今週のAerospace MBAでは、Airline Management(航空会社マネジメント)の授業が行われている。授業を担当してくれるのは、Core Module(コア・モジュール)で経営戦略を担当してくれたアイスランド出身のSveinn教授だ。本当にこの学校の教授陣は国際色豊かだなあ~とつくづく思ってしまう。
Svienn教授の授業はいつもどおりケーススタディ中心だ。しかも、ただ単にケースを読んできてディスカッションするだけではなく、チーム毎にコンサルタント、企業経営者、クオリティチームの3つの異なる役割を与えられ、それぞれの視点でケースに取り組む。
一番変わっているのは、クオリティチームの存在だろう。このチームは、前日に当然ケースの予習をしてこなければならないものの、当日はディスカッションには一切参加しない。その代わり、コンサルタントチーム、経営者チームのディスカッションの様子を細かく観察し、議論の進め方や、問題解決の手法、チームワーク、コミュニケーション、各種ツールの用い方など、MBAの学生が常に向上させなければならないスキルに対して、各チームごとに改善提案をするのが仕事だ。
実際、一番難しいのがこのクオリティチームの役割で、自分達のクラスメートの作業の進め方を評価し、時には辛い批評も加えなければならない大変な作業なのだ。評価が甘すぎてもクラスメートのためにならないし、かといって、厳しすぎてもクラスの雰囲気を悪くしてしまうだけだ。この間の微妙なバランス感覚が非常に難しい。
実際のビジネスの現場では、マネージャーの大きな役割の一つとして、スタッフの評価という仕事がある。Sveinn教授によれば、自分が評価しなければならないスタッフに対して、いかに正確に問題点を指摘し、いかにモチベーションを下げることなくアドバイスを与えるかの訓練でもあるそうだ。確かに、人事評価の訓練でも似たようなシミュレーションをすることがある。理に適ったケーススタディの進め方だと僕は思う。
そして、今日のケースはエミレーツ航空。アラブ首長国連邦のアブダビを本拠地とする航空会社で、豊富な資金力と安い労働コストを背景に、世界シェアをどんどん伸ばしている航空会社だ。
エミレーツ航空のような小さな国の航空会社の場合、世界で戦うためにはハブ空港化するしかない。もちろん、ビジネス目的や観光目的でアブダビを訪問する人も中にはいるだろうけれど、乗客の半分以上は乗り継ぎ客だ。すなわち、アジア-ヨーロッパ間、オセアニア-ヨーロッパ間など、超長距離路線の中継基地としての競争優位性を築くことが、世界の航空市場における生き残りの鍵となる。シンガポールのシンガポール航空や香港のキャセイ・パシフィック航空なども同じ戦略で世界と戦っている。
僕がフランスに来る際にも、エールフランス航空の直行便で東京からパリへとフライトするか、エミレーツ航空のアブダビ経由でパリへと飛ぶかの2つの選択肢があった。結果として、僕は前者を選んだのだけれど、今日エミレーツ航空のケースを勉強して、ますますこの会社に興味を持つようになった。21世紀の世界の空の主役を張るだけの可能性が、このエミレーツ航空にはあるのだ。
まだ帰りの飛行機のことなんて何も考えていないのだけど、もしチケット代金が安ければ、エミレーツ航空のアブダビ経由で帰ってもいいかも!と思ったのでした。
(写真はエミレーツ航空とアブダビ)