人偵察機を購入するのはまず無理だろう。もし大富豪で趣味として無人偵察機を飛ばして遊ぶような人がいたら、ぜひ一度会って僕にも操縦を体験させてもらいたいくらいだ。

この無人偵察機の一番のメリットは、やはり航空機にパイロットを搭乗させる必要がなくなるということだ。飛行中のトラブルでパイロットが命を落とすこともなければ、敵地に不時着して危険なレスキューミッションを遂行しなければならない可能性もない。あらゆる面でリスクを低減できる。

それに、たとえ敵からの反撃によって無人偵察機を失ったとしても、損失はその機体の金額だけに限定される。戦闘で兵士が命を落とすことへの社会的拒絶が以前にも増して高まっている現在、パイロットの命を危険にさらすことのない無人偵察機は、まさに軍隊にとって格好の存在といえる。

無人偵察機の主なミッションは、その名のとおり敵地の情報収集がメインになるのだけど、米国が開発したプレデター(写真参照)と呼ばれる無人偵察機では、もう既に武器が搭載され始めている。すなわち、攻撃能力が付加された無人攻撃機へと進化しているのだ。

このような無人型の軍用機は、パイロットの命を危険にさらすことがないという点において、従来型よりも優れた特性を持っているといえる。授業では、無人偵察機を実際にフライトさせる空軍オペレーターの様子がビデオで紹介されたのだけど、彼はまるでテレビゲームでも楽しむかのように笑顔でジョイスティックを操作していた。もしこれが無人攻撃機だったなら、彼はそのまま笑顔でジョイスティックを操作し、AボタンかBボタンを押すかのように爆弾を投下していくのだろうか。

攻撃をする側の操作はバーチャルに行うことができても、攻撃を受ける側の被害はバーチャルでは済まない。本当にこれが正しいあり方なのか、深く考えさせられてしまった。僕個人の考えとしては、このような優れた技術が軍事目的ではなく、災害把握や人命救助などの平和目的で使用されることを強く期待したい。

(写真はアメリカの軍用無人偵察機プレデター)
 

軍用機の寿命

2007年05月31日 | MBA
 
航空機の寿命を知っている人は、この世に一体どれくらいいるだろうか?一般的に約25年~30年が限界と言われていて、それ以降にフライトすることは、安全面や整備面の懸念によって飛ぶのが難しくなるとされている。

この寿命は航空機そのものに関する寿命なのだけど、航空機メーカーにとっての航空機の寿命と言った場合、一般的に約50年と長くなる。航空機を開発し、市場に送り出し、さらにその航空機の製造をストップするまでに約30年。そして、製造を完全にストップしてからも約20年間はスペアパーツ等を供給しなければならないため、航空機製造メーカーにとっての航空機の寿命はやや延びて約50年となるのだ。

この約50年というライフサイクルは、他のビジネスと比べても極端に長い。こんな長い期間をかけて投資を回収することを想定したビジネスなんて、航空機ビジネスをおいて他にはあまりないと思う。大規模かつ長期間にわたる投資を要求されるのが、航空機製造ビジネスの特徴だ。

しかし、この約50年というのは、民間の商業旅客機の場合にあてはまる数値だ。軍用機の開発となると、さらにこれが伸びる。具体的な例を挙げると、F-15戦闘機で51年、C-130輸送機で79年、そしてなんと、あのB-52爆撃機に至っては、1946年の開発スタートから数えて94年目の2040年までの使用を予定している。100年近いライフサイクルを想定した商品なんて、にわかには想像し難い。しかし、これは事実なのだ。

もちろん、これらの超長期ライフサイクルは、初めから想定していたものではない。当初はやはり民間の航空機と同じように30年程度のライフサイクルを想定していたのだ。それが、いつの間にか次の世代の航空機の投入が伸び伸びになって、50年から100年近いライフサイクルとなってしまったのだ。

防衛ビジネスは、基本的な考え方が極めて保守的な分野だ。現在の航空機がしっかりと役割を果たしているのならば、あえて新しい技術を用いた航空機を開発して既存のものに取って代ええようというダイナミクスが働きにくい分野でもある。昔のままの航空機が今もずっと使われて続けているのはそのためだ。

