石川遼が出場した、日本ツアーを振り返る。
【2011.5.17 日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯】
不調の中でも12位タイの結果に、実力の底上げを実感。
コースに新緑が生え揃った5月。国内男子ツアーは開幕から4戦目にしてメジャー初戦を迎えた。「日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯」は国内で最古の歴史を誇る公式戦。2011年度の舞台、兵庫県にある小野東洋ゴルフ倶楽部で石川遼は自身初のメジャータイトル獲得を狙った。
プロ転向した2008年から過去3度出場してきたこの「日本プロ」。しかし石川はこれまで壁に阻まれてきた。3大会連続予選落ち。現存する大会で唯一、決勝ラウンド進出ができなかった。
だが日本ゴルフ界を牽引するプロゴルファーとなった19歳が、目標を"予選突破"に定めるはずがない。今大会で石川は新しい"マッスルバックタイプ"のアイアンをキャディバッグに入れた。今年初旬から練習では使用してきたが、実戦投入は初めて。これまでの"キャビティバックタイプ"のものよりも「弾道の高さを変えやすい」、「スピン量が抑えられ、風の影響も受けにくくて飛距離も出る」という利点も感じ「ヒラメキで」使用することを決めた。4日間戦うことを念頭に置いて、新たなチャレンジに挑んだのだ。
関西地方は開幕前日の11日(水)から強い雨に見舞われた。初日もこの悪天候は変わらず、石川はレインウェアで正午過ぎにインコースからスタート。序盤、ショット、パットともに精度を欠いてなかなかスコアを伸ばせない展開を強いられた。スコアカードにはパーが並び、迎えた前半最後の18番でフェアウェイからの第2打を右手前のバンカーに入れてしまう。極めて軟らかい仕上がりとなっていたバンカーを警戒していたが、そのワナにはまりボールは"目玉"どころか、砂の中に埋まり、第3打で出すことすらできなかった。結局4オン1パットでボギーが先行。そしてバーディは後半2番(パー5)だけ。結局1バーディ、1ボギーの「71」、イーブンパーの37位タイという静かな出だしとなった。
巻き返しが期待される2日目。石川は序盤からピンチを招く。3番(パー3)でティショットをグリーン奥にこぼしてボギー。さらに続く4番では、右ラフからの第2打をグリーン右手前のバンカーへ。第3打は"目玉"からのショットとなり、結局アプローチのミスも重なってダブルボギーとし、予選通過も危うい状況となる。しかし直後の5番(パー5)で確実にバーディを取り返すと、その後は我慢を続けてパーを重ねる。後半11番で2つめのバーディを奪い、最終18番では残り169ヤードの第2打を9番アイアンでピン奥2メートルにピタリ。「耐えに耐えた」というラウンドをバーディで締めくくり2日連続の「71」。しかし「同じイーブンパーでも内容が違う」と、息切れしそうな後半に粘り26位タイで自身初の予選通過を決めたことに納得の表情。「これで苦手な試合が無くなった」と安堵感を漂わせた一方で、トップとは4打差という状況に「予選を通っただけではない。自分のプレー次第では優勝争いができるところにいる」と力強く話した。
ところが決勝ラウンド3日目、頂点を目指して再スタートを切る思いだった石川は、前半9ホールをひとつスコアを伸ばして折り返すものの直後に急失速する。10番の第2打、得意のサンドウェッジでのショットをグリーンオーバーさせたところから、まさかの4連続ボギー。「後半これから頑張ろうというところ」で痛恨の後退となった。26位タイの順位こそキープしたものの、メジャーでオーバーパーの「74」では、上位からは離れてしまうばかり。結局首位との差は9打に拡がり、優勝争いが厳しい状況に追い込まれた。
最終日も「ここから這い上がるのと、這い上がれないのでは自分の経験値が変わってくる」と顔を上げて迎えた石川。前半は2番と5番の2つのパー5で確実にバーディを奪い、スコアを伸ばしたが、猛チャージが披露できない。チャンスを活かせず6番以降はすべてパー。タフな終盤のホールでスコアを落とさなかったが、結局最終ラウンドは「70」。4日間を通じて1度も60台をマークできなかった。
それでも石川は「今日のプレーの内容は本当に満足。難しいコンディションでも、この順位であがれたというのは、すごく意義がある」と話した。ショット、パットが噛み合わずに得意のバーディ合戦に持ち込めない展開でも通算2オーバーの12位タイでフィニッシュしたことに「全体的に悪い部分が無くなり、底上げできている。いつでも優勝できるという準備ができていると感じられた一週間」と、一定の充実感を感じた。
また、初めて実戦で使用した"マッスルバックタイプ"のアイアンにも手応えを掴んだ。番手ごとの飛距離はこれまで使用していた"キャビティタイプ"のものよりも5ヤード前後アップ。大会序盤はその距離感に苦しんだが「これからも使っていきたい」と徐々に手になじんできた。絶好調とは言い難いが、進んでいる道は決して間違っていないと信じている。「年間4勝した2009年も1勝目は6月(ミズノオープンよみうりクラシック)だった。そんなに焦る必要はないと思います。これを続けていけば、いい成績が出てくる」と確かな手応えを感じているようだった。(パナソニックス)