hanana

二度目の冬眠から覚めました。投稿も復活します。
日本画、水墨画、本、散歩、旅行など自分用の乱文備忘録です。

●岡田美術館の常設

2016-12-22 | Art

「若冲と蕪村ー江戸時代の画家たち」2 (1の続き)

 

目録(クリックすると拡大)

入ると、大きな金屏風が並んでいるコーナー。

釘つけになったのが進藤尚郁「四季花鳥図屏風」 元文2年(1737。狩野常信の弟子。

美しく、澄んでいて、きらめいている印象に驚いた。葉も花も幹も翡翠も、生き生き瑞々しい。透明感を感じる江戸狩野派の屏風なんて他にあったかな。藍色の水の流れは勢いがあって、波が白と青のグラデーションも美しかった。梅と椿の織りなす一角もおしゃれというかセンスよく、たっぷりの余白が心地よくて。洋画のように彼の実感を追体験している気がするのに、はしばしに架空の世界であることも感じたり。

他の絵も見てみたいけれど、検索してもあまり出てこないのが残念。小樽のニシン御殿「貴賓館」の四季花鳥図がよさそう。(こちらの方の日記に

 

同じ狩野派の金屏風で別の意味で驚いたのが、狩野邦信 源氏物語図屏風」 江戸時代後期 19世紀前半。素人が描いたお人形みたいな顔。波もちょちょちょみたいな。適当な鴨。砂糖菓子みたいな梅。粉本主義っていうにしても。パーツばかりに目がいったけれど、構図はどうだったかしら?.狩野邦信は中橋狩野のひとり、法眼の地位に。小さな画像を検索した限りではほかの絵は立派なので、初期の作?もしかして深い意図が?。牧谿も宗達もきっちり描いていない絵も素敵だし??。思い出してみればかわいい鴨ではあった。

 

「菊図屏風」 尾形光琳 

花びらが立体的で、一本一本の存在が強かった。無数の菊は其一の朝顔図のように意思を持ってくねりつつ上へ斜めへ。


次の水墨のコーナー。

なんと、韓流ドラマの「イサン」が描いた絵が。葡萄図 正祖(李?) 朝鮮時代 18世紀後半。2011年にイサン作と知られたばかりとか。ブドウが画面を踊るように。バランスも絶妙に。実の陰影も葉の陰影も繊細。一つ枝を枯れさせていた。名君と称されている上に、絵もこんなに上手とは。

 

春画の部屋では、渓斎英泉はやはりcool。「十二ヶ月風俗画帖」 江戸時代後期 19世紀前半、今の感覚でも美人で、玉のような肌がうらやましい。髪や着物の鮮やかさとキレときたら。雪が舞う中に傘の裂け目から、っていう春画の構成も粋?。

葛飾北斎の春画は、波千鳥。こちらはほんのり紅くそまった肌。北斎は女性の感覚をわかっている気がするのが不思議。

 

北斎では、「秋から冬へ」の特集コーナーでも肉筆画が二点観られて嬉しい。

「雪中鴉図 」葛飾北斎 江戸時代 弘化4年(1847は、濃い雪雲のなか、孤高な感じのからす。まっ黒でなく、少しチャコール系だった。北斎では、夢見る瞳の鷹の絵もみたけれど、それと似ている印象。

「雁図」葛飾北斎 江戸時代 弘化4年(1847は、黒々した羽で見上げ、口を開ける雁。なにか形にならないものを求めているような。雁っぽくないというか、雁の新解釈。半ば紅葉したもみじが美しかった。写実っぽくもあり、不思議な情感。

86才の北斎のからすと雁。北斎の鳥って、気持ちがあるよう。北斎の独特の解釈。それとも自分を投影したものなのか、なにか心もちを抱いているようで、いつも心に残る。

 

「後赤壁図襖」 谷文晁 江戸時代後期 19世紀前半 蘇東坡の風景。鶴がいた。この襖絵を開いて入ることを想像したら、岩山の精の内部に足を踏み入れるようででどきどき。

 

「秋草に鶉図」 土佐光起  江戸時代前期 17世紀後半、ウズラに子ウズラもいた。菊までかわいらしい。土佐光起では「粟穂鶉図屏風」というとても素敵な屏風を見てみたいと思っていたので、同じく秋の情景にかわいい鶉というこちらに触れられてよかった。

 

近現代のコーナー

西郷孤月「群鷺」 明治時代後期 20世紀初頭

満ちる光とともに、白鷺も輝いているよう。観山や春草とともに出発した日本美術院仲間で、雅邦の娘婿。しかし、1年余で妻と離別、放蕩と放浪。春草はずっと気にかけていたという。孤月は何度か人生を立て直そうとしたけれど、すでに活躍する美術院仲間に水をあけられている現実。台湾で再起をかけるも、30半ばで病没。悲運の画家という言い方もあるようだけれど、それが自分の招いた悲運であるからなおさら、やるせなさが。非凡な才能が泣く。

 

菱田春草「松間の月」

どこまでも静かに月がてらしている。五浦の崖上から月を見上げ、砂浜を見下ろしていたのだろうか。二つの視線に、春草がここにいた姿がしんと浮かぶ。最後に海の波面を見ること、なんだか寂しい感じも広がってくる。

 

「晩秋」下村観山 大正~昭和時代初期 20世紀前半

見るたび好きな作品。観山の線がとても美しい。色もほんとうにいいなあと思う。一つ残った、鳥と同じ形のからすうりと、下から仲間にいれてほしいみたいに顔を出す一本の笹。なんだか観山の気持ちがやさしい。4羽は強い顔をしている。寒いけどがんばれ、みたいな。

 

木村武山「松に鶴図屏風」1927、木村武山の金屏風は今回も見とれた。

金に透ける鶴の淡さにうっとり。左の一羽の羽はまるで天使の羽みたい。しっかりした足取りの鶴は、満ち足りて前向きな顔していた。たっぷりの空間は、金地自体が内から光を放つようで、少し薄墨もひいてあったり、余白自体に入りたくなるほど。最小限に小鳥と竹。生命力ある松。これだけシンプルなのに奇をてらっている風もなく、武山の絵はどこか素直な感じ。

 

小茂田青樹「双鷺図」、先日の速水御舟展以来改めて見てみたと思っていたので、見られてよかった。宗達にも影響を受けたということ、ふわりとした感じはそうかもしれないと思った。

 

今回も時間がなく、三回めなのにいまだに五階の仏像の部屋のドアを開けられたことがない。お庭の散策や周辺の散歩もしたいし、次回こそは泊りで成川美術館にも足をのばしたいものです。

 



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