加島美術「美祭‐BISAI‐」 2017.4.22~5.7
先日、加島美術さんの今年の「美祭」を拝見。
http://www.kashima-arts.co.jp/events/index.html
日本画、洋画、そして書。
書の展覧会は行く機会もあまりないので、たいへん新鮮。
白隠、勝海舟、徳川慶喜の書など東博や展覧会で見かけた記憶のある人々だけでなく、田中正造、花岡青洲、山内容堂などなど、多彩な人々の真筆。
カタログでは私の好きな中林梧竹もあったのですが、この日は展示されておらず残念。
そんななかで、好きな字だと思ったのが、若山牧水
「いついつとまちし桜のさきいでて 今はさかりか 風ふけど散らず」
若山牧水といえば「いく山河 越えさり行かば 寂しさのはてなむくにぞ けふも旅ゆく」のひとだったかな?としか知らず。しかもこんなに達筆だとは。
若山牧水記念館のページで見ると、恋と旅と(お酒も)ともにある人生。
(こちらのページなどで)短歌を見ると、恋の思い、旅から感じたことなどが歌ににじむ。
自然の情感の歌が、とくに山を離れたクマの心にしみじみ。
‐かたはらに秋ぐさの花かたるらくほろびしものはなつかしきかな
‐つと過ぎぬすぎて声なし夜の風いまか静かに木の葉ちるらむ
牧水のこの書は、心の余白に少し寂しさ。旅の感じに重なる。
と、昨年の美祭の図録(渡辺省亭展でいただいた)をめくってみると、牧水の同じ歌の書が。
全然印象が違う。
こちらは、なにか強い思いを抱えたときのような。学生の頃の園田小枝子との恋と破局では、長く苦しんだ。結婚を申し込んでから、実は人妻だったと知ったその恋の時。もしくは、生涯抱える芸術上のことや、生活苦のことからの感情の発露。とか。
ともあれ、最初の文字が好きだと思ったのは、素人にとっては、文字と文字のあいだの余白が重要なとこだったのかもしれない。そして、少しこころもとないくらいに、押しすぎてこない筆の強さとか。
書も短歌も興味でてきました。
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絵も、とても興味深く拝見。
渡辺省亭、池大雅、応挙、森狙仙、安田靫彦、松園と、眼福眼福。
山本梅逸を見られる貴重な機会が嬉しい。
「芙蓉鶺鴒図」
山元春挙「清流香魚図」 もこの季節に心地よいです。山岳画家ともいう春挙。少し腰をおとして見上げると、山岳の絵でなくとも上へ上へと3D感があるのに感嘆。
河鍋暁斎の「天狗の図」にはくすっ。
なんやかんや絵を批評する人々の鼻が。中には結んじゃった鼻も。落款を、奥の天狗の掛け軸に押しているところがツボ。
蘆雪の鹿は、戦闘モード。手出しできない感じの目。さすが蘆雪、ふつう鹿はこんなふうには描かないよね。
蘆雪は「鬼の手」も。
これを京橋の瀟洒な通りの、外ウインドウの一枚に展示する加島美術さんに感服。
ダークサイドな蘆雪ワールド、魅力的。
楽しみにしていた柴田是真、小林永濯がすでに展示されておらず残念。でも拝見するだけで、丁寧に対応していただいて、恐縮しきり。ありがとうございました。
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