軍用機の世界で有名なジョークが一つある。それは、「祖父が操縦していた飛行機をその孫が操縦する」というものだ。94年のライフサイクルを想定したB-52爆撃機なら、そんな事だって十分にありうるのだ。

20世紀の古いテクノロジーで、21世紀のより複雑なミッションを遂行することを要求される。空軍の兵士の皆さんがちょっと気の毒に思えてきたのでした。

(写真はB-52爆撃機。長距離、高高度、大量爆撃を可能にした超大型爆撃機だ。)
 

防衛ビジネス

2007年05月30日 | MBA
 
今週のAerospace MBAでは、Defense and Acquisition(防衛と調達契約)に関する授業が行われている。戦闘機やミサイルや偵察衛星に関するビジネスを学ぶもので、これらは僕の人生の中でもあまり触れたことのない、実に未知の世界な分野だ。

しかし、Aerospace Business(宇宙航空ビジネス)に限って言えば、防衛に関する契約ほど長期安定的に利益をあげられる分野はない。契約を締結する前の段階では、技術力、コスト、スピード、サービス等を比較した総合的な入札競争が行われるのが普通だが、機密保持という大義名分の下、単純な価格競争にはならないことが多い。どの国でも政府関係の防衛契約を受注できる企業というのは極めて限られていて、その限られた小数の企業の中でパイの奪い合いをするというのが防衛契約の典型的なパターンだ。

防衛ビジネスの一番のメリットは、自国政府による一定量の購入が最初から見込めるために、少なくとも開発費だけは十分に回収できる見込みが最初から立つというところにある。民間航空機の開発の場合、航空会社からの将来的な需要を予測し、今後もある一定量の航空機が継続的に購入されていくだろうとの予測を基に開発Goサインを出すが、軍用機の開発の場合、少なくとも初期開発費を回収をするのに十分な額の政府契約が最初から存在し、開発プロジェクトとしてのBreak Even(ブレイクイーブン)を保証してくれる。言い換えれば、開発に必要な初期投資さえ回収できないというリスクは、政府調達によってしっかりヘッジされているのだ。

一般的に、この初期投資の回収にリスクがあるかないかというのは、投資家の心理にとって非常に大きなインパクトを与える。具体的には、このリスクの有無が投資家のExpected Return(期待利益率)となって表れる。投資家はリスクが高ければ高いほどそれに見合った高い利回りを期待し、リスクが低ければ、それ相応の低い利回りで我慢するのだ。

防衛ビジネスが有利な点はまだある。軍事機密の流出という制約が許しさえすれば、他国に兵器や武器や軍事サービスを輸出することによって、さらなる追加的な利益を手にすることができるのだ。米国やロシアやイスラエルなどの軍事企業は、まさにこの他国への軍事技術の輸出によって莫大な利益を手にしていると言っても過言ではない。戦争はそう簡単に国境を越えることはないが、国土防衛という大義名分の下に、武器や兵器は簡単に国境を越えていってしまうのだ。

僕が学んでいるのはMBA(Master of Business Administration:経営学修士号)なので、武器や兵器を他国へ輸出することの是否や戦争に使用することの是否を議論することはしない。あくまで防衛産業というカテゴリーにおいて、いかにして企業としての競争優位を築くか、いかにして利益を最大化するか、いかにして顧客である各国の軍隊の満足を得るか、それだけを考えていく。

そう頭では分かってはいるのだけど、僕の心の奥には何か腑に落ちないものがある。それが何だか、分かっているようで分からない。

(写真はAirbus Military社が開発を進めるA400M軍事輸送機。エアバス社のHPより。)
 

ドリームリフター

2007年05月28日 | MBA
 
ついにBoeing 787ドリームライナーの最終組立が米シアトルの工場で開始された。まだ販売前にもかかわらず、既に世界中の航空会社などから600機近い受注を得ている、まさに航空機製造メーカーにとっては夢のような航空機だ。

