東京国立近代美術館 工芸館 「動物集合ーAnimals,Animals,Animals, From The Musiam Collections-」
2017.2.28 - 5.21
3月のまだ千鳥ヶ淵の桜も咲かない頃に行ってきました。
なにかクセありげな動物たちがしれしれと配置された、このポスターにひかれて。
構成は下記の5つに章立て。
・染織と動物 ・身近な動物 ・空想の動物 ・鳥 ・鷹と虎 ・魚、虫、その他の動物
時間があまりなかったので、まずはポスターのエジプト風なネコの正体を確かめに、直行。
大塚茂吉「猫」2005年
2005年の作、しかも日本の陶芸家の作というのは意外だった。古代遺跡から発掘してきたような悠久な印象だったので。
大塚茂吉さんは、1956年生まれ。藝大の日本画科を出て、画家として訪れたイタリアで陶芸に出会う。1994年からファエンツァのバッラルディーニ国立陶芸学校でテラコッタの技法を習得。
端正な中にも土のぬくもりがあるこの肌は、象嵌の技法によるのだとか。
昨年リクシルギャラリーで個展があったとのこと、技法の詳しい情報もこちらに。リクシルギャラリー
ポスターの背後霊みたいな犬も近くにいました。
田口 善国(1923~98)「漆透かし絵 犬」1985
これもチラシとは印象が違い、切り絵のような仕上げで緻密。よくよく見ればキュートな目線。
田口義国では、「日蝕蒔絵飾り箱」も。こちらも目が印象的な作。日蝕の闇に、フクロウの目だけが不穏に見ひらいている。
畳の間の屏風は、白い肌の狐が闇に浮かぶように妖しく舞う。
この畳の間の前にゆっくり眺められるように椅子がおかれている。と思ったら、椅子もぬかりなく動物なのでした😲
バーナーード・リーチの「鹿図タイル」は、角型のタイルに、鹿が弧を描くように滑らかに飛んでいる。
増田三男(1909~2009)は、数点あり、鍍金や鍍銀の細工がきれい。鍍金とは、メッキ、表面を薄い金属の皮膜でおおう技法らしい。
「金彩臥牛紋壺」は、ギリシャ風の牛。
「雪装雑木林月夜飾り箱」は琳派風な月に、雪の上に足跡。と思ったら、側面に月から出てきたようなウサギ。
「残月孤影」は、ススキに鈴木其一の芒図を思い出しつつ、イソップ物語のようなきつね。どちらの作も、遊び心と風流が同居している。
螺鈿は、角度によって変幻する輝きが美しかった。北村昭斎「兎紋螺鈿飾り箱」
螺鈿というと、高校の時に覚えた正倉院「螺鈿紫檀の五弦琵琶」がわたしの原点なのだけど、その技法を今もこのように美しく受け継ぐ人がいるということに感動。
三浦小平二(1933~2006)「青磁飾り壺」は、茄子?が巨大化した壺に、持ち手が小さな象というあべこべな。
他には取っ手がカンガルーな香合もありました。
「鳥」の章では、鷺をモチーフにしたものが並ぶ。鷺って飛んでも、停まっても、雰囲気のある鳥だ。
中でも、漆の地のものが美しかった。
片岡華江「螺鈿鷺の図漆箱」
松田権六「蒔絵鷺紋飾り箱」 葉の先に露が光り、羽ばたく波紋のよう。
松田権六はさすが近代美術館でも所蔵が多いのか、展示も5点。どれも優美な美しさにため息もの。
なかでも「蒔絵竹林文箱」、竹の林の根元にもしげる葉にも、そこにいるような感じになれたほど。タケノコもスズメもかわいらしい箱。
「蒔絵螺鈿有職分飾り箱」は、国宝級の宝物を入れたくなるような、これが宝物のような、繊細に輝く美しさ。
世の中にはきれいなものがあるもんじゃねえ。
鳥では他に、雉、うずら、鴨などのモチーフのものも。
「空想の動物」の章は、とても楽しい一角。やはり、鳳凰、そして蓑ガメは定番か。
それにしても香川勝広(1853~1917)「蓑亀之彫刻」の風格はすごい。
さらに感嘆したのは、精密じゃないのにちゃんと亀だっていうこのお品。
増村 益城(1910~1996)「乾漆溜塗喰篭 亀甲」
珍獣カテゴリーのかわいいのも。「信楽珍獣」2006 辻清明(1927~2008)
きみはいったい何者?。窯の精?。大地の生命のような信楽の器を焼く辻清明は、79才の時にこの珍獣を焼き上げた。すてきなおじい様だ。
佐々木象堂(1882~1961)の数点の細い銅の動物は、体のリズムと動きに満ちていて楽しい。現代のかたかと思ったら、明治15年生まれとは。
「蝋型鋳銅置物 三禽」1960 それぞれ、お父さん・お母さん・子供、のような体つきに見える。ずんずん、しっかりと歩いていく。
「瑞鳥」
「采花」 風が吹き抜けるような。
日本の伝統的な技術の粋が並ぶ中で、異色だったのがひとつ。
チェスワフ・ズベル「野獣」1992
「ガラス、ハンマーによるカット、油彩」とある。想像するだに、ハンマーを持つズベルのほうが、野獣のようなのではと思う。ミロのような色の印象だったけれど、ポーランド出身とか。
よく見ると、いくつかの顔が刻まれている。
ガラスの断面もうねるようで、冷たくも野獣のようなエネルギーをガラスの内から放っているよう。
この後は、海の生き物や昆虫というそれは心惹かれる展示物だったのに、ここで終わりのアナウンスがなり始めてしまう(泣)。
と、冒頭のポスターでネコの前を横切っていた「鶴」がどこにもいなかったことに気づき、時間もないのに監視員のかたに聞いてみる。「んんっ、どこかにいたような・・あっこちらです」と嫌な顔もせず、一緒に連れて行ってくれました。
二十代堆朱楊政成「彫漆硯箱 玄鶴」
ポスターでは鶴の立体オブジェだと思い込んでいたので、気づかなかったのだ。さすが監視員さん。
ジョージナカシマの応接セットも、黒田辰明のソファも、ゆっくり座る時間がなかったのをうらめしく思いながら、最後のひとりでばたばたと出ました。
それでも短い時間でしたが楽しい時間でした。伝統的な技術の高さ、美しさと、遊び心に感じ入りました。
そしてこれを書きながら、前に見たラスコーの壁画展を思い出していました。あの人たちはどうしてあれを描いたのだろうと、あれ以来折々推察してしまう。動物を描きたくなる、描いて誰かに見せたくなる、見た人はおおー、牛だ、羊だと喜ぶ。少なくとも古今それは共通しているかなと思いました。
読者登録して頂きまして 有難うございます
素敵なブログですね
私も、読者登録させて頂きます
今後とも、宜しくお願いします(^-^)
コメントありがとうございます。お食事、美味しそうですね!これは参考にさせていただかねばと即ざに読者登録させていただきました。絵も拝見できるの嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします^^。