前にも一度ブログで書いたのだけど、このボーイング787の開発・製造には、三菱重工業、川崎重工業などの日本企業が深く関わっている。航空機全体の35%にも及ぶ部品を日本企業が製造し、米シアトルにあるボーイングの最終組立工場に納入しているのだ。

製造面だけではない。今回のボーイング787を世界で最初に受け取るファーストゲストは、なんと全日本空輸(ANA)だ。オプション契約も含めると、既に100機近いボーイング787の購入を予定している大口顧客だ。とにかく、このボーイング787の成功が、日本企業、そして、日本社会に与える影響は極めて大きい。

日本で製造された主要部品は名古屋から米国のシアトルまで空輸されるのだけど、そのために開発された特別な輸送機がある。ドリームリフター(写真)だ。ボーイング747機を改造し、航空機の翼や胴体などの巨大な部品もそのままの形で運べるようになっている。とにかく、一目見ただけでは、本当に飛ぶのかどうか疑ってしまうくらい大きく、かつ、変な形の飛行機だ。

このドリームリフター、さらに面白いことに、胴体が中央で真っ二つに分かれる構造になっている。巨大な部品をそのまま積み込む際は自らの胴体をパカッと空けてL字型になり、荷物を積み込んだ後はまた合体して元の航空機の姿になるのだ。まさに、子供の頃テレビで見た戦うロボットの合体シーンのようなイメージだ。合体したものが空を飛ぶのだから、テクノロジーの進化は本当にすごいと思う。

世界中から集められたボーイング787の部品は、シアトルのボーイング社工場で一気に組み立てられる。従来のように何ヶ月もかけてライン組立をするようなことはせず、ある程度モジュールとして完成した部品をシアトルに集結させて、合体させるのだ。ちょうど、工場である程度完成させたプレハブ住宅を、現場で一気に合体させて組み立てるイメージに似ているかもしれない。

ボーイング社は、この短期間集中型の組立システムを開発するにあたり、日本企業の生産システム技術を大いに研究し、参考にしたそうだ。とくに、ムダや中間在庫を全く許さない日本の製造哲学を学び、これまで数ヶ月かかるのが当たり前だった航空機の組立を、わずか3週間で完成させることに成功した。そして、最終的には、なんと3日間で航空機の組立が完了させることを目指しているのだそうだ。そのために、今後とも日本企業の製造方式を継続的にベンチマークしていくらしい。

世間にはほとんど認知されていないのだけど、日本は世界の航空機産業に多大な影響を与えているの国なのだ。もっともっとアピールしてもいいと僕は思う。

(写真は日本から部品を米国まで運ぶドリームリフター。世界一へんな形の飛行機だ。)

ビジネスプラン非公開決定

2007年05月27日 | MBA
 
いつもAerospaceMBAブログをお読みいただき、どうもありがとうございます。今日はちょっと残念なお知らせがあります。

許可が取れ次第ブログ上で公開すると決めていた僕達の会社Green O.N.E.のビジネスプランですが、諸事情により公開できなくなってしまいました。その一番の理由は、今回MCTP(Multi Cultural Team Project)のクライアントとなってくださった宇宙航空企業の方からストップがかかってしまったためです。本当に残念ですが、ビジネスに絡む話なので仕方ありません。

もう少し詳しく経緯を説明すると、このクライアントである宇宙航空企業の方が、この夏に僕達が作成したビジネスプランを携えてアメリカ大陸へと飛ぶことに決めたそうです。アメリカのベンチャー投資家にビジネスプランを説明して回り、感触がよければ製造メーカーであるSky Wind Power社を動かし、この常時滞空型風力発電ビジネスの実現を一気に加速させたいらしいのです。

新ビジネスにとって一番の成功の鍵は、マーケットの中で一番乗りになることです。特に、今回のような他に類を見ない革新的技術を用いたビジネスの場合、大企業が豊富な資本力を背景に市場参入しようとする前に、マーケット内に確固たる地位を築いておき、できるだけ参入障壁を高くしておく必要があります。情報の秘密性とスピードが命であるため、現時点において僕達のビジネスプランを一般に公開することは、あまり望ましくない結果をもたらす可能性が極めて高いのです。

という理由から、今回作成した『常時滞空型風力発電ビジネス』に関するビジネスプランを皆さんに公開できなくなってしまいました。本当にごめんなさい。ビジネスレベルで通用する事業計画を作成することができたという意味では喜んでいいと思うのですが、アンケートやコメント等でご協力いただいた皆さんに結果を公開し、皆さんからフィードバックを受けられなくなったという意味で、僕はかなり残念に思っています。

ビジネスプランの公開を楽しみにしていた皆さん、本当にごめんなさい。Pardon!

いつの日か日本の空にFEG(Flying Electric Generator)が飛んでいるのを見つけたら、フランスのトゥールーズで必死になってビジネスプランを考えていた日本人が一人いたなぁ~、と思い出してもらえると嬉しいです。僕は、FEGがきっと世界中の空を飛ぶ日がいつか来ると信じています。
 

日本航空

2007年05月25日 | MBA
 
今日のケースは、なんとJapan Airline(JAL:日本航空)について。JALが部分的に導入したE-ticketing(電子チケット)システムを全社的に導入すべきか否かというのがメインテーマだ。

授業を担当してくれているSvinne教授によれば、今日は僕は議論に参加しなくてもよいから、各チームを回って日本人としての考え方やメンタリティーのようなものを説明してくれ、とのこと。ラッキー!今日は僕の負担は減るかもしれない。そう考えていたのが甘かった。

議論は、まずサブグループに分かれてのディスカッションから始まる。僕は各チームを順々に回って以下の3点をポイントとして説明することにした。

1. 日本人は大きな変化を避ける傾向にある。むしろ、小さな変化が継続的に続くことを好む。すなわち、ある日突然に大変化がやってくると大きな抵抗感を示すが、日々少しずつ進歩して継続的にレベルアップさせるようなやり方だと意外と抵抗を示さないことが多い。新しいサービスや手法を日本人にうまく受け入れさせるにはどうすればよいかを考える際の参考にしてほしい。

2. 日本ではクレジットカード決済はあまりメインではない。小さなレストランやショップではクレジットカードが使えないことも多く、日本人は毎日多額の現金を財布にいれて持ち歩いている。クレジットカード決済によって航空チケットをオンライン販売することに対して日本人がどう感じるか、そこも考慮してみてほしい。

3. 日本にはKeiretsu(系列)という独特の社会システムがある。JALやANAなどの大企業の元には複数の関係の深い企業がぶら下がっていて、これらの企業のビジネスに対する影響も考慮しながらJALは戦略的意思決定をすることを求められる。例えば、系列といわれる旅行代理店があるとすれば、JALが顧客と直接取引を開始することによって、彼らのビジネスチャンスを大きく奪ってしまうことになる。この点にも注意してJALとして最良の意思決定を考えてみてほしい。

以上が僕が各チームに伝えようとした日本人のメンタリティーとビジネス慣習なのだけど、みんなすごい勢いで僕を質問攻めにする。なぜ日本人は現金支払いを好むのか?クレジットカードの便利さが理解できないのか?日本人はなぜ株主利益の追求よりも消費者利益の追求を優先させるのか?小さくてもよいから継続的な変化を好むのはToyota(トヨタ)のKaizen(カイゼン)と関係があるのか?そもそも、日本人はどうして全体のバランスをあんなに気にするのか?とにかく、各チームとも質問が止む気配がなくて、僕はなかなか次のチームへ行くことができなかった。

極めつけは、クラスでのディスカッションの時だ。ケースの中のメインテーマはJALの電子チケットサービスについてなのだけど、そのテーマを離れて、日本という資源もなく国土も狭い国がなぜ世界の中であそこまで強くなれるのかについて議論する時間が圧倒的に多かった。当然、僕の発言時間や質問に答える時間も多くなる。今日の授業に関していえば、Sveinn教授よりもはるかに長い時間を僕はしゃべり続けていたと思う。

世界中からやってきたクラスメート達にとって、日本という国はとてもユニークで、かつ、興味が尽きない国らしい。僕は全く意識していなかったのだけど、それは普段の僕の行動にも表れているらしく、少なくとも効率的に確実にターゲットを達成するということに関して、みんな揃って僕の動き方に感心して見ていたらしい。僕にとって日本人として当たり前の行動が、彼らにとってはこれまでに見たことのないベストプラクティスに見えたそうだ。

授業の最後にSvinne教授から、今日のクラスディスカッションは過去に例をみないくらいFruitful(実り多い)なものだったとコメントがあった。僕達はケースのテーマを超え、それよりもはるかに上のレベルで議論を熱く戦わせていたらしい。それが教授にとっても僕たちの成長に見えて、嬉しかったのだそうだ。

当然、クラスメートはとても満足そうな顔をしている。僕は、、、もう今日はグッタリだ。ただ、MBAのクラスに少しでも貢献できたことが、心の底から嬉しかった。

(写真は日本航空の飛行機)
 

サウスアフリカ航空

2007年05月24日 | MBA
 
今日のケースはサウスアフリカ航空について。日本語に訳せば「南アフリカ航空」になる。正直、この授業でこのケースを扱うまで、僕はサウスアフリカ航空の存在を知らなかった。Aerospace MBAの学生として、ちょっと反省だ。

サウスアフリカ航空は、元々、アフリカ大陸最南端の南アフリカ共和国にある政府系航空会社だった。世界的な航空自由化の流れを受けてIPO(株式公開)を済ませ、今では立派な民間航空会社になっている。国内線、国際線ともに、南アフリカ共和国の航空輸送を支えるフラッグキャリアであることには変わりはない。そして、現在では、世界的な航空連合であるスターアライアンスの一員でもある。

しかし、サウスアフリカ航空は、1990年代の後半までは経営危機に直面していた。国内線では新規参入組の格安航空会社にシェアを奪われ、国際線ではブリティッシュ航空やシンガポール航空といった、世界のトップ10に入るような主要な航空会社と肩を並べて国際競争に打ち勝つことを要求されていた。

にも関わらず、社内の体質は依然として古く、硬直化した組織体制、国際感覚に欠ける経営陣、顧客サービスに関心がない従業員など、どう考えても世界と戦う航空会社とは言えない組織だった。そして、その死にかけた組織を立て直すため、新CEOを外部からヘッドハントすることになった。それが、Andre Viljoen氏だ。スタンフォード大学ビジネススクールを卒業したMBAホルダーだ。

Andre氏は、政府が先を急ぐサウスアフリカ航空の株式公開や世界戦略よりも、まず企業としての赤字体質を根底から立て直すことを最も重視した。いくら政府に保護された企業とはいえ、財政的な再建なくして、さらなる成長はありえないと考えたのだ。彼の言葉によれば、『血を流している間に動いても意味はない。次にどこへ行くべきかを考えるのは、まず血を止めてからだ。』赤字続きで成長して税金(=「血」)をどんどんタレ流すよりも、最初は少々成長のスピードが鈍ったとしても、まず企業として利益を追求できる体質にすることを選んだのだ。

僕達は問題が発生すると、すぐに次の対応策を考えようとする傾向がある。問題の本質的な原因にメスを入れることなく、時には応急処置さえすることなく、問題の表面的な解決に乗り出すことが多い。

それで一時は問題が治まったように見えるのだけど、時間の経過とともにやはり同じ問題が再び顕在化する。そして、また問題の本質的な原因を追究することなく、次の対応策を考えることで乗り切ろうとする。人間が同じ失敗をいつも繰り返すのはこのためだ。

問題が発生したら、まずは急いで血を止めること。血を止めた後で、「なぜ今回血が流れたのか?」を考えること。そして、最後に「次に血を流さないようにするためにはどうすればよいか?」を考えること。

意識しておかないと決してできないことだと僕は思う。いつも同じ失敗ばかりを繰り返していて悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。
 
(写真はサウスアフリカ航空の飛行